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英雄譚  作者: 鈴木 雫
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第二十三話

「隣良い?」

「どうぞ。」


 ご飯を食べ終わり、一人で涼んでいたところイザルナが声を掛けてきた。

 森の中はやはり安心する。

 生まれ育ったところと似ているからだろうか。

 石の上に二人で座り、何でもない木を見つめる。


「どう思った?」

「何が?」

「次の〈ルミナール教〉の件だよ。」

「うーん、そうだね。俺は頭の意見を尊重するよ。だって、頭の願いを叶えるのが仕事だからね。」

「そう。ならよかった。」


 無言で手を握られる。


「レンジって暖かいよね。」

「そう?あんまり、自分では分からないな。」

「そうだけどね。面白いよね、他人しか分からない自分の側面って。」

「イザルナには俺がどう映っているの?」

「そうだね…秘密。」

「何それ…そんなに俺って変わってる?」

「そうだね、木に話しかけるくらいには変わってるよ。」

「それは、忘れてよ。」

「ごめん、ごめん。茶化しただけだよ。」

「真面目に答えてよ。」

「分かった。レンジは私が手を握りたくなるような人に見えるよ。」

「全然意味が分からないように聞こえるけど…」

「これで分からないようなら、教えてあげない。」

「そんなぁ、」

「情けない声出さないで。そういえば、前に『魔法』を使えてなかった?」

「あれは」


 必死だったからあまり覚えていない。

 フィリスの言っていた感覚で使うという意味が分かった。

 確かにあの時は使えていたけど、今では全然だ。

 極限の状態のため使えたに過ぎない。

 あの時の感覚もすぐに手元を離れてしまったし。


「今は練習中ってところ?」

「そうなんだよ。全然、習得できなくて。」

「教えてあげるよ。」

「助かるよ。」


 この日を境に、毎日夜中に教えてくれるようになった。


 数週間後、俺たちは【エルダローズ】に到着した。

 船の手配をしてもらうために港へと向かう。


「ルガン。ありがとうございました。ここでの恩は忘れません。」

「……悪かった。最初の態度を謝りたい。」

「気にしないでください。あの反応は正しかった。」

「ありがとう。楽しい期間だった。」


 ルガンと各々挨拶を交わし、行ってしまった。


「船の手配をしましょう。」

「大丈夫でしょうか。今まではオルヴァニス卿がしていましたから。」

「私もそこを懸念していたの。新生オルヴァニス卿が就任しているか分からないし、私たちが下手に出歩くわけにもいかないし…」

「俺が聞いてくるよ。共和国人の俺が聞いてこれば問題ないだろ。」

「ありがとう。レンジ。よろしくね。」

「任せろ!」


 なんの迷いもなく、人だかりができているところへと向かう。

 ある手配書を見た。

 知っている人物の者だ。

 っていうか俺だ。


「は?」


 でも、冷静に考えればそうだ。

 オルヴァニスを殺し、多種族が血眼になって探している王の隠し子。

 話題にならない方が難しい。

 数人と目が合う。

 恐怖で動けない。近づいてくる人々が恐ろしい。

 震える足を無理やり動かして、人混みに紛れる。

 船を持っていそうな人物を探すのは不可能なので、船に乗っている人を探す。

 大きくはないが、6人くらいなら乗ることができそうな船を見つけた。

 乗っているオークに話しかける。


「すみません。」

「?」

「船を貸していただけませんか?」

「なに言ってる?」

「ちょっと行きたいところがあるんですけど。」

「は?人間は泳いでいけばいいだろ。権力があっても水中では発揮できないか??」

「…」

「だんまりかよ。面白くねぇ。」


 そう言って、海へ行ってしまった。

 その後も、数人に声を掛けたが相手にしてもらえなかった。


「はぁ…」


 疲れたというより、泣きそう。

 冷たい人しかいない。

 一度帰って、みんなに相談するしかないか…。


「どうしたんです?こんなところで?」


 ある龍人が声を掛けてくる。

 その声から女性であると判別できる。

 鞄を持っているところを見ると、買い物の帰りだろうか。


「少し、疲れているだけです。」

「ダメですよ。そんな顔で座っていたら。不幸になってしまいます。」

「不幸に?」

「えぇ。嫌な顔をしていたら、不幸が向こうから歩いてくるんです。知りませんか?」

「聞いたことは…」

「この地方ではよく言われる言葉ですよ。不幸は訪れる物ではなく、自分が近づいてしまっている物だと。」

「そうなんですね…」

「ちょっと怪しいと思ったんじゃないですか?」

「鋭いですね。ちょっとだけ。」

「もう、親切心に傷が付きました。」

「すみません。」


 初めて親切な人と会えた気がする。

 どうしよう。惚れてしまいそうだ。


「仕事がうまくいかないとかですか?」

「そんなところです。」

「それは大変ですね。あ、でも聞かない方が良いですよね。」

「そんなことないですよ。聞いてください。」

「何に不満があるんですか?」

「不満と言うより、頼まれごとに行き詰ってしまって。」

「どんな?」

「深くは言えませんが、借り物を探しているんですが、貸してもらえなくて…」

「まぁ。何が欲しいんですか?」

「ここではなんですし、場所を移しませんか?」

「ここでは言えないことなのですか?」

「はい。ちょっと…」


 周りをちらちら見る。


「人気のないところへ移動したいです。」

「良いですけど…何もしませんよね?」

「もちろんです。」


 二人で路地裏に移動する。

 誰も通ることのないだろう道。

 当然周りには誰もいない。

 彼女が振り返る前に剣を取りだす。


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