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英雄譚  作者: 鈴木 雫
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第十四話

「レンジのご両親は何を?」

「俺の両親は戦争で死んだ…らしい。」

「らしい?」

「聞いただけだから、本当のことは知らない。」

「そういうことよね。」

「何が言いたいの?」

「レンジの背中の傷…それは何?」

「傷?」


 傷なんてあっただろうか。あまり、自分の背中を見ることはなかったので印象にない。

 どんな傷が刻まれていたのだろうか。


「何かあったの?」

「その傷から察するに多分翼か何か生えてたんだろうね。」

「翼?」

「鳥とかについてるでしょ。または、現国王とかね。」

「それって、どういう…」

「そして、その石。首にぶら下がっているその石。誰からもらったの?」

「これは、出身の村で…」

「王家の宝石が?」

「は?」

「多分レンジは、何も聞かされていないんだろうね。それどころか、両親について何も知らない。君は、前国王の隠し子だよ。」

「え、」


 しばらくの静寂が訪れる。

 隠し子…。しかも前国王の。おれが…?

 急すぎて話が入ってこない。

 さっき、王様に半裸にされたよりも衝撃的な話だ。


「【共和国】にはね、王として君臨するための規則があるんだ。」

「どんな?」

「王は多種族のハーフであること。そして、人間との間に子供を作るときは最低限であること。」

「なんで…」

「それはね、種族間のパワーバランスに関わってだよ。王のベースは人間。そこからさまざまな種族と繁殖してきた。その中で人間との子供は一番少ない。それは人間の地位が高くなりすぎることを危惧した他種族が控えるように助言したからなんだ。」

「俺は、人間との子供ってことか?」

「そうだね。レンジは人間としての特徴が揃っているから人間と王の間の子供なんだろうね。でも、翼が生えている点とか身体能力が他の人より高いところは混血の特徴と一致している。」

「でも、それは王様との子供っていう証拠にはならないだろ。」

「そうだね。これは飛躍しすぎているかもしれないけど、現国王がここまで動いてるってことは本当の話だと思うよ。」

「そんな…なんでイザルナはそんな話を知ってるの?」

「私は、情報通だからね。ある程度のことは知ってるよ。情報にはお金をかけてる。」


 誰もが沈黙の中、二人の話を聞いている。


「ひとまず、ここを離れよう。そうしないと捕まって、何をされるか分かったものじゃないからね。」

「獣人を呼んできます。フィリス一緒に来てくれ。」

「分かった。」

「ジル、ギル姫とレンジを見張ってろ。」

「「了解!」」


 二人は外に出て行った。


「レンジは」

「王様に」

「「なれるのか?」」

「そうは思わないけどね。」

「そうなの?」

「姫様。」

「継承権はないと思うよ。表向きには王様の子供ではないからね。おそらくレンジの正体を知られたら内戦が勃発するんじゃないかな。」

「なんで、そんなに…」

「今、共和国は戦争と同時に内戦の蓋が開こうとしてる。なぜなら、種族間のパワーバランスが取れていないからね。戦争で絶滅寸前の種族もいれば、戦争を通して儲かっている種族もいる。強いはずの種族が抑圧されればいずれはそうなるよ。その火種がレンジ。君だよ。」

「でも、たかだか子供一人のせいで…」

「火種は何でもいいの。自分たちの種族が繁栄できれば。人間が王位を持っていることで戦争に負けているってとらえ方もできるしね。しかも、今の神兵はエルフと獣人と人間だ。元々神兵は多種族で構成されるはずなのに。これも原因の一つだろうね。現国王は人間に近い容姿をしていないから、まだましだけど。君が表舞台に出れば、このバランスは崩壊する。」

「…」

「深く考えるなレンジ」

「俺たちが守ってやる。」

「助かるよ。」


 子供に心配されて、安心する。

 自分より幼い二人の方がしっかり者である。

 イザルナの話を聞く限り、二度と共和国で暮らすことは出来なさそうだ。故郷の村に帰ったとき何をされるか分からない。

 顔も見られてしまったし。冤罪で村に被害が出ることはやめてほしい。


「馬車が来る頃だね。外に出ようか。」

「そうだね。」

「「分かった。」」


 外に出る。

 まだ、多くの種族が道を横断していた。

 この中なら、ばれることはないだろう。

 馬車を引いた獣人が歩いてくる。


「こんな時間にどこへ行くのですか?」


 後ろから声を掛けられる。

 振り向くとそこには性別が分からないほどの長髪と美貌を兼ねそろえた、低い声の人間が立っていた。


「そんな顔で見つめないでください。私は、テトラ。レンジと言う者を置いて行きなさい。」

「断ります。」

「それは残念です。逃げ切れると思わないでいただきたい。【アルドリア】の姫君。」

「馬車に乗って!」


 その掛け声と共に、走る。馬車に乗り込み、進む。全員が何とか乗ることができた。


「急いで!」


 全速力で王都の外まで走る。

 獣人は息を切らしながら、運んでくれる。


「囲まれたぞ!どうするのです姫!」

「『魔法』を使います。フィリス手伝って!」

「分かった。」


 二人は馬車の真ん中で手を握り、集中する。

 この喧噪の中でこれほどの集中力を発揮することができるなんて、驚きだ。

 張り詰める空気の中で、『魔法』を唱える。


「「『移動』」」


 一瞬にして、街の外まで出ることができた。

 周囲はどこか分からない森の中だ。


「やっぱりここだな。」


 先ほどとは違う者が待ち構えていた。

 人間の男性。先ほどとは違い、すでに剣を抜いてこちらに歩いてくる。


「レンジを渡せ。」

「断る。」


 ガルフォードとジル・ギルが前に出る。

 イザルナとフィリスは『魔法』を使ったため、動くことができそうもない。


「レンジは中で姫を守れ。」

「分かった。」


 両国の騎士が激突する。


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