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アルター・ワールド  ~三画TRAVEL~  作者: 一夜一海
明日香編・第一章
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第四幕・交錯する意思

「何をやってるんだキミはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「うおっ、耳元で叫ぶんじゃねぇよー」


 (つんざ)くような怒声が、響き渡る。

 声の主は統制機関(カレンデュラ)第七部隊長、シャルティ・デポンだ。

 彼は今、湖の中心部に()()()()()

 正確には炎の翼を背に纏うことで、水面の上に浮いている。

 その姿は宛ら、不死鳥を想起させる姿だ。

 一方で彼の足元、湖の水面には統制機関(カレンデュラ)第三部隊長アクアテイルが海月のように漂っている。

 彼女は完全に力を使い果たしており、自身では起き上がれない状態に陥っていた。


「勝手な単独行動っ、第三段階魔術の行使による環境破壊!挙句にはこんな状態(ボロボロ)になって、一体どういうつもりだ!」


「いや~、悪い悪い。ちゃちゃっと済ませて、サッと帰るつもりだったんだがよー」


「言い訳は聞きたくないっ、オレは何度も忠告した筈だぞ!それなのにキミは!」


「ああ、罰は甘んじて受け入れるぜ。独房(ヘデラー)の最下層に叩き込まれても、別に文句は言わねぇよ」


「…全て覚悟の上、か」


「応よ。だから冥土の土産に聞いてくれよ、オレ様の言い訳をよぉ?」


「…解った。回復がてら、聞いてやるとも」


 シャルティはアクアテイルの身体に触れると、炎属性の回復魔術を発動する。

 宛ら極寒の夜に、煌々と灯る暖炉の如き温もりだ。

 回復()の間にアクアテイルは、これまでの経緯を語る。

 南方支部長である自身に対し、挑戦する存在が居たこと。

 その挑戦者が、北方支部長(マック)を再起不能へと追い込んだ人物であること。

 更に魔眼の所持者で、アスカという名前の女性であると順を追った。

 そして彼女が思った以上に手強かったので、第三魔術の使用に至ったのだと締め括った。


「…流石に、驚いた。北方支部長(マック)暗殺未遂事件の犯人が、立て続けに南方支部(こちら)にも現れたのか…」


「しかも、機関で未登録の魔眼所持者だぜ。一体、今までどうやって隠れてやがったんだろうなぁ?」


「…オレ達も、完璧ではないさ。実際に、海神帝国(アトランティス)なんて存在が野放しになっていた訳だしな」


「うはは、確かに!マックに続きオレ様も襲撃されちまったし、中々に侮れねぇもんだぜ連中は!」


「ああ、襲撃相手(それ)なんだが………実は少し気になる情報が入ってる」


「気になる情報ぉ?何だよそりゃあ?」


「…いや。正直、突拍子過ぎて、とても鵜呑みには出来なかったんだが………何時になく、彼女は真剣だった」


 シャルティが語り出した情報とは、第一部隊長であるレイラが出所となっている。

 彼女は北方支部長(マック)の代行を務めながら、マック暗殺未遂事件の犯人像について、自身の考えを親しい部隊長へと順に伝達していた。

 先ずアクアテイルが襲撃される以前の段階では、第六部隊長(ノエル)第九部隊長(ミストレイ)に浸透。

 そして襲撃されている真っ最中に、第七部隊長(シャルティ)にも回ってきたと言う訳だ。


「で、彼女の結論から言うと………どうやら北方支部長(マック)暗殺未遂事件の犯人は、異世界人らしい」


「…お、おう」


「…そうだな、流石のキミも薄味(そういう)反応になるよな」


「いやだってよ、海神帝国(アトランティス)対策会議の時にヒライリュウが暴露したじゃねぇか。帝王ブラック・ロードは、昔からの(ダチ)だってよ。なら犯人は異世界人って、当然の帰結じゃねぇか」


帰結(それ)なんだが、どうも彼女の中では当然ではなくなったらしい…」


 レイラ曰く、彼女が示す異世界人とは帝王ブラック・ロードではないとの(よし)

