ベルフォードとリーファの昔話 ②
ベルフォードとリーファの昔話 ②
「魔法は『欠陥品』なんて言葉が聞こえてきたけど、まさか本気でそんな事を思ってるわけじゃないわよね?」
俺の目を鋭く射抜きながら、ハーフエルフの女性がそう言ってきた。
実年齢はわからないが、見た目だけなら俺と同じくらいに見える。ならば臆する必要なんて微塵もない。
だから俺はこのハーフエルフにも同じことを言ってやることにした。
「剣に比べたら魔法なんて詠唱が必要な欠陥品だろ?そもそもお前ら魔法使いは護ってくれる奴がいないと何も出来ないじゃないか。偉そうな口聞くなよ」
俺がそう言うと、周りでやり取りを聞いていて剣士達から喝采が上がった。
魔法使いからの視線は相変わらずだけど。
まぁ別に構わない。誰からも好かれよう。なんて思ってるわけじゃない。
商人ならそうは行かないが、俺は冒険者になりに来たんだからな。
「ふーん。まぁ確かに貴方の言うように私たち魔法使いは誰かに護ってもらわないと魔法は撃てないわよ」
「だろ?」
俺がそう言うと、ハーフエルフの女性はニヤリと笑いながら俺に言葉を返した。
「でも、貴方たち剣士に多彩な攻撃が出来るのかしら?私たちなら敵を攻撃するだけじゃない。拘束したり、味方を護ったりも出来るわ。斬るしか脳がない連中とは違うわよ」
彼女がそう言うと今度は魔法使いから喝采が上がった。
確かに。剣士は斬るしか出来ない。
なんなら複数の敵を攻撃することすら出来ない。
……悔しいけど、このハーフエルフが言うことも正しい。
「……でもそれは『一流の魔法使い』の話だろ?」
そうだ。多彩な攻撃魔法。味方を守る防御魔法。味方を補助する補助魔法。治療を行う治癒魔法。そう言ったものを、高いレベルで扱うのは、一流の魔法使いにしか出来ない。
火の玉一発撃つだけ。みたいな魔法使いだってゾロゾロいる。
「……ふふふ。そうね。確かに多彩な魔法を使うには才能と努力が必要よ」
「そうだろ」
「でもね。私はハーフエルフよ?魔法を使う才能に溢れ、研鑽を重ねる時間も沢山あるわ」
なるほど。見た目からして若そうに見えたが、やはりハーフエルフ。かなりの年齢がいっていたのか。
「なるほど。お前、若そうに見えたけど実は相当歳を……ひぃ!!!???」
俺の言葉を遮るように、彼女は杖を突きつけてきた。
「……何か言ったかしら?」
「……いえ、何も」
「ならいいわ。次からは言葉を選びなさい」
彼女はそう言うと、杖を懐へとしまいこんだ。
チラリと見えたが、随分と控えめな胸をしていた。
………わかる。これを口にしたらきっと先程以上の結末が待っていると。
「ねぇ、貴方。パーティは決まってるのかしら?」
「……決まってない。さっきこの国に来たばかりだからな」
俺がそう言うと、彼女は笑いながら俺に提案してきた。
「ふふふ。そうなのね。だったら私とパーティを組まないかしら?」
「……何でだよ。さっきまで俺はお前ら魔法使いを馬鹿にしてたんだぞ?」
「だからよ。貴方の目に私たち魔法使いがどれだけ必要かを教えてあげるわ」
「……なるほどな。面白いじゃないか。だったら俺もお前に俺たち剣士がどれだけ必要かを教えてやるよ」
俺がそう言葉を返すと、彼女は笑いながら自己紹介をしてきた。
「ふふふ。良いわよ。私に貴方がどれだけの実力を持ってるか見せてちょうだい。私はリーフレット・アストレアよ。長いからリーファで構わないわ」
「そうか。俺はベルフォード・ラドクリフ。故郷ではベルって呼ばれてるな」
「そう。なら私もベルって呼ばせてもらうわ」
リーファはそう言うと俺に右手を差し出してきた。
「よろしくね、ベル。貴方とはなんだか長そうな付き合いになりそうだわ」
「そうか。なら期待を裏切らないようにするよ」
俺はそう言葉を返して、彼女の手を取った。




