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冬の楽しみ

 冬遊びといえば、皆さんは何を思い出すだろうか。


 雪合戦?

 雪だるまづくり?

 かまくら?

 雪ソリ?

 アイススケート?


 冬というのは雪に閉じ込められているようで、結構楽しい遊びもたくさんある。


 雪の日の暖炉の前での暖かいシチューやココアというのは本当に楽しいものだ。



 なかでもわたしが一度やってみたかったのは、正式な名前は知らないが積もった新雪の上に体を投げ出し、手と足を大きく雪を掻くように動かして、雪原に体で絵を書く遊びだ。


 上下に動かした手はまるで翼のようになり、左右に動かした足はスカートのようになる。


 そう、まるで天使のような形が雪の上に浮かび上がるのだ。



 はじめてこれをやって見せたとき、アイラ達にたいそう驚かれた。


「今考えられたのですか?」


 違います。

 ロマンス小説で知りました。


 ロマンス小説は時々、登場人物の行動や考え方が理解しがたく、どころかあり得なさすぎて不快感を覚える事もあるが、日々の小さな出来事や心の動きを細かく書いてくれるためあれはあれで楽しいのだ。



 その出来事に何を感じて、どうしてそういう行動をして、その行動の裏には隠されたどんな感情が、自分でも理解できていなかった感情があるのか、それらをこれでもかというほど書いて書いて書きまくっている辺りは、読んでいて「へえ、なるほど。そういう心の動きをするんだ」とか「あーー、分かる分かる、でも向き合いたくないよね、そういう感情」などと、それはそれは不思議なカタルシスを感じる。



 特に性犯罪被害者がその後に感じる感情やトラウマ、乗り越えられない人との触れ合いや拒絶感、そしてそれらを解放していく過程を描いた作品ときたら。


 読んでるだけで苦しくて苦しくて、泣きながら身悶えながらそれでも読んだ人間をわたしは知っている。


 解決はしないが、向き合うべきものに気がついたようではあった。


 なんかよく分からんが前に進めたようなら良かった、と感じた出来事だった。



 

 まあ、その種の犯罪が起きなければいいだけの問題なので、傷を癒すとか傷ついた自己を認めるとか、それ以前の話なんだとは思うのだが。




 閑話休題(まあそれはそれとして)



 わたし達は冬の湖水地方を満喫していた。

 もうこのままここに住んでもいいんじゃないかな、っていうくらい周りの人もいい人達ばっかりだったし、勉強はしなくていいし、暖炉はあったかいし、ご飯は美味しい。


 わたしは相変わらずミリアムじゃなくてリュートとして戦闘訓練を受けながら、毎日楽しく過ごしていたのだ。








 年が改まる少し前、この世界には聖霊祭というイベントがある。

 地球でいえばクリスマスだ。


 だからと言って、別に宗教色の強いイベントでもないし、神の子がどうとかいうものではない。

 冬の寒い中、楽しいお祭りを増やしましょうという聖霊様の言葉で始まったという、なんかちょっとアレな感じのするイベントだ。


 この世界、どういうわけか地球の言葉が時折混じっていたり、そこはかとなく我が故郷の地球を思い出させるものがあったりするので、なぜか影響受けてるのでは、という気がする。


 地球のクリスマスを彷彿とさせるこの聖霊祭にも、聖霊様からのプレゼントとか、聖霊祭の料理とか似た部分がいろいろあった。

 ヤドリギの下でのキスも、形を変えてだが似たようなものがある。


 ヤドリギではなく冬に咲く花で編んだリースを飾り、その下でキスをしたカップルには聖霊の祝福があるというものだ。

 なので、結婚の近いカップルはこのリースの下でお披露目をしてキスをするという風習があった。



 そう、いたんだよ、キスしたカップルが。

 うちの次男兄とアイラが……!!(涙)


 兄てめえ、うちのアイラ幸せにしてくれるんだろうなあ!!!


 腹はたったが、予想はついていた事だし、何よりアイラが恥ずかしそうにしながらも幸せそうにしていたのでわたしは何も言わなかった。






 ……言わなかった。


 言わなかったけどなあ!!


 アイラは確かにびっくりするくらいの美少女だけどなあ!!!

 だけどまだ成人してないからなあ!? 

 このクソ兄貴!!!!!


 他に盗られる前に囲い込むとか、正しいけど、正しいけどさあ!!


 あああああっっ!!

 なんだろうこのムカムカ!!


 ばっかやろおおおおおおおっ!!!










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