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英雄譚  作者: 鈴木 雫
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第十九話

「今日はここで休む。」

「ありがとうございます。突然のことで。」

「……いや、」


 獣人は自分の名前を名乗ってくれた。

 ルガン。それが彼の名前だ。

 道なき道を進んでいく彼らしい名前だと思う。


「食材を取りに行ってくるわ。フィリス一緒に」

「「ちょっと待てください。」」

「なに?」

「「俺たちが行ってくるよ」」

「ほんと?じゃあ、お願いしようかな」

「「任せてよ」」

「フィリス」

「行くぞ。」

「はいはい。」


 フィリスとジルとギルが森の深いところへ消えていく。

 その間に俺たちは火を起こしておく。

 湿った木ばかりが落ちている。

 火を起こすのには少し、不向きそうだ。

 木を集め終わり、焚火をするであろう場所に持っていく。


「これだけあれば十分だろう。レンジ。よくやったな。」

「森で育ったからな、これくらいはできるさ。」

「街中で育った俺からすれば羨ましいな」

「そう?街の方が便利で良いと思うけど。」

「そうでもないさ。どんな時にでも役に立つ知識を持っていると生き残る可能性が増える。」

「そうかな。」

「そうだ。」

「冗談もうまいしな」

「もういいよ、その話は。」


 ガルフォードと一緒に火を起こす。

 火が安定したので、馬車で休憩しているイザルナを呼びに行く。


「イザルナ?起きてる?」

「起きてるよ。」

「少し冷えるだろうから、焚火のところにおいでよ。」

「分かった。」


 少し疲れている顔が心配だ。

 静けさの中で、焚火の音だけが耳の中で心地よく跳ねる。


「大丈夫?顔色が悪いよ」

「ちょっと疲れているだけだよ。心配しなくても大丈夫。」

「なら、良いんだけど。」

「横良い?」

「もちろん。」


 イザルナは俺の横に座りなおし、焚火を見つめる。


「あいつら遅いな。ちょっと様子を見てくる。レンジ、姫様を頼んだぞ。」

「任せて。」


 ガルフォードは影に消えていった。

 焚火に木を入れて、火力を調節しておく。

 イザルナが手を握ってきた。


「どうしたの?」

「別に。」

「そう。」


 特に会話はない。

 パチパチと鳴る木々を見つめる。

 焚火をしていたのを忘れて、森を燃やしかけたこともあったな。

 あの時は、アリセナ姉が消火してくれたからよかったものの本来なら罰を貰うところだった。


「あんなに怒られたのは初めてだったから。」

「あ、ごめん、言い過ぎたよな、悪かった。」

「あんなに自分のことで叱ってくれる人はいなかったから。」

「いや、ごめん、言葉とタイミングを選ぶべきだった。」

「あんなに親身になってくれる人はいなかったから。」

「みんな優しいじゃん、どうして?」

「私が王族だから、みんな神経質なほどやさしくて、踏み込んでこない。だから、いつも正解を導きださなくちゃって、失敗したら見放されるって、怯えてた。」

「…」

「でも、みんな見てくれていたよね。だから、これからはわがままを言うね。」

「うん。それでいいと思う。わがままじゃないリーダーはつまらないよ。」

「ありがとう。今後は気を付ける。じゃあ、一つ目のわがままね。」

「記念すべき最初の?」

「そう。」


 そういうと頭を肩に乗せてきた。


「これが?」

「みんな帰って来るまででいいから。」

「分かった。」


 焚火の明かりだけで成り立っている空間。

 それ以外の明るさは沈んでしまった。


「二人とも待たせたな。」


 4人が帰って来る。


「どうしたのです。」

「姫」

「「顔が赤いですよ。」」

「べ、別に、」

「「そうですか。」」

「レンジ君はすっきりした顔だね。」

「そうかな。先生」

「そう見えるよ。」

「無駄話してないで手伝え。」


 果物とキノコを食べる。

 キノコは火であぶる。これで何回お腹を下したことか。


「ルガンは?」

「彼は、一人になりたいって。」

「どこに居るの?」

「あっちで見たぞ。」

「声だけかけてくるよ。」

「暗いから気を付けろよ。」

「うん。」


 ガルフォードから教えてもらった方向へ歩いていく。

 石の上に座っている一人の獣人が居た。

 寂しそうな、悲しそうな、何かを考えてるような顔だ。


「お腹空かない?」

「なんかくれるのか?」

「みんなが採って来てくれたんだ。」

「……少し、貰う。」

「はい、」


 ルガンに果物を渡す。

 お腹が空いているのか、食らいつく。


「なんで、向こうで食べないんだ?」

「俺は嫌われてるだろうしな。」

「そんなこと」

「良いんだ。最初は俺が悪かったんだから。今更、受け入れられたいとは思わない。」

「そんなこと言うやつはいないと思うけどな。」

「そうか?」

「うん。ルガンが来てくれなかったら、俺たちは路頭に迷ってた。本当に感謝してる。」

「そうか…」

「明るいところに行かないか。」

「その言葉に甘えよう。寒かったところだ。」


 ルガンを連れて、焚火へと戻る。

 もちろん歓迎された。

 俺のせいで、王都から追われるような形になったのに何も言わなかったり、ルガンの態度についても言及しない。

 彼らは本当に優しい集団だと思う。


 翌日も道とは言い難いところを進む。

 大通りを通るのは避けた方が良いとイザルナが言ったからだ。

 道が険しいため、休憩を多めにとる。

 ルガンも空気に慣れてきたのか、険しい態度を改めていった。

 3週間後、王都【セレシア】に到着する。


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