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クエスト……だと……!?

 わたし達が宿の前で馬車に乗り込み、今まさに出立しようとしていたとき、ロゼリアが伯爵夫人や兄姉とともにやってきた。


 昨夜の食事会がキャンセルになったので、せめて見送りだけでも、とわざわざ早朝から足を運んでくれたようだ。

 気にしなくていいのに、義理堅いなあ。



 ちなみにロゼリアはソルシに残って教会で聖女のお仕事をする事になっている。



 実家のある領都に戻らないのは、ユニコーン達の本隊がいる公爵領に少しでも近くにいるためだ。


 公爵領のユニコーンというのは、若いのでも騎士15、6人分くらいの力がある。

 なんでそんなに強いのかというと、もともと聖女を守るためにゴリゴリの武闘派だったからだ。


 現在はそこに、これから新たに誕生する天使系聖女を確実に守るためという事で、天使達の地獄のような特訓が加えられている。


 今の公爵領はかなりの危険地帯だ。


 だが危険地帯ではあるが、一方で聖女やマジメに生きる民には過ごしやすい場所でもある。


 ないとは思うが念のため、万が一の際には1秒でも早く駆けつけられる場所にいたほうがいいだろうという話に落ち着いたのだ。




「皆様のおかげで、こうして娘も無事過ごせるようになりました。本当にありがとうございます」


 伯爵夫人が目をうるうるさせながら言う。

 その後ろからロゼリアが一歩前へ出てきて、わたしの手を取った。


「リリィちゃん、本当にありがとう。おかげで結婚せずに済みそうよ。本当に本当に嬉しいわ。ありがとう!」


 すっごい切実だな。

 いつか溺愛系ヤンデレイケメンテクニシャンを見つけて紹介してあげようかな。

 そうしたらあなたも幸せ、まだ見ぬ彼も幸せ、わたしも幸せで3度美味しい。


 ふふふ、とにんまり笑ったわたしを見て、ロゼリアちゃんは顔をしかめた。


『なあ、腐女子じゃないよな? リリィ。腐ってないよな? 頼むから変なこと考えないでくれよ』


 顔を近づけてきてそんな釘を刺す。


「やだロゼリア。いつもあなたの幸せを願ってるのに」


『腐ってやがる……』


『早過ぎたんだ』


 小声で返すと、ロゼリアは大輪の花が開くようにぱあっと明るい笑みを見せた。


「また会いましょうね、リリィ。絶対、絶対ね!」


 あれ吹き出すのをこらえてるんだな、とわたしも笑顔で返す。


「絶対ね!」


 そのとき、脳内でピコーーン、と久しぶりの電子音が響いた。


『伯爵令嬢を救え、クエストクリア。条件達成のためクエスト名が変わります。新しいクエスト名はソルシの聖女を救え。クリアギフトが追加されました。新しいギフトは【TS】です』


 マジですか!!!


 ていうかこれクエストだったの!?

 条件達成って何!?

 なんかご褒美あるの!?

 まさかクエスト名変わっただけなんて言わないよね!?


 再びピコーーン、と電子音。


『それは秘密です』


 お前AIじゃないんかい!

 ほんとは中の人いたりしないよな!?













 とまあ、そんなこんながあったりもしたものの、わたし達は無事ソルシを出発した。


 冒険者チームとはギルドでこれから会う予定。


 その前に、とわたしは馬車の中で兄に打ち明けた。


「実はギフトが増えました」


 やべえ、今、生えましたって言いそうになった。


「なんだその体重が増えたぐらいの軽さは」


「体重が増えるのは軽くありません!! 断固抗議します!」


「分かった分かった。先を続けろ」


「新しいギフトをもらいました。TSです」


「意味が分からん。説明しろ」


「つまりですね、男になる事ができます」


「は?」


「変装には最適だと思うのですがいかがでしょうか」


「ちょっと待て。男……男になれるのか? お前が?」


「はい」


 マジメな顔で答えたが、兄は胡散臭そうにこちらを見ている。

 やはりモンスターのテイムのようには上手くいかないか。

 もしかすると兄には『仲間になる』設定がないのかもしれない。


 仕方がないのでわたしは馬車の中でアイラに布を広げてもらって隠してもらい、TSしてみた。


 髪はスキル:キャラクリエイトで髪色を赤毛に変更。

 TSの効果で短くなっている。


 それで普段着用のドレスを着ているわけだが、幸い6歳児には男女の区別があまりない。

 元気な僕っ子ぐらいの印象だろう。


 額を押さえた兄の肩を、気遣わしげにアイラがさする。


「今後はこれで行きたいのですが」


 わたしが言うと、兄は不機嫌な顔で答えた。


「……いいだろう。不思議と女の姿よりそちらのほうがしっくりきて不快感が少ない」


 ひどいな、兄。

 あんたの妹だぞ?


 何か言い返してやろうかと思ったが、こんな幼女わたしも嫌だな、と思ったので黙っておいた。


 男児ならいいのかと言えばそうでもないが、女児よりはましだろう。



 こうして、これから当面の間、わたしは男児として生活する事になったのだった。


 新しい名前、考えなきゃなあ。

 ああめんどくさい。












 

 

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