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嵐を呼ぶお姫 第二部 (10) イタチと猟師

パンチョスサイドのお話です。

パンチョスとセバスチャンの水面下での戦いを挟んでみました。

ヴォーティー船長の活躍は次回に回します。

嵐を呼ぶお姫 第二部 (10) イタチと猟師


 デイビーデレの近郊にある廃墟を拠点としているスケアクロウとパンチョスは昨日の残りのスープを温め直して夕食を摂った。

 二日酔いで頭の痛いスケアクロウは薬袋から水薬を取り出して呷った。

「少しは気分が戻ったか? 案山子の」

「なんとか」

 そう言いながらも顔色悪く返事をする。

 もともと顔色が悪いのに加えて二日酔いでゾンビもびっくりの顔色だった。

「使い魔のほうはどうだ?」

「猫からの情報ではこっちの戦力を過大評価して明日の新月に船に移動するみたいですね」

 スケアクロウはこめかみに手を当てて使い魔との意識をリンクさせる。

「奴ら砦を拠点にするつもりですね」

 黒猫から得た作戦会議の様子をパンチョスにそのまま伝えた。

「かかったか」

 パンチョスは表情を変えずに聞き返した。

「セバスチャンの予想、少し多めに言ってる可能性はあるな」

 情報将校が話す内容を鵜呑みにしてはいけない。

 パンチョスは兵站を担当する教団員に兵站を倍、用意するよう伝え、また傭兵の賃金も同じように倍の金額を指定した。

 まずは情報のかく乱をしない事には話にならない。

 どうせセバスチャンは商業ギルドに密偵でも送り込んでいるだろう。

 過去に教団の襲撃が予想されたのも、教団の金の流れを掴まれていたからだ。

 今回、スケアクロウと二人だけで作戦に及んだのはそのためだった。

 兵站の資金を倍にしたのはこの状況で砦に籠る作戦に誘導するためだった。

 一時的に戦力の分散を誘い、少ない兵力でアナ姫と卵を奪取する。

 案の定、セバスチャンとパロの騎士は砦を偵察に行った。

 この火力でなければ砦に巣食う亜人どもを排除できまい。

 小僧は偵察にしか役に立たんだろう。

「案山子の、作戦通り案山子を沢山作っておいてくれ」

 パンチョスはそう言うと肉大盛でスープを掬い、スケアクロウに渡した。

「おお、かたじけないパンチョス殿」

 二日酔いというのに肉は別腹なのか嬉しそうに微笑む。

「肉を食っていれば間違いはない」そういって匙でスープを掬った。

 一日煮込んだだけあって優しい味と滋養だ。

 香草を入れてあるので二日酔いでも喉を通せた。

「案山子の、あの方とやらから預かった魔法陣、何が残っている?」

「どうするのです?」

「食ったら出るぞ、兵は迅速を尊ぶってな、猛帝国の軍師の言葉だ」

 パンチョスは顎に手を当てた。

「まあ、セバスチャンに乗せられてる可能性は否定できんが」

「どういう意味です?」

「東の国では狸と狐の化かし合いってー言うンだが、パロで言う所のイタチと猟師のなんとやらって言う奴だ」

 狸自体、大陸西側には生息していないので二人とも見たことは無い。

 以前交流したミフネという侍が使っていた言葉だ。

「イタチと猟師の知恵比べですね」

 スケアクロウはスープを碗ごと呷るとおかわりを所望した。

「水薬、効いただろ?」

「ええ、おかげさまで」

「ウチの嫁さんの秘伝でな、即効性だ」

 そう笑って答えたが頭の中では戦闘プランを練っていた。

「ま、あのイタチは猟師を食い殺しかねんから居ぬ間に事をすますか」


パンチョスが意外と面倒見が良い部分を書けました。

スケアクロウとの仲がだんだん良くなってきて、ついつい面倒を見てしまうところが

パンチョスの良い所。

短いエピソードですが書いてて楽しかったです。


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― 新着の感想 ―
[良い点] パンチョスがどんどん憎めなくなってくるw 護国の勇士の腹の底はどうなっているのか…。
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