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ここには絶対何かがある

 男の子の格好をしているわたしが、実は公爵家のミリアム・アスタークである事。

 また、世間では死んだと噂されているエルリシアが生きている事。


 それらを知っている人物は、この辺境にはほんのわずかしかいない。


 辺境伯夫妻と、その信頼の厚い執事。

 そして辺境伯の幼馴染で、辺境騎士団の元団長。


 あとおまけで孤児院出身の騎士、レゾ。

 彼は半分うちの間諜みたいなものなのと、義姉様が死んだとなるとうるさそうなので一応教えることになった。


 以上5人である。



 何が言いたいかというとつまり、跡取りのマックスはおろか、長男で騎士団長のカルロスも、その側近で親友の副団長トーマスも、誰もわたしと義姉様が生きている事を知らないという事だ。



 誰が敵で味方か、いずれ裏切る人間なのかはっきり分からないため、そういう事になった。



 が、今なら分かるわけだ。


 そう、わたしのこの神から授かりし眼があれば!!




 ふっふっふ、と内心で笑いながらわたしは昼食後、騎士団のもとへと向かった。


 そらもう鑑定する気満々である。


 敵と分かったならば容赦はしない。

 ヒロインを処せずに溜まりに溜まったわたしのこのストレス、遠慮なくぶつけさせてもらう!!


 と、いうわけで!!



 わたしは視界に騎士団の人間が入ると思いっきり鑑定を発動させた。


 わるい子はいねぇがーーーー!!!









 カルロス・デオ・クストス、38才

 妻2人と子供5人あり。

 近々3人目の妻を迎える予定。

 子供は22才の長女を頭に1番下は15才の男子。

 全員、嫁いだり帝都の学院へ行ったりで辺境にはいない。

 戦闘の才あり。

 権力欲がなく、弟のマックスが生まれた時点で後継の座を譲った。


 

 トーマス・フェイリィ、38才

 妻1人と子供3人あり。

 子供は17才の長男、15才の次男、7才の長女。

 上2人はカルロスの息子と共に帝都の学院にいる。

 脳筋の多い辺境にしてはわりと理性的な人物。

 親友の決めた事に口を出すつもりはないが、現在のマックスの体の弱さでは辺境をまとめられないだろうと考えている。

 



 2人をはじめ他の騎士達も確認してみたが、呪いをかけるような人間はいなさそうだ。


 というか全員、ヒロインの父親のトーマス以外、気持ちいいほどの脳筋で筋肉つければどうにかなるとか、筋肉は裏切らないとか、あと特に何も考えてないとか、そんなんばっかりだった。


 そのトーマスにしても、今は無理でもそのうち筋肉がつけばなんとかなるかも、ぐらいのものだ。

 大丈夫かこいつら。






 鑑定した結果思ったのは、元AIのマックスくんがここ辺境に生まれてきたのにはわけがあったのだろうという事だ。


 辺境伯は若い頃は帝都で学び、他領からも多くの人材を招いている。

 そのため多角的に物事を見て、戦闘以外でも政治に頭脳を使うタイプだ。


 だが騎士達は頭が悪いのではなく、筋肉に頼り過ぎているというか、本能で危険を察知して力技で問題を乗り越えてきているというか……、いるよね、そういう人。

 そこまで気をつけなくても問題の方から避けてってくれてるみたいな。

 危険察知能力が異様に優れてる人たち。



 ここの騎士達は戦闘でそれが磨かれているのか、『筋肉だ、間違いない』みたいな人が多かった。



 でもそれは、彼らが『なんとかなる』と考えているなら、マックスは問題がないという事なのだろう。


 辺境の騎士達は、総じて実力の高い、気持ちのいい人ばかりだった。




 うん、つまり、ここには頭脳労働者が必要だって事だね!







 わたしはマックスくんと城の周りを走って、今は早々に潰れた彼の隣で座って息を整えている。


 無理せず、少しずつ体を鍛えていけ。


 それが長男である騎士団長カルロスの方針なんだとか。

 いい兄ちゃんじゃないか。

 第二夫人第三夫人といて、女にだらしない性格みたいだけど。



 この世界は別に一夫一婦制ではない。



 恋愛なら1対1が良しとされるし、政略的な問題や後継者問題があるわけでもないのに1人以上の妻を持つと、あまり周囲にいい顔はされない。

 実際、カルロスも最初の妻と子供達からは距離を置かれているようだ。

 3人目を迎えるにあたっては、2人目の妻との仲も悪化している。


 不仲になったから次の女を求めるのか、次の女ができるから不仲になるのか。


 だが、自分がそうしたいからそうする、という人間をこの世界の宗教はあまり否定しない。

 もちろん酷いのはダメなんだが、自由で正直であれば割と許す。ここはそんな世界だ。

 

 飽きたら次を探して離婚してポイ、でないだけ誠実なんだろう。

 というかそんな事をしていると社会的な信頼を失っていくので、騎士団長なんてやってられないわけだが。





 まあともかく、騎士団の人間はシロだった。


 こうして体を鍛えていけばいずれ筋肉もついて、マックスは健康を取り戻すのかもしれない。

 騎士団の団員を見る限り、ささやかな呪詛程度は軽く跳ね返す筋肉が間違いなくつきそうだ。


 だが知ってしまった以上、義姉様の弟が苦しんでいるのを放って置くのも忍びない。



 わたしは引き続き調査を進める事にした。




 だって多分これクエストあるって絶対!!

 ゲーマーとしてのわたしの勘が叫ぶのよ! 絶対ここなんかあるって!

 きみは探さずにいられるか!?


 わたしは無理だ!


 意味のないギミックでもストーリーと関係ないアイテムでも確認して集める!!


 分かんないままだと気持ち悪いのよ!!

 ないならないでいいから!

 意味ないなら意味ないで世界の空白が埋まるじゃないの!!


 次のイベントはどこだ!?


 サーチさせて!

 光って教えてえええええ!









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