 彼女は帝王の性格を分析し、暗殺と言う手段を取る性質(タイプ)ではないと判断。

 故に犯人は別の異世界人であり、海神帝国側に属していない勢力である可能性が高いと提示した。

 その上で帝王ブラック・ロードと同じく、第ゼロ部隊長ヒライリュウの関係者であると付言されている。

 これはフィーリア王国襲撃事件の折、犯人一味と思わしき存在を追跡しようとした際、龍から強引に抱き止められた事案を根拠としている。


『思えばあの時、ヒライリュウは我々から犯人を庇っていたんだ。そして彼ほど気難しい人間が全力で庇う相手など、相応の関係でなければ有り得ないだろう?』



「…つまり、だ。フィーリア王国襲撃事件と、マック暗殺未遂事件の黒幕は」


「…キミを襲った、アスカと言う女性と言うことになる」


「うははっ、もし真実(そう)ならどうなってやがるんだ!ヒライリュウと言い、ブラック・ロードと言い、最近の異世界人ってのははた迷惑な連中ばかりじゃねぇか!」


「…同感だが、どうしてそんなに嬉しそうなんだキミは?」


「だってよ、相手が異世界人って解ったんだぜ?なら、別にあの女とは()()()()()って良かったって事じゃあねぇか?」


「…成程。キミらしい、第一条への解釈ではあるな」


 統制機関が定めるフィーリア王国の国法、その第一条。

 この世界における住人同士は、正当な手続き無く第三段階の魔術を行使してはならない。

 行使する場合は統制機関(カレンデュラ)総帥であるドルガーの認可、或いは統制機関(カレンデュラ)の部隊長から半数の認可が必須となる。

 もしこの国法を破った場合、如何なる立場であろうとも極刑に処される。

 また認可を得ていても、人々や環境に多大な被害を与えた場合は罰を免れない。

 ただし自身の生命が危険に及ぶなど、特殊な状況下での行使は例外を認める場合がある。

 それでもこの法律がある限り、第三段階の魔術師が大きな制限を受ける事実に変わりはない。

 先達てのマック、及び今回のアクアテイルも、明日香と対峙した際は本気であっても全力とは言えなかった。

 しかし相手が異世界人となれば、話は変わってくる。

 この世界の住人同士でないのならば、第一条を守る義務はなく、また守られる道理もない。


「ま、戦時下に勝手な単独行動したのは確かだぜ?だが、未知なる異分子の排除って名目()なら、酌量の余地はあるんじゃねぇの?」


「…ともかく、この事態(こと)は機関全体でも共有するべきだ。キミの処遇については、それからだろう」


「うっし、だったら共有()の前によ~。ちょっと頼みがあるんだがよ~」


「…嫌な予感しかしないが、一応聞こうか」


「じゃあ、抱っこしてくれ。で、そのままオレ様のベッドまで運んで行ってくれ」


「…あのな、何を甘えてるんだ?オレはキミの介護人じゃないし、そもそも既に回復しているだろう?」


「それがよー、割と本気(マジ)なんだ。なん()ーか、回復はしたんだけどよ………身体に穴でも空いてるんじゃねぇかって思えるくらい、力が抜けてく」


「…まさか、それも魔眼の効果か?」


「かも、な。とりあえず、第六部隊長(ノエル)の奴に診て貰わねぇとだろ?魔眼について、何か解るかもしれねぇし?」


「…やれやれ、仕方ない」


 シャルティは魔術でアクアテイルを水面から引き上げると、そのまま胸元まで彼女を抱き寄せる。

 そして炎の翼を羽ばたかせ、この世界でも屈指の超重量(ヘビー)級であるお姫様を救い出した。

 それから南方支部へと戻り、今回の一件を統制機関(カレンデュラ)の上層部へと報告する。

 斯くして二度目となる、部隊長暗殺未遂事件が記録されるに至った。

 同時に事件の犯人が、魔眼所持者であることが明らかとなった。

 更にアクアテイルの証言から、その容姿についても指名手配と言う形で出回る。

 自ずとアスカの存在は、世界中で鳴り響く。

 これは海底より()で、天空に座す海神帝国も例外ではない。


「くっ、くくくくくく!」


 覆面の内で、帝王の唇が歪む。

