男女7才にして
誤字報告、いつもありがとうございます!
特に今回、あり得ないレベルのおアホさんな誤字だったので笑ってしまいました。
本当にありがとうございます!
わたしは今、帝都にやってきている。
それも、貴族街なんてチャチな場所ではない。
日本なら皇城とか帝城とか呼ばれる場所……そうすなわち皇帝の城!!
でも紫禁城やドイツのニュルンブルクとは見た目が違う。
じゃあ何に近いか?
バッキンガム宮殿かな。
とにかく広大で美しい。
もっとシンデレラ城っぽい感じでもいいんだが、そういうのは帝都じゃなくて地方に多い。わたしが見たのは森の中だった。多分、遠くが見れるようにとか、あとスペース的な問題とかもあるんだと思う。
同じ地方でも平地や山の中だと中世の古城っぽい。
でも国境に近いと一気に要塞感が増してくるのが、なんか戦争の多い世界情勢を感じさせてくれる。
つまり、帝都の皇帝が住む城は、時代の最先端をいく住みやすさも豪華さもバツグンの城なのだ。
なぜ今日そんな場所にいるのかと言えば、皇帝陛下にうちの父がお呼ばれしたからなんである。
そのさい、わたしも一緒に連れてくるようにとお誘いがあった。
そう、断れないやつだ。
父はお目付役として兄を連れて行きたがったが、長男は当然これを拒否。
なにしろつい最近、義姉の妊娠が判明したため領地を絶対離れない構えだ。
次男は国内にいない体のため不可。
三男はしばらく前、ほんのちょっとだけだから、とうちで作った水軍を連れて海へ出て行った。
それきり音沙汰がない。
下手に連れ戻すと禁断症状を起こして本気で行方不明になりそうなので、年内は放置しておこうと両親が話しているのを聞いた。
特殊戦闘使用人やユニコーンも一緒なので、大丈夫だろうという事だ。
そのため、わたしはリュートの格好でリュンクスとフォグに挟まれて城の庭園にいる。
まず父が陛下に挨拶してくるため、しばらくここで待っていなさいというわけだ。
ミリアムは行方不明の生死不明扱いなので、遠縁の子供を預かっているという事になっている。
なんていうか、隠し事多すぎだよね、わが公爵家。
薔薇の花咲く庭園で紅茶を飲む事1時間。
なっげえな、おい。いつまで待たせんだ、とふらふら庭園を散策していると、賑やかな話し声が聞こえてきた。
現在7才のわたしより5才くらい年上なんだろうか。
12才から15才くらいの少年たちの集団が向こうからやってきた。
すかさず鑑定!!
やはり皇子たちだった。
全員が13才だったが、宰相の息子とか大臣の息子とか他の公爵家の息子とかヤバいのばっかだ。
厄介ごとに巻き込まれないよう隠れていよう。
わたしはステルスを発動しようとしたが、先に皇子に見つかってしまった。
「君、見ない顔だね」
「恐れ入ります、殿下。アスターク公爵家で学んでおります、リュートと申します。殿下のお庭を拝見させていただいておりました。どうぞご容赦ください」
「いやいいよ、僕の庭ではないからね。この城の客なら誰でも自由に見て回っていい場所だ」
「寛大なお言葉、ありがとうございます」
「しかし君……いくつだい? 随分と小さいようだが」
「7才です、殿下」
「見た目通りか」
「驚いたな」
ここでようやく周囲の少年たちが小さく声を上げた。
思わず、という感じだったが、おそらく側近候補なんだろう。殿下がわたしに声をかけている間、誰も口を挟まなかった。さすがの英才教育と言うべきか。
「そうか。妹と同い年なんだな。どうしたものか……」
その最後のほうの小さな呟きにわたしは嫌なものを感じた。
使えそうな駒を見つけたときの冷ややかな視線を感じる。
良くない、良くないよ。
人をコマ扱いするの良くない。
どんなモブでもアメンボだって、みんな生きているんだ命があるの。
どっかの公爵令嬢が使えるコマが欲しいとか昔叫んでたけど、あれ全部失敗したからね。
見つけたコマは残らず取り上げられた。あれきっとバチが当たったんだと思うの。
だからそういう視線は良くないよー。
「まあいいだろう、公爵にはあとで話そう。君、ちょっとおいで」
イヤです。絶対イヤです。
人には人権があるのです。あなたご存知?
相手にやりたくない事を無理にさせるのはパワハラになる可能性がありましてよ?
助けてくれ、とリュンクスとフォグのほうを見ると、2人は揃って薔薇談義に熱中しているフリをした。
マジ使えねえな、あたしのコマ!!
いやわたしのじゃないけどね!? 知ってたけどね!?
キレ散らかしながらわたしが皇子たちについて行くと、通路の先から走ってくる子供と行きあった。
「お兄様!!」
キラキラした笑顔で皇子に飛びつく女の子。
お兄様って事はあなた皇女ですね。
わたしはいつでもひざまずいて口上を述べる体勢で構える。
と、わたしに気がついて兄皇子の腕の中からこちらを見た彼女が、ものすごい見下した顔でにらんできた。
「あなたなに? なぜお兄様と一緒にいるの」
……なにと言われても。
君の兄の客だって言ってみようかな。
わたしは笑顔で表情を作って固めた。
いやもうさ、なんで初対面の相手にケンカ売っちゃうの?
自分のほうが身分上だって知ってるから?
それとも本能がこいつ敵だって教えてくれてるの?
よく分かんないんだけどさ、1回敵になったらよっぽどの事がない限りずっと敵だよ? 分かってる?
非常に整ったお顔立ちの妹殿下様にお会いできた、そんな記念日的な今日、わたしは『こいつとは関わらないほうがいい』と心に刻んだ。
だって苦労する未来が見えるんだよ、胃薬必須な。
男女7才にして席を同じうせずって言うしさ。
まさかこの子の面倒見させるつもりじゃないよね?
わたしは恐る恐る殿下の顔を下からのぞき込んだ。
心のうちがうかがい知れない笑みを浮かべてらっしゃる。さすが皇族。
わたしは殿下の足にすがりつきたくなった。
お願い殿下!
どこにでもついてくからこの子の世話とか丸投げしないで!
って、そういえばわたし女の子だったわ。
どうしましょ。




