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英雄譚  作者: 鈴木 雫
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第二十四話

 彼女が振り返る。


「なんのつもりですか?」


 彼女は剣を持った俺に質問を投げかける。


「いえ、今ので確信しました。」

「何をです?」

「あなたが俺たちを邪魔しに来たことですよ。」


 彼女の表情は変わらない。

 代わりに、袖から短剣を取り出した。


「いつからです?」

「最初から疑ってましたよ。おかしいですよ。ここでは人間を酷く嫌っているのに話しかけるなんて。」

「それだけですか?」

「それと、歩き方です。戦闘を経験した者だけが分かる間合いみたいなものですかね。」

「なるほど。私もまだまだ甘い。」


 それに、剣を見ても怖がる素振りを見せなかった。

 この龍人は俺を殺しに来たのか。それとも、捕らえに来たのか。

 どちらにせよ、みんなの場所を悟らせるわけにはいかない。

 剣を握り、少しずつ前に出る。


「あなた、あまり戦闘経験がないんじゃない?」

「なんでそう思うの?」

「だって、逃げ腰だし、お友達も駆けつけたみたいね。」


 咄嗟に後ろを振り向く。

 しかし、誰もいない。

 風を切る音が正面から聞こえる。

 反射でよける。が、バランスを崩し、地面に座り込んでしまう。


「ほら、騙されやすい。」


 座り込んだところに短剣を向けられ立つことができない。


「直線なら、勝てると思った?」

「ま、まあね。」

「残念。経験の差を知った方が良い。」

「何が望み?」

「そうね。何にしようかな」


 しばらくの長考。

 いや、何かを待っているのか?

 どっちだ…。表情から意図が読み取れない。


「ほら、何かしないと首を持っていくよ。」

「……」

「そう。」

「君は明らかに時間を稼いでる。」

「なんで?」

「誰かを待っているんだよ。」

「違うわ。」

「そうなの?じゃあ、殺せば?」

「分かった。」


 短剣を喉元に突き刺そうとした時に、彼女の足に自分の足をぶつけ、態勢を崩す。

 その隙に短剣を取り上げ、形勢を逆転する。


「今度は俺が質問する番だね。」

「そうみたいね。」

「誰を待っているの?」

「さぁ?」

「答えてよ。」

「早く殺せば?オルヴァニス卿みたいに。」

「そういうことね。」


 短剣をその場に捨て、立ち去る。

 手配書の効果は絶大だったようだ。

 この街で出歩くのは危険すぎる。

 すれ違う人すべて敵だと思った方が良い。

 慎重に帰らなくては。

 視界が歪む、と言うかもう立っていなかった。


「やっぱり、甘い。」

「な、、、、した」

「別に。」

「な、、、、、」

「認めてあげる。私は時間を稼いでた。でも、誰かを待ってたわけじゃない。毒があなたを支配するのを待ってたの。」


 意識がどんどんなくなっていく。

 睡眠よりも早く、着実に。


 目が覚める。覚めると言っても、まだ体の自由が利かない。

 体中の痺れが取れない。手足が震えている。

 耳もまだ遠い。近くに誰かいるのか確認しようにも、視界がぼやけてまだ判断できそうもない。


「……よう」

「?」

「おはよう。レンジ君。」

「ふぁれだ?」

「まだしゃべれないか。良いけどね。」

「こぉふぁぼこぉら。」

「大丈夫。何を言ってるか分からないから。」


 視界がぼやけすぎて種族すら判別できない。

 耳が遠すぎて、性別も分からない。


「解毒にはどれくらいかかるの?」

「あと数日は動けないだけだから大丈夫だよ。」

「そう。なら良いの。」


 二つの声をキャッチした。

 でも、区別はつかない。会話っぽいからそう捉えただけに過ぎない。

 この状況をどうやって脱しよう…。


「この先で休憩しよう。今日は遅い。」

「そうだね。」


 体に伝わる振動が消える。

 何かに乗って移動していたのか。この振動の具合から、馬車であると考えられる。

 何かに乗せられて、運ばれる。誰かの背中か?

 硬い地面に置かれたと思ったら、頭が柔らかくて暖かい心地よい場所になった。

 頭に何か暖かいものを感じる。優しく頭を上下するその暖かさと鼻孔を刺激するその安心する匂いに一人の人物を思い浮かべる。

「い、ざる、な」

「起きたの。レンジ。」


 どうやら仲間の元に帰ることができたらしい。

 過程を何も知らないが、海の上ではなく陸の上であることを考えると船の手配に失敗したのか。

 あの龍人はどうなったのだろうか。

 どれほどの時間が経ったのだろうか。

 疑問点が多すぎるが、今はこの安心感に酔いしれておきたい。

 そのまま、眠りにつく。



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