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昨日よりも素敵な今日、今日よりも素敵な明日の予感

お読みになる前に。


ご安心ください、この作品はなろうの規約の範囲内で書かれております。

タグついてないのでガールズラブはありません。悪しからずご了承ください。


というかそもそも恋愛要素がありません。



 朝、小鳥の鳴く声でわたしは目覚めた。


 ちゅん、ちゅん、ちゅん。


 横を見れば、わたしのものではない美しい金の髪がベッドの上に流れている。

 そして朝の光にきらきらと輝いていた。


 まさかこの年になって、いや間違えたこの年で朝チュンを経験しようとは。


 美しい金の髪。

 閉じられた瞼を飾る長いまつ毛。

 その下には皇族の奇跡の青が輝いている。


 恐ろしいほどに整った顔立ちの中の美しい唇が震えて、わたしの名を呼んだ。


「ミィ、ずっ友……」


 皇太子殿下の末娘、ミュルレイシア皇女。齢7才。

 昨日わたしは彼女と親友になった。








 皇太子殿下がわたしに蔑むような視線を向けたそのとき、部屋のドアがノックも無しに音を立てて開かれた。


「お父様! わたくしと同い年のお友達がいるって本当ですか!」


 喜びに満ちたその声の持ち主は、昼間わたしを睨んだ皇女殿下のものだ。

 あれ? なんかもしかして歓迎されてる?

 不思議に思ったわたしの元へ、殿下が何を言う暇もなく皇女が突撃してくる。


 なになに何事!?


「あなたがそうなの? わたくしはミュルレイシア、この国の皇女よ!」


 あ、はい、さっきお会いしましたよね。

 しかしそう言うわけにもいかず、代わりにわたしは自己紹介をした。


「わたくしはミリアムと申します、皇女様」


 ママンと呼んでくださって構いませんよ?


 そう続けようとしたわたしに皇女は抱きつき、はしゃいだ声を上げる。


「まあ! わたくしと名前が似ているわ! ミィと呼んでもいい? 代わりにあなたはわたくしをミューと呼んでも構いませんわ!」


 え、何この状況。

 さっきと全然違うんだけど。


 頭の中が?マークでいっぱいのわたしに、お妃方はころころと笑って教えてくれた。


「皇女は年の近いお友達に憧れていましたものねえ」


「この間読んだご本の影響かしら」


「幼馴染みで親友の女の子と一緒に冒険するお姫様のお話ね? わたくしも子供の頃、何度も読みましたわ」


 うん、状況は大体理解した。

 そうしてわたしの意思とは関係なく、わたしの後宮での肩書きがもう1つ追加されたのだった。







 その後、音楽室で一緒に歌ったり、おままごとをしたりして夕食までを過ごし、夜は一緒に寝るのだという皇女様に絵本を読んで上げたりしながら、結局わたしは後宮入りする羽目になった。


 まあ断る権利はこっちにはないからしょうがないんだけども。


 

 どうやらミュルレイシア様はお兄様大好きっ子というよりは、家族以外の男大嫌いっ子らしい。

 少し前に誘拐されかかった事があり、それ以来家族以外の男がダメになったんだとか。


 外に出るのも怖がるようになり、城の奥までやってこれる同年代の女の子が今のところいないため友達1人いないぼっち状態で、わたしの話を聞いて嬉しくて走ってきたんだとか。


 なんだそれ可愛い。



 大好きビームが全身から出ているような美幼女を前にわたしは完全敗北した。

 こんな可愛い子にずっ友とか言われたら小躍りしたくもなるってもんさ。


 てか誰だ、この子相手に『関わりたくない』とか言ったやつ。頭おかしいんじゃなかろうか。


 確かにずっと付き纏われたらちょっとめんどくさいが、だが可愛いから許す。

 可愛いは正義ってこういう事を言うのね、きっと。


 とりあえずこの子にトラウマを植え付けた犯人は見つけてぶっ殺そう、とわたしは心に誓った。


 YESロリータ、NOタッチ。

 ロリを極めるため自らがロリとなった某賢者様もそうおっしゃっておられた。

 世界はロリに優しくするためにあるのだ、多分。


 起こしに来た侍女に手伝ってもらい朝食前のレッスンに向かう支度をしながら、後宮の中ではもうTSはすまい、とわたしは心に誓う。

 ミューちゃんに変な噂が立つなんてあっちゃいかんからね。


 この子の未来はわたしが守る!!



 しかしあれだな、そうするとわたしはどうやって自由な時間を手に入れればいいんだろう。


 まあ変に悩んでも仕方ない。

 サウザン王国との戦争準備とかあるし、あとミューちゃんのトラウマの復讐もあるし、なんとかなるでしょう。


 勉強時間は可能な限り削る!

 それさえ忘れてなきゃなんとかなる!


 淑女教育?

 社交しなけりゃ必要ないってそんなもの!


 公爵家さえ潰れなければ金の心配はしなくて済むはずなのだ。

 それにどうやら教会も認める聖女であるわたしは、帝国にとってもなんか重要な存在っぽい雰囲気である。少なくとも国外には出したくないはずだ。

 授業の中にお妃教育が含まれているのがその証。


 わたしを雑用係に任命しようとした皇子のお妃なんてお断りだが、クレメンス殿下の後宮は悪くないかもしれない。


 なにしろ彼にはすでに3人のお妃がいる。

 1人は外交担当、1人は国内担当、1人は子供たちの教育担当。

 子供についても男子も女子も揃っている。

 これ以上何かを増やす必要がないこここそ、入り込むべき場所だ。


 なぜなら十分手が足りてるから!!



 当面は勉強よりも城の外でする事が山積みだって分かってもらわなきゃだけど、なんとなくいい感じの未来が見えて来た。


 まだ見ぬ素敵な明日にご機嫌のわたしは、ひとまずユニコーンを呼び出して自由に外出できる足を確保せねばと、うきうきで部屋を出たのだった。











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