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ただいま、はじめまして、そしておめでとう!

 さてアイラに手伝ってもらって支度を整えたわたしは朝食室へと向かった。


 そこにはすでに父と母、そして兄2人が座っている。


 長男夫婦は寝室で食事だそうで。

 仲のいいこって、とわたしは軽く吐き捨てたい気分になった。


 だがそんな事はおくびにも出さず、席に着くとにこにこと父に言う。


「お父様、わたくしお願いがございますの」


 すると父はあからさまