第三話 ~早朝から現れたミソラと四人の嫁でツキの朝ご飯を食べることになった。
第三話
「お疲れ様です。ベルフォード。もうすぐ朝ご飯の支度が終わりますので、椅子に座って待っててください」
朝のトレーニングを終えて家の中へと入ると、笑顔のツキが出迎えてくれた。
すると、視線を隣に移した彼女が少しだけ眉間に皺を寄せながらミソラへ話しかけた。
「おや……隣に居るのはミソラさんですね。朝から一体どうしたのですか?」
「おはよう、ツキさん。朝からお邪魔してごめんなさいね。ちょっとベルとリーファに話があったのよ」
「ベルフォードとリーファに話ですか……もしかして、龍の住処にご一緒する。とかですか?」
「ふふふ。ご名答。ギルドの方には話をつけてきてあるの。だから心配には及ばないわ」
少しだけ不穏な空気が部屋に流れた。
だが、それも一瞬で、ツキは少しだけため息まじりで言葉を紡いだ。
「……そうですか。理由とかも含めてお聞きしたいことは多々あります。ですが、とりあえずお話は後で聞きますね」
「ええ。構わないわよ。それじゃあ私もツキさん自慢の料理を楽しみにして待ってるわ」
「……もしかしてそれが理由で朝早くからきたのでは?まぁ……良いですよ」
ツキはそう言うと台所の方へと歩いて行った。
「……一触即発な雰囲気があったけど大丈夫だったな」
「別にあれくらい普通でしょ?まぁツキさんからしたらベルを狙う女をこれ以上増やしたくない。ってのが本音でしょうし」
「……ミソラも加わるのか?」
俺がそんな『自惚れ満点な言葉』を言うと、ミソラは少しだけ笑いながら言葉を返す。
「あはは!!そうね。ベルのことは悪くないとは思うけど、私は勝ち目の無い戦いはしない主義なの」
「……そ、そうか」
「それに、あんた達のやり取りを外から見てる方が楽しいわ。そこに加わるつもりは無いから安心していいわよ」
ミソラはそこまで言った後に、俺の耳元で小さく囁いた。
『でも、ベルが私と一緒になりたい。と言うなら考えてあげてもいいわよ』
「……ミソラの冗談として受け取っておくよ」
「ふふふ。半分冗談よ」
……てことは半分は『本気』だろ。
そんなことを考えながら椅子に座り、テーブルの上に置いてあった新聞を手に取る。
1面には『スフィア王女!!元Sランク冒険者のベルフォード氏との結婚宣言!!』とデカデカと書いてあった。
「……頭が痛い」
「あんたも大変ね。まぁ自業自得な部分も多々あるとは思うけど」
「……どこが自業自得なんだよ。俺はただ『故郷でスローライフをしながらゆっくり暮らしたい』って思ってただけなのに」
「迂闊に『婚活』なんて言うからよ」
「……それは失言だったと猛省してるよ」
そんな話をしていると、スフィとリーファが居間へとやって来た。
「おはようベル……あら、ミソラ。朝からどうしたのよ?」
「おはようございますベルフォードさん。それにミソラさんも」
「おはようリーファ。おはようございます、スフィア王女」
「ふふふ。ミソラさん。ここではスフィで構いませんよ」
「わかりました。ではスフィさんと呼ばせて頂きます」
「敬語も必要ありませんが、まぁそれは良いですよ」
「それで、ミソラはこんな時間からどうしたのよ?」
首を傾げるリーファに、ミソラはここは来た理由を伝える。
「ベルとリーファとツキさんが龍の住処に行くでしょ?それに着いていくつもりよ」
「……あらそう。ギルドの方は平気なの?」
「大丈夫よ。そもそもギルドは私が居なくても回せるようにするのが目標ですもの」
「その為に豪鬼さんを使うのはどうかと思うけどな……」
「ふふふ。私、使える物は何でも使う主義だもの」
すると、俺たちの目の前にツキお手製の朝ご飯が並べられて行った。
今日の朝ご飯は『ほかほかの白米』に『味噌汁』に『目玉焼き』さらには『お漬物』と和食が並べられた。
「あら、とても美味しそうね。このお漬物は小鳥の憩い場のものかしら?」
「よくご存知で。チヒロさんからの頂き物です」
「きゅうりと大根と人参のお漬物か。ご馳走じゃないか」
「和食ですか……私は小さい頃にベルフォードさんに連れられて食べたきりでしたね。楽しみです」
「ふふふ。じゃあ冷めないうちに食べ始めましょうか」
こうして、普通サイズなテーブルの上に並べられた食事をみんなで囲み、俺たちは朝の食事を始めた。