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鑑定!

 宿の部屋では、使用人2人が金髪の美少女を連れてわたしを待っていた。

 仕事早いな。


 わたしがリオとマールにふんぞり返って褒美を与えると、2人はむず痒いような照れ臭いような、そんな感じの笑みでそれを受け取った。


 うん、6才幼女から褒美をもらうって、しかもそれがお菓子に果物にお酒って反応に困るよね。


 だがすまんな、そんなもので許してくれ。

 後で兄ちゃんに2人の事は上手く言っといてやるから。


 

 心の中で無理をさせた事を謝り倒しながら、わたしは金髪美少女を改めてじっくり見た。


 緩やかに波打つ黄金の豊かな髪。

 陶器のように白くなめらかな肌。

 新緑を思わせるきらめく緑の瞳。

 白い肌に影をつくる、長いまつげが表情に憂いを乗せる。

 小さく愛らしい唇は冗談かと思うほどのペビーピンク。


 分かるわー。誘拐したくなるわー、これ。


 そのわたしの感動に水を差すように兄の声が響く。


「今度は何の騒ぎだ」


 失礼ね、わたしがいつも騒ぎを起こしているみたいに言わないでくれますぅ?


「市場で誘拐されたのを見かけたので、リオとマールに頼んで助けてもらったのです」


 そうだ、わたしが騒ぎを起こしたわけじゃない。相手が起こしたんだ。

 わたしは悪くない。


「お兄さま、助けてあげてください」


 うるうると兄を見上げる。

 兄は大きなため息をついた。


「それで、名前は何というんだ? 誘拐されたというのは本当か?」


「は、はい。助けていただきありがとうございます。わたしはロゼリアと申します。市場で侍女と護衛とはぐれて攫われたところを、そちらのお2人に助けていただきました。本当にありがとうございます」


「ロゼリア。家名はないのか」


「あ、は、はい……」


「ふん……」


 兄はあごに手を当てて何事か考えている。

 わたしはロゼリアを鑑定してみた。


 名前はロゼリア・ウィルバード。14才。

 名前の横で何か点滅しているが、それよりもわたしは気になる事があった。


 ウィルバード、ウィルバード、どっかで聞いたような……。


 ああ!

 この街を含むハイドライド伯爵家の家名か!

 

「ハイドライド伯爵家には金髪に緑の瞳のそれはそれは美しい娘がいてな。来年の成人とその後の社交界デビューが心待ちにされていると聞くが……」


 ロゼリアちゃん真っ青。

 そんないじめてやるなよ、兄ちゃん。ほんと性格悪いな。


「で、そのロゼリア殿とは別人かな?」


「あ、あの……」


「まあいい。家人が探しているだろう。人をやって送らせよう。宿泊先は覚えているか?」


 兄ちゃんめっちゃ尊大。態度デカい。

 もう公爵家子息隠す気ナッシングだよこれ。

 アイラでさえちゃんと演技できてんのに。


 不安を感じるわたしをよそに話は進んでいく。


 ロゼリアはこの街で1番お高い宿に宿泊していた。

 もうそれだけで伯爵家の人間だって言ってるようなもの。

 おバカさんね、ロゼリア。

 なんかおばちゃん涙出てきちゃったよ。

 おっと間違えた、わたし6才、今幼女。



 兄はフォグとアレイシャをロゼリアにつけて宿に送り届ける事にした。


 アレイシャは女性の使用人だ。

 いくら護衛が必要とはいえ、貴族の娘が男だけと移動するのは外聞が悪すぎる。


 その先触れとして兄はリオとマールを宿に向かわせた。


 2人にいくらかの金を渡して、今日はもう自由にしていいと告げる。

 やるな、兄。

 アスターク家ブラック疑惑はこれで解消だ。

 ギルドの連中をどうしたかは明日にでも聞く事にしよう。






 ホットミルクで両手を温めている、まだ顔色の悪いロゼリアを見ながら、わたしはさっきの鑑定の情報を思い出した。

 名前の横で点滅していた文字。

 それは『神眼』だ。


 スキル『神眼』があまりにも使い勝手が厳しすぎるので、匣の中でわたしは神にひと言苦情を申し上げさせていただいた。

 いや、ひと言ではなかったかもしれない。


 だがまあとにかく神に『これシャレにならん』と伝えたら、神は便利機能を鑑定につけてくれた。

 それが点滅していた文字だ。


 読むべき情報があったとき、その箇所に『神眼』という文字が点滅して教えてくれる。


 すごい進化だが、読むべき情報って誰が判断してるんだ?

 いや、気にすまい。

 便利に使えるならそれでいいのだ。



 というわけで、わたしはもう一度彼女を鑑定した。

 やはり名前の横に『神眼』という文字が点滅している。


 これは彼女のプロフィールを確認しろという事だろう、とわたしはそこだけに神眼を使った。

 もう前に使った時のように気が狂いそうになるのはごめんなんである。



 ロゼリア・ウィルバード。14才。

 ハイドライド伯爵家三女。

 婚約者なし。

 だが多くの縁談が来ている。相手は10才から50以上年上まで様々。

 現在、闇ギルドに誘拐依頼が出ている。



 50以上年上ってクソな臭いしかしねえな。

 案外そいつが依頼出してんじゃねえの?

 いや決めつけは良くない、良くないね。


 それにわたし達は旅の途中。

 素性を隠して世直しの旅とか憧れるけど、そんな事やってる場合じゃない。

 なにより兄もそれを許さないだろう。

 かわいそうだが自力で頑張れ。



 そして最後に【追記】という部分があった。

 なんだそれ。



 【追記】異世界からの転生者。転生前の世界は地球、日本、21世紀初頭。転生前氏名:萩原豪志



 ……。

 …………。


 TSかああああっっっ!!


 

 

 


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