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英雄譚  作者: 鈴木 雫
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第十八話

 イザルナと共に廊下に出る。


「ガルフォードと合流しよう。」

「うん…」


 イザルナは子供のような声をあげる。

 手を引いて、階段を下りる。


「姫!!」

「ガルフォード!」

「よくぞ、御無事で。他の者は外に居ます。合流して、海を目指しましょう。」

「そうね。ガルフォードは3人を迎えに行って。レンジと私は海へ急ぐから。」

「かしこまりました。レンジ。」

「ん?」

「ほら、剣を持っていけ。折れてるだろそれ。」

「助かるよ。」


 ガルフォードと解散したのちに、外に出て、海を目指す。

 まだ、イザルナは手を離してくれない。

 ガルフォードと話していた時はいつもみたいな凛々しい声色だったのに。


「イザルナ、海に着いたよ。」

「うん…」

「ごめん、怒ってる?」

「そんなことない。」

「そっか…」


 しばらくの静けさ、先ほどの喧噪とは逆転した環境に風邪を引きそうだ。


「さっきの。」

「分かってる。誰も言わないよ。」

「そうじゃなくて、」

「?」

「何でもない。」

「そう?」


「「姫!!」」


 ジルとギルが泣きながらイザルナに抱き着く。

 フィリスは見たことのない不気味な笑みで3人を見つめている。

 牢屋では演技のつもりだったのかもしれないが、こうやってみると本音だったのではないかと思う。


「どうするのです?これから。」

「王都【セレシア】に向かいます。」

「分かりました。」

「獣人を手配してきます。レンジ、一緒に来い。」

「分かった。」

「「姫…」」


 ギルとジルは戦闘力だけ言えば子供のそれを凌駕しているが、イザルナにしがみ付いてる光景を見れば、まだまだ子供だと微笑ましい気持ちになる。

 ガルフォードと獣人を探しに行く。


「何があった?」

「何が?」

「姫の顔色を見れば分かる。何があった。」

「イザルナに言わないって約束しちゃったから…」

「そうか。お前も面構えがよくなったな。」

「ほんと?」

「あぁ。騎士に近づいてる。今回の件は詮索しないが、今後は相談しろよ。」

「分かった。あと、オルヴァニスを殺したよ。」

「そうか。」


 無言で、道を歩く。

まだ日も昇っていないため、家々の明かりを頼りに進むしかない。

この時間帯に訪ねても、応えてくれる者は居るのだろうか。


「そういえば、さっき、聞き間違いをした。」

「何が?」

「オルヴァニス卿を殺したって聞き間違いをしたんだ。すまない、本当は何を言いたかったんだ?」

「いや、合ってるけど…」

「そうか。」


 この街は本当に大きい。

 日中は道も歩けないほど、ごった返している。

 まだ、寒い夜道を二人だけで歩く。オルヴァニスの兵士たちが動きを見せないのが奇妙で仕方がない。


「すまない。今日は疲れているらしい。全然、耳が仕事をしてくれない。なんて言ったのか説明してくれ。」

「だから、オルヴァニスを殺した。」

「それは、同じ名前のそっくりさんとか?」

「違うよ。【エルダローズ】の管理人、オルヴァニスを殺したんだ。」

「へへへ…」


 しまった。ガルフォードが壊れた。

 確かに、この状況下で管理人を殺したのはまずかったけどしょうがなかった。


「お前、やっぱり面白いな。」

「冗談のつもりじゃないんだけど。」

「そうだよな。へへへ…」


 だめだ。ガルフォードとはこれ以上会話ができそうもない。

 先日王都に連れて行ってくれた獣人の家まで到着する。

 扉を叩き、呼ぶ。

 こんな時間に応対してくれるか分からないが、この獣人意外に頼れる者はいない。

 明かりがつき、扉が開かれる。


「なんだ。」

「申し訳ない。力を貸してほしい。」

「どこへ行きたい。」

「王都」

「準備する。少し待て。」

「助かる。ありがとう。」


 一瞬で出てきてくれた。

 服を着替え、馬車を持ってきてくれた。


「残りは?」

「海の方に居るんだ。」

「そうか。乗れ。」

「本当にありがとう。なんて、言えば」

「いや、俺も過去に捕らわれるだけじゃなく何かをしてみたくなった。」

「今は、ただ感謝する。ガルフォード行くよ。」

「へへへ…」

「たく…」


馬車に乗り込み、海へと向かう。

 その後に全員が乗り込み、王都へと向かう。


「姫」

「気分が」

「「すぐれないのですか?」」

「いや、そんなことないよ。どうしたの?」

「だって、」

「うつむいてるから」

「「心配で」」

「大丈夫だって、心配しすぎだよ」

「「なら、良いんですが」」


 ギルとジルはイザルナにべったりだ。

 本当の兄弟ほどの距離感。

 そういえば、イザルナは第二王女だ。

 他にも兄弟がいる。最低でも一人。兄妹間の仲は良いのだろうか。

 家族の話を聞いたことがない。王家の人間関係。あまり、想像したくないが、複雑なものに違いないだろう。

 隠し子を殺さなくては、成り立たない国もあるのだから。

 オルヴァニスは内戦派だった。他の地方の管理者も国外ではなく、内戦を始めたくてうずうずしているのだろか。

 これを、イザルナは把握しているのだろうか。

 戦争の真っ最中に、内側で揉め始めたら、この国は終わりだ。


「レンジ、難しい顔してどうした。」


 先ほどまで壊れていたガルフォードが顔を覗かせる。


「いや、別に。」

「そうか。お前は冗談がうまいからな。新ネタでも考えていたんだろ。」


 彼の中では、冗談ということになっているらしい。

 いつになったら信じてくれるのだろうか。

 イザルナ経由で話したら、信じてくれそうだけど泡吹いて倒れそうだなコイツ。


「冗談って何だい?」


 フィリスが興味を持った。


「こいつが、オルヴァニスを殺したという冗談をしつこく言ってくるんだ。なぁ、レンジ。」

「だから、本当だって。」

「へへへ…」

「こいつ」

「そうなのかい?レンジ君。」

「うん。」

「そっか。事情があったにせよまずいかもね。」

「悪い。また、迷惑を…」

「いや、これでよかったのかもね。」

「?」

「オルヴァニス卿は、内戦を起こしたがっていたんだろう?我々のような終戦派とは分かり合えないはずだよ。それに、あの色ボケジジイはイザルナ様に御執心だったからね。」

「知ってたの?」

「女の勘さ。だから、あの時はまずいと思ってた。でも、結果的に何もなかったんでしょ?」

「え?うん!」


 きれいにとは言えない嘘をついた。

 彼らも理解していたらしい。フィリスは勘が鋭いから、大体のことは把握しているように見える。

 ガルフォードは馬車の柱と会話している。

 王都へ向かう俺たちの次の難関は明日にでも起こりえるのだろう。


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