第二十話
「ここからは、王との面会をするために動くわ。」
王都に到着する前に森の中で話をする。
「顔を知られていないのはルガンだけだけど、フィリスも大丈夫だと思うの。派手に動いていなかったし。そこで、ルガンが馬車を引いてフィリスが商人のふりをして王都に入ってもらう。すぐに動けるようにしておいてほしい。」
「分かりました。」
「ああ。」
「ガルフォード、ジル、ギル、レンジは私と夜になったら王宮に侵入する。」
「良いのですか?そんな荒っぽい方法で。」
「まずいかもしれないけど、レイ・セレシアに話がしたい。これが終わったら、【アルドリア】に帰って父と話をする。以上。解散。」
フィリスとルガンは馬車と共に王都に向かった。
その間に、侵入の手はずを整えておく。
イザルナが地図を出す。
「ここが一番手薄だと思ってる。」
イザルナが指を指したところは何の変哲もない塀の部分。
一見何もないように思える。
「ここに」
「何が」
「「あると言うのですか?」」
「ここはね、昔地下から人を運んでいた川が流れているの。その川を渡って中に侵入できるはず。」
「なぜ、そのようなことを知っておられるのですか?」
「中に協力者がいるからだよ。」
「協力者ですか?」
「うん。王宮には一人、お金を払っている人物が居てね。その子にいろいろと教えてもらっているの。」
そんな人物がいるとは驚きだ。
たった数回来ただけで、協力者を中に忍ばせておくとは。
「この川は、王都の外から流れてる。泳いでいけば中まで行けるはず。」
「泳いで!?」
「うん。どうしたの?」
どうしたの?じゃない。
地図を見る限り相当な距離がある。
気合でどうにかなるものでもない気がする。
「どんな川なの?」
「そんなに心配しなくても大丈夫。上流から水の流れに身を任せていけば疲れずに行くことができるはず、多分。きっと。おそらく。」
「へ、へぇー」
イザルナの根拠のない自信が逆に心配になる。
でも、ここで反対意見を言うような奴は一人もいない。
「分かった。行こう。」
「そうだな。なるようになるよな」
「「行きましょう。姫。」
「じゃあ、移動しようか。」
その川はそこまで離れていなかった。
すぐに到着し、絶望した。
冷たすぎる。こんなのに長時間使っていたら死んでしまうほどに。
勢いも強い。溺れるのも時間の問題だろう。
「行くぞ。」
ガルフォードは迷わずに行った。ジルとギルもそれに続く。
イザルナと顔を見合わせ、覚悟を決める。
水に飛び込み、流れに身を任せる。
水が体温を奪い去り、勢いが意識を連れていてくれる。
「死ぬ…マジで死ぬ…」
震える体を無理やり動かす。
感覚がない。服をすぐに脱がなくては。
震える手で、服を掴み急いで半裸になる。
王宮の地下は使われていないとはいえ、整備されて綺麗な状態だった。
風がよく通り、来るものを拒まない。むしろ迎えているような環境に思える。
寒さで何も考えられない。溺れなかっただけで幸運だった。気を抜くと死が迎えに来るようだった。
まだ、誰もついていない。みんなは大丈夫だろうか。
「はぁ…はぁ…、死ぬ………」
ガルフォードが水面から上がってくる。
「暖かいもの、、、くれ」
震える声でそういった。
「み、んな、あつま、って」
ジルとギルを抱きかかえたイザルナが水面から上がる。
「『火』」
イザルナの『魔法』で感覚が戻っていくのが分かる。
震えが止まり、体の芯から整ってくる。
「これで、侵入はできたね。かなり無理をしたけど。レンジ服を着て。」
「はい。」
そういえば半裸だった。
なんでこんなに寒いのに服を脱いだのだろう。
寒くてあまり、覚えていない。
「どこかに入れる場所がないか調べて。」
言われるがまま探索する。
静かに。誰かが、気づいてしまうかもしれないから。
「姫。」
ジルがイザルナを呼ぶ。
全員が集まる。
そこには、扉らしきものがあった。
かなり古い印象を受ける。相当使われていないのだろう。
「ここから入りましょう。」
動くことを確認する。
古い扉特有の音は慣れない。
耳に響く嫌な音。場に広がる緊張。
扉を開いてもそこには当然何もない。
「行きましょう。」
「「了解!」」
「はい。」
「うん。」
何もない暗い空間を何個か進み、階段をついに見つける。
階段を上り、明かりを見つける。
この先からは普段から使われている場所らしい。
暖かい空間に安心感と緊迫感を受ける。
切迫する空気の中、前に出る。
「イザルナ・アルドリア。待っていましたよ。」
一人の女性が扉の前で待っていた。黒い髪の毛を短く整えている。
女性と言えど、侮れないほどの実力を感じる。
腰に携えた剣は強者の貫禄がある。
「こちらです。案内します。」
奥へと案内される。
階段を上る前に、止められる。
「ここから先は、イザルナ・アルドリア一人で行くようにと仰せつかっております。他の方々はここでお待ちください。」
「しかし」
「もし、条件が飲めないようでしたら、来た道を戻らせるように言われております。好きな方を選んでください。」
イザルナが俺の肩を掴み首を振る。
「問題ありません。連れて行ってください。わたくし一人だけを。」
「分かりました。こちらです。」
イザルナは階段を上っていく。
心配そうな視線を送るが、彼女は背中だけを向け、振り向く素振りを見せない。