 彼の手元には、入手したばかりであるアスカの手配書。

 手配書(それ)はアクアテイルの記憶を(もと)にされ、容姿や衣装など高い解像度を誇っている。

 また魔眼の所持についても言及されており、星で表される危険度はMax。

 懸賞金に関してもフィーリア史上、他に類を見ない額だ。


「…主殿、何をそんなに喜んで御座る?」


 帝王の傍らから、腰に80cmほどの刀剣を提げる女性が声を掛けた。

 その容姿は褐色の肌、銀髪の長髪に加え、常に閉じられている両目と尖った両耳が特徴的。

 またベトナムの伝統衣装(アオザイ)を思わせる、スリットの深い、紺色を基調とした花柄の上着を装う。


「大乱の火種が、天まで届かんと、燻り煙る。まるで遠くから、愛しき姫君の慟哭が聞こえて来るかの様…」


「…やはり、難解で御座るな。浅学の身に、主殿の御言葉は」


「あいや、失礼。(ひとえ)に知人の窮地なれば、此れを助力せんと欲する次第」


「なんと、それは急を要するで御座るな」


「然り然り。さりとて大事が為、適任なる人材を事欠く始末…」


「何をお迷いに御座る。どうか、(せつ)に御命令くだされ。必ずや、ご期待に沿うで御座るよ」


「くくく、頼もしき哉。ではナトラル嬢よ、窮地に喘ぐ姫君の元へ御身を遣い(たま)う」


「承知………あ、具体的には何をすれば良いので御座るか?」


「ふむ………手始めに隠れた姫君の居場所を見出し、その上で密かに動向を探り、必要と有れば陰から助力をされたし。無論、報告も逐一お忘れなきよう」


「…な、難儀で御座るな…」


「然らば、別の御仁を…」


「いや気の迷いで御座った!直ちに発つので、御免!」


 ナトラルと呼ばれた女性は一礼すると、文字通り風のように姿を消した。

 そして箱舟から降り立ち、主の言葉に従って指名手配犯(アスカ)を追う。

 一方で帝王は高級感のある社長椅子(プレジデントチェア)へともたれ掛かり、自らの覆面を取り除く。

 彼の覆面は隠蔽魔術の一種で作られており、術者の意思で何時でも解除が可能なのだ。

 また特製の社長椅子(プレジデントチェア)に関しても、魔術で最高の座り心地が約束されている。

 しかし()()()姿()を現した帝王は、決して安息(リフレッシュ)をする訳ではなかった。


(姫君の本格始動、王国側は対応必至。片や帝国にとって、利害一致)


 目前に8×8の盤面を創り出し、白と黒の駒を産み出し、チェスの盤面を立体映像で形成する。

 ただし6種16個の中には決して存在しない形状の、透明(クリア)な駒が中央へ2つ設けられている。

 あえて命名するならば(それ)等は、守護者(ガーディアン)暗殺者(アサシン)

 共に全てのマスに自由な移動が可能と言う、破格の性能を持つ。


(…我が友は未だ沈黙。愛しき姫君を抱き込むは、当方においても極上)


 帝王の指先が守護者(ガーディアン)を白い陣営へ、暗殺者(アサシン)を黒い陣営へと導く。

 その上で守護者はキングの後方、即ち盤外へと転げ落ちる。

 一方の暗殺者はクイーンを蹴落とし、堂々とキングの隣へと立つ。

 途端に立体映像は盤面に対し、黒の陣営の圧倒的有利を告知(アナウンス)した。


(姫君よ、おお姫君よ………気高き心を暗黒へ落とし、清き手を真紅へ染め上げ、練り上げた四肢さえ汚泥に塗れさせながらも………尚、邁進するのであろう?)


 くくく、と帝王は笑う。

 その姿は、或いは誰よりも純粋である。

 ただしその性質は、正しく黒色(ブラック)

 全てを包み、覆い、太陽の光さえも抱き寄せる深淵(アビス)

 そして血で血を洗う大戦争でさえ、気分で巻き起こす混沌(カオス)である。


(共に興じようぞ、姫君。果ての果てまで…)



此処まで読んでいただき感謝<(_ _)>




拙いですが、もし少しでも楽しんでいただけなら幸いです。




良ければ次回以降も拝読して頂ければ幸い。

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