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主人公、何もしてない疑惑

 翌朝、迎えに来たアイラとフォグたちに頼んでこの街の教会へ行った。

 もちろん、ロゼリアとそのご家族様一同も一緒にだ。


 そこにいた司教に取り次いでもらい、わたしは身分を明かしてロゼリアの聖女認定をしてもらった。

 シン・セイジョの七光りだな。


 なに?

 シン・セイジョはわたし自身だからその使い方は間違っているだと? 間違ってねえよ!

 わたしとシン・セイジョなる人物は別人なのだ! わたしはそんなけったいなシロモノになった覚えはない!!



 ちなみにソルシの司教様は「うちにもようやく聖女が」と涙ぐんでいらっしゃった。

 しかもその聖女、見た目も麗しい上にハイドライド地方を治める伯爵様のとこの末娘だ。

 ご利益間違いなし。

 まあ中身は男だけどな。



 伯爵夫人も殊の外お喜びで、「これで縁談に悩まされる事もなくなった」と涙を流していた。


 だがこれで全てが解決したわけではない。


 なにしろロゼリア誘拐の闇ギルドの依頼はそのままだ。

 なんで分かるかって?

 神眼で確認したからだよ。


 どうしたもんかと悩んではみたものの、あんまり派手な事をして身バレしてはたまらない。


 地球時代のその昔から、身バレはあかんと物の本にも書いてあるのだ。知らんけど。








 ひとまず宿に戻って公爵領の森からユニコーンを何頭か呼び出す事にした。


 担当はもちろんうちの馬車に繋がれて宿の馬屋でボヘーッとしてるユニコーン。

 そのうちの一頭。


 ユニコーンというのは強力な精霊なので、一頭いればわりと過剰戦力気味。

 2、3頭もいりゃなんとかなるだろうという火力頼みの作戦だ。


 その間にわたしはリオとマールに昨日の誘拐犯をどうしたか確認した。


 なんと律儀にも殺さず無力化して兵士の詰所に突き出したという。


 兄は今朝のうちにそいつらがどうなったか調べさせていたが、釈放された様子はなかったらしい。

 つまり、街と闇ギルドの裏取引はない可能性が高い。


 

 ここでわたしは考えた。


 

 闇ギルドを潰すのはめんどくさそうだ。


 だが、依頼が取り消しになれば一件落着なんでないかい?


 早速わたしは牢の中の闇ギルド員に会いに行くことにした。

 兄ちゃんに言ったら怒られるのは間違いないので、スキルの『ステルス』を使って忍び込めば一発である。

 会ってどうするか?

 違う違う、わたしが会うことが重要なんじゃないの。

 彼らと某人物(鉄の処女)を会わせることが重要なの。アンダースターン?


 酷い、だと?

 

 わたしが楽をするためには避けて通れない道というものがあるのだよ!

 障害物になった方がわるいのだ!!



 しかしこれには非常に厳しいタイムアタックが求められる。


 わたしは昔から時間制限のあるゲームが大嫌いだ。

 焦ってミスを連発する羽目になるんだよ。

 なんだよ、2分とか3分とかその意味わかんない短さ!!

 誰もがチャレンジャーってわけじゃないんだからな!



 夜にでも訪問しようかと考えたが、使用人達の監視がさらに厳しくなるのでそれはやめた。

 見つかったら家庭教師付きで公爵家の地下に放り込まれる。


 で、昼間こっそり抜け出そうとして……。



 あっさり見つかった。



 ねえなんで? ステルス仕事してなくない? どゆこと? 

 まさか熟練度とかいうやつ? 

 確かに使ったのは今日が初めてだ。ちくしょう!



 女性使用人のアレイシャに抱き上げられて兄の前に連れて行かれたわたしは、それはもう散々に怒られた。

 そして兄はわたしの頭をギリギリとアイアンクローで締め上げたあと、ソルシの領主が闇ギルドのNo.2と取引したと言った。


 なんでも、ロゼリアの母はこの街の領主の姉なのだとか。

 さらに今回同行している次男は、従兄弟である領主の後継ぎと仲が良く、一緒に冒険者ギルドによく顔を出しているとの事。

 そのためこの街にも冒険者にも顔がきき、そちらの方向から闇ギルドのNo.2と繋ぎがついたのだそうだ。



 闇ギルドには孤児院出身の者も多く、教会に感謝する者や、平民から成り上がり民を大事にするハイドライド伯爵家に親近感を感じる者もいる。


 教会の聖女となった伯爵家の末娘を金で売り飛ばそうとしたとなれば、反発する者も当然いるわけだ。


 トップとその取り巻きの失態となるこの誘拐の請負を利用して、闇ギルドではNo.2による組織の乗っ取りが行われた。

 文句を言う者は当たり前だがいない。

 いても始末されるだけである。


 それまでのトップとその取り巻きが物理的に組織から排除され、この世界からも退場した事で、誘拐依頼は無かった事になった。

 受けた人間がいないのだから仕方がない。


 闇ギルドは解体、領主の元で諜報活動や表に出ない護衛をする合法的暗部組織として再活動する事となった。

 合法的な暗部ってなんぞや。

 スパイは表に出たらあかんのやぞ。まあいっか。


 

 というわけで、ほんの数日の間に問題は大体片付いた。

 神眼で鑑定すると、ロゼリアの誘拐依頼は消えて無くなっている。




 何にもすることのなかったわたしは、お米や醤油を使った和食的な遠い異国の料理を食べながら、もうここに住んでもいいんじゃないかと思い始めていた。











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