第十話
日が昇ると同時に川から船が運ばれてくる。
「あ!来た。」
イザルナが向いている方向へ目を向けるとジルとギルも到着したようだ。
「姫様」
「お怪我は」
「「ありませんか?」」
「何ともない。心配してくれてありがとう。」
「「いえいえ!」」
元気そうな二人を見ると何もなかったみたいだ。
「おいレンジ。」
「姫様に」
「「何もなかっただろうな」」
「え?う、うん。」
「「本当か??」」
「何もなかったよ。」
「「なら、良い。」」
到着した船から、大陸へ移動するための大きな船に乗り換える。
すごく大きな船だ。こんなに大きな船が動くことが想像できない。何も生物が運んでいるわけではないのにまっすぐに共和国へと帰ることができるらしい。
「じゃあ、行こうか。」
「行く?」
「共和国へ。」
「え?【アルドリア】での活動は?」
「【アルドリア】は難航しそうだからね。【共和国】へ渡って、一度国王に話をしたい。」
「分かった。」
船は動き出す。風の力とかで動いているらしい。いろいろと説明されたが何もわからなかった。
一か月ほどで到着した。
地獄のような日々だ。慣れない船上で気持ち悪くなるし、食事は制限され満足のいくように食べられない。ずっと同じ景色を見せられてすぐに飽きてしまった。毎日のようにトラブルが起きるし。
こんなに不便なものに乗らないと国を越えられないと言うのは大変だ。
到着してすぐに【共和国】から【アルドリア】に連れてこられた人々を解放する。港にはたくさんの人であふれており帰国したものと涙を流している者もいる。
「ここではね、帰国の手伝いをしてもらっているんだ。」
「誰に?」
「【エルダローズ】の領主。オルヴァニス卿よ。」
「オルヴァニス?」
「このあたりを管理している龍人。レンジって地理に詳しくないの?」
「正直、全然わかんない。」
「そっか。共和国はね、5つの地方と王都の6つの地域があるの。そのうちの一つが、龍人が管理している【エルダローズ】。他にも獣人が管理している【グレンウッド】。ドワーフが管理している【アッシュホルム】。吸血鬼が管理している【フロスディーベル】。巨人が管理している【ティルヴェナ】。そして、人間が管理している王都【セレシア】。この6種族が共和国を平和に導いているの。」
初めて聞いた。改めて地理のことを教えてくれる人なんていなかったから。しかも田舎出身者だとあまり関係ないから気にしたこともなかった。
「6種族以外の種族は彼らに従属する形でこの国に住んでいるの。」
「そうなんだ。知らなかった。」
「共和国人はあまり気にしていないのかもね。権力を気にするのは人間特有の本能だろうから。」
「そうなの?」
「そう。なにかと上下をつけたがるの。だから、明確な序列を作る。それが【アルドリア】。自分たちよりも下の者が幸せに暮らしているのが許せないんだよ。」
軍の授業でもあまり触れられなかった。これらの常識と呼ばれる部分。もっと深く知識を掘り下げなければいけないのかもしれない。
「いろいろと教えてよ。イザルナ。」
「別に構わないけど、今はオルヴァニス邸に急がないと。」
「あ、ごめん。そうだよな、急がないとな。」
6人である屋敷を訪ねる。
オルヴァニス邸。豪華な装飾が施されたその屋敷には使用人が今日も廊下を往復する。山の中腹に存在するその屋敷は綺麗な日を取り込み、美しく反射している。
「ごめん下さい。」
「はい。お呼びでしょうか?」
「わたくし、イザルナ・アルドリアと申します。オルヴァニス卿との面会に参上したしました。」
「お入り下さい。旦那様はお待ちになっております。」
「ありがとうございます。失礼します。」
6人で屋敷の中に入る。龍人とは会ったことがない。羽とか生えてんのかな…。想像もできない種族の外見にわくわくする。
大きな扉を開け、中に入る。
「来たか。」
「失礼いたします。イザルナ・アルドリア到着いたしました。」
そこに立っていたのは人間の成人二人分ほどの大きさを誇り、体中に鱗が生えている老人だった。トカゲのような尻尾が生え、顔は人間に近い。長寿の種族ということで実際の年齢は推測できそうもない。
「座れ。」
「失礼します。」
「仲間を連れてきたのか。」
「はい。わたくしと使命を共にする者たちです。」
「共和国人も仲間にしたとはな、感心だ。」
「お褒めいただき光栄です。」
俺たち5人は壁側に立ち、二人は会話を進める。
「此度もご苦労であったな、イザルナ・アルドリアよ。」
「はい。これがわたくしの使命でございますから。」
「疲れたであろう。ゆっくりとして行け。貴公らは街で目立つ。ここで休むと良い。」
「ご配慮感謝いたします。」
「良い。何か話したいようだな。」
「はい。申し上げます。王都【セレシア】に向かい、王と対話したいのです。」
「なぜだ。」
「はい。今後、戦争は激化すると考えております。その前に協定を結んでいただきたいのです。」
「それを貴公らが説得すると?」
「いえ、協定を結ぶ準備があるのか確認したいのです。」
「そうか。すぐに獣人を用意しよう。明日には出発の手はずを整える。」
「はい。感謝いたします。」
「良い。今日は休むと良い。我ら【エルダローズ】は貴公らを歓迎する。」
部屋を離れて、宿泊するための部屋に案内される。
気前のいい人らしく、一人一部屋くれた。
ふかふかの寝床に体を預ける。体が沈んでいくのと同時に意識が引っ張られていく。ここで睡眠に入らせてもらう。




