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第十九話 ~リーファの拘束魔法とツキのお陰で大型ウルフを無事に討伐出来た~

 第十九話




 俺と向き合った大型ウルフが天に向けて咆哮を上げた。


『ガアアアアア!!!!』

「大型ウルフの固有スキル『戦闘能力向上化(ウォーク)雄叫化(ライ)び』か……」


 本当ならこれを使われる前に討伐したかったが、不意打ちを出来なかった時点で無理な話だろう。


 これによって大型ウルフの討伐ランクはA+へと格上げだ。


 後ろではリーファが最大威力の拘束魔法の詠唱をしている。

 あのSランク魔獣のグリフォンですら身動きを封じる魔法だ。大型ウルフと言えどそれからは逃れられない。


 ただやはり、リーファの魔法は強力な分詠唱に時間かかかる。その時間を稼ぐのが俺の仕事だ!!


 猛然とこちらに向かってくる大型ウルフ。

 ウォークライの効果も相まって、中堅の冒険者では手に余るような速度でこちらに肉薄する。


 そして、丸太や岩をも軽く引き裂く爪を振り上げ、大型ウルフはこちらに攻撃を仕掛けてきた。


「守護の太刀・月天流……一の型。三日月の舞!!」


 それを迎撃するように月光を閃かせて、俺は大型ウルフの右の前脚を斬り飛ばす。

 中型と違い、大型は反応速度が更に早い。


 一太刀で首を斬り飛ばすのは無理だからだ。


『グウウウウウウウ!!!!!』

「闘争心を失わないのは見事だな」


 片脚を失ってなお、大型ウルフの目からは戦闘色が消えない。


 そして、三本脚とは思えないような速度で俺の元へと再び駈けてくる。

 単純な体当たりだ。これを避けることは簡単だが、そうするとリーファの詠唱が中断されてしまう。


 俺は月光を横にしてウルフの突撃を正面から受け止める。


「ぐぅ!!」

『大丈夫ですか!!ベルフォード!!??』


 地面に足を食い込ませながら、俺は大型ウルフの身体を弾き返す。

 まだまだ若い奴には負けない!!


「大丈夫だよ、ツキ。この程度ならなんの問題も無い」

『流石です、ベルフォード!!』


 少しだけ距離の空いた対象に向けて俺は月光を構える。


 すると、大型ウルフは敵わないと思ったのか、身体を反転させて逃げの姿勢を取った。


『あ!!逃げてしまいます!!』

「大丈夫だよ、ツキ。多分そろそろ……」

「待たせたわねベル!!詠唱完了よ!!」


 逃げを打とうとした大型ウルフの足元から、先程の鎖とは太さも量も別次元の拘束魔法が解き放たれる。


『ガアアアアア!!??』


 ガチャン!!ガチャン!!


 と大型ウルフは身体を捩るが、脱出は叶わない。


「これで終わりだ」


 俺は大型ウルフへと距離を詰め、月光を上段に構える。


「守護の太刀・月天流……(ふたつめ)の型。半月(はんげつ)(ざん)


 一の型。三日月の舞は速さに特化している技だ。

 そして二の型。半月の斬は一太刀の威力を上げた技。

 グリフォンの両翼を切り飛ばしたのもこの技だ。


 俺が振り下ろした月光は、大型ウルフの首を一太刀で斬り飛ばした。




 そして、回収袋で大型ウルフの死骸を回収しながら、俺はリーファにお礼をする。


「ふぅ……ありがとう、リーファ。助かったよ」

「お礼は私の方よ。しっかりと守ってくれてありがとうベル」


『ベルフォード!!私のことも忘れないでくださいね!!』

「忘れてなんかないよ、ツキ。いつもありがとう」


 大型ウルフの討伐を終えた俺たちは街道に停めていた馬車へと戻った。


『お疲れ様でした!!ベルフォードさんにリーフレットさん!!』


 馬車の運転手は俺たちを見つけると、安心したように笑顔で出迎えてくれた。


「少し待たせてしまったね。盗賊とかに襲われてなくて良かったよ」

「ここら辺は治安は悪くないけど稀にいるからね。さてそれじゃあ馬車旅を続けましょうか」

『私はおしりが限界なのでこの姿のままでにします……』


 ツキが少しだけしょんぼりしながら俺にそう言ってきた。

 あはは。まぁ無理はしない方が良いよな。


「ツキは調子が悪いみたいだから、刀の姿でいるって話だよ」

「あらそうなのね。じゃあベルの隣は私のモノね」


 馬車へと乗り込んだ俺の隣に、リーファはそう言って腰を下ろした。


『むむーーー!!!!この女狐め!!私が居ないことを良いことに!!許せません!!』

「あはは……そんな馬車の中で変なことはしないからさ……」

「あら、ベル。貴方さえ良ければキスくらいならしても構わないわよ?」


 リーファはそう言うと俺の右腕を抱きしめるようにして身を寄せる。

 魔獣の討伐をしたので少し汗ばんだリーファの身体。

 柔らかさと相まって理性を削ってくる。


『離れなさい!!離れなさい!!離れなさいリーファーーーー!!!!』

「ふふふ。私には聞こえないけど、ツキが叫んでるのはわかるわ」

「俺の頭の中ではツキがすごいことになってるよ……」


 そして、肉体的にはリーファからの柔らかさを存分に押し当てられて。頭の中ではツキの金切り声が響き続けて。そんな天国と地獄の時間を過ごしながら、終点のセルティックへと馬車は走っていった。

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