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面接試験にご招待

 湖水地方の春は色とりどりの花がいたるところに咲き乱れる。


 湖の周囲は言うに及ばず、家々を繋ぐ小道や建物の小窓。

 街の外から山へと続く坂道。


 その全てに様々な花が咲く。


 他の街と比べると、高地は少しだけ春の訪れがゆっくりだが、風が温まる気配をそのぶんしっかりと感じる事ができた。




 アイラはこの春、成人を迎えた。




 この世界の成人は15才だ。

 女の子は早くに結婚して健康で回復力のあるうちに子供を産むことが期待されている。

 男はさっさと家を出て一家を持つ準備を始めろと圧力をかけられる。


 地球の21世紀とは違ってまだまだ人口を増やさにゃいかん時代なのです。

 人口増加による諸問題など贅沢な悩みと言っていい。


 兄は元気な祖父に頑張ってもらい、自分はアイラとさっさと結婚するつもりのようだが、そうは問屋が卸さなかった。



 公爵家よりは下とはいえ、次男兄が継ぐのは古くから続く名門伯爵家。


 そこへぽっとでの孤児の少女が伯爵夫人としてやってきて、はいそうですかというわけにはいかない。

 なにより、貴族以外からの婚姻など認められるはずもない。




 そう、もうお分かりですね。


 必殺、貴族じゃないなら貴族の養女になればいいじゃない作戦!!




 アイラを養女にしてもいいと名乗りを上げたのは、アルエット家の遠縁の夫婦だ。

 現アルエット伯爵の信頼が厚い人物で、領地の村を1つ預かっている。


 ただ、どんな娘なのか一度会ってみて、それから決めたいと言っているそうだ。

 そのため、春になって移動が楽になった頃に先方の村まで訪ねていく事になっている。



 これらの事が冬の間に行き来をする中で決定した。


 冬は雪に閉じ込められているのではなかったか。

 そう疑問に思った人もいるだろう。


 冬も雪もうちのユニコーン達にはあまり関係がなかったのだよ諸君。


 人間と違い、精霊には熱いとか寒いとかよっぽどでもない限りノーダメージなのだ。

 乾いた土地だからといって水系の精霊が生きていけないわけじゃない。

 水中だからって火の精霊が消えてなくなってしまうわけでもない。

 意味不明に理不尽な存在、それが精霊である。


 自然なんてそんなもの。

 しかもユニコーンは住む場所を選ばない。

 雪山だろうが砂漠だろうがジャングルだろうが強く逞しく生きていく。



 あいつらヘタな野生の暴れ馬より危ないからな。

 ユニコーンの生息地には、『これより先ユニコーンの地、立ち入り禁止』という看板がまずあり、無視して進むとどんどん看板の言葉が過激になっていき、最後には『ここより先は自己責任、遺書を書け』とあるのだとか。


 多分やつらは、わたしの知ってる地球のユニコーンとは違う生き物なんだろう。


 

 そんなユニコーンにまたがり、うちの使用人様達はアルエット伯爵の屋敷と兄の隠し別荘を行ったり来たりした。


 結果、アイラ宛に面接試験のお誘いが届いたというわけなのだ。




 面倒なのでお断りしたい。

 それがわたしの正直な本音。

 でもアイラが「行きます」と言えば行かないわけにはいかない。


 部下を1人で敵地に送り込むわけがないじゃないのよー。


 湖水地方のお花畑で遊んでるほうがずっといいのだが、仕方なくわたし達は初夏のこれから最高のシーズンを迎えるという中、馬車を調達してアルエット地方へ向けて出発したのだった。





 しかしずっと気になっていたのだが、わたしが何をしようとしまいと、周りは好きに生きて好きに動いている。

 転生者だからといって、使命があるからといって、わたしが主人公というわけではないのだ。


 兄もアイラも、父や母、他の家族達もみんな、自分の考えで生きている。


 子供は黙ってろとばかりにわたしを除け者にしてイベントがどんどん回収されていくこの感じ。



 ……うん、わたし結構使えねえ。



 なんとかしないと、存在がどんどん空気になってしまう。

 だができる事もやれる事も全て先回りされて片付いていく。


 い、いいのよ!

 トップは自ら動かないものだから!

 けして何も考えてないわけじゃないの!


 だってまだ子供だからね!

 まだまだこれから、伸びしろがあるって話なのよきっと!!
















 

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