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どこもかしこも戦争準備

 教会の女子部屋まで押入ってきたこの人物。

 誰あろうこのレストゥス地方治める伯爵の後見人、その息子である。


 権力者からちょっと遠いな、と思う人もいるだろう。


 だが伯爵が未成年で力を持たないとしたら、実質的な権力を握っているのはその後見人。

 つまり、この地方における最高権力者の息子という事になる。



 最高権力者の息子がそんな欲に流されるボンクラでいいのか。

 それもまさにその通り。


 欲に流されていい理由があったのだよ、ワトソンくん。



 神眼によると、彼らの目的は帝国の弱体化。


 自分が伯爵になれなかった事を恨んだ後見人、伯爵の叔父にあたる人物は、我が心の敵国であるサウザン王国と密かに内通し、レストゥス及びハイドライドを弱体化させる計画を遂行中だったというわけなのです。



 いやもうサウザン、無茶苦茶だな。

 何から何まであの国が関わってるんじゃないかという気がしてしょうがない。


 だがそんな彼らも今回、教会に手を出してしまった事で虎の尾を踏む結果になってしまいました。


 天使が武闘派ならその信徒ももちろん武闘派。

 その教えを広めるために日夜懸命に頑張っている教会は、当然上から下まで隙間なく武闘派なのです。


 教会にこっそり偽信者を送り込んだつもりだったのだろうが、この騒ぎでしっかり企みがばれてしまいました。

 さあ一体どうなる事でしょう!



 まあ言わなくても分かるよね。


 サウザン王国まで繋がる完璧な証拠はないものの、こちらの心象は間違いなくクロ。

 教会では今、サウザン王国の息がかかった人間を炙り出している最中なのであります。




 そんな中、わたし達は無事領都レシャまで辿り着く事ができた。


 ここまであまり関わりを持たずにやってきた冒険者達だが、その堅実な働きぶりを兄に評価されて、馬車を守りつつレシャから次の領であるアルミラへ向けて宿には泊まらず最短ルートを辿ってもらう事になった。


 アルミラへ入ったらそこでお仕事は終了。

 冬になる前に急いでホームに戻ってもらう。


 わたし達はその後、盗賊に襲われて行方不明という筋書きだ。


 実際にはユニコーン達の数にものを言わせて、兄の隠し財産であるレストゥス北部の湖水地方に最速で移動するのだが。

 高原にあり、雪深く森に囲まれたその街は、天然の要塞のようなのだとか。


 別荘地であるため長期で滞在する貴族は珍しくないが、宿に宿泊する観光客はシーズンでもない限りとても目立つ。冬ともなれば悪目立ち間違いなしだ。


 わたし達が隠れて住むにはぴったりだった。




 夜のうちにユニコーンに乗って目的地へと向かいながら、雪に閉ざされる街での暮らしにわたしは心躍らせていた。







 ところで後見人の息子だが、彼はどうやったのか閉じ込められていた牢から抜け出していなくなったらしい。

 屋敷に閉じ込められていた娘さん達のご家族や関係者が怒り狂っていた。

 なんか時々棒読み風の怒号が聞こえるという人がいたりもしたが、きっと怒りでうまく言葉が出てこないんだよ、と誰かに説得されていたとかいなかったとか。


 数日後、裸に剥かれた若い男の死体が通りに転がっていたそうだが、まるで拷問でもされたかのように、顔面どころか全身の損傷が激しくて身元が分からなかったという話。


 サウザン王国も教会騎士団も我が帝国も、どこもかしこも水面下では戦争準備を始めている。

 ほんと最近、物騒でいやあね。







 兄とアイラの話か?

 聞かないでくれ。

 わたしはあの子にはいい縁談を用意して幸せになってもらうはずだったんだ。

 一体何がどうしてこうなったのやら。


 とりあえず、もう完全に手遅れだったという事だけは伝えておこう。



 ……あんまりだっ……!!









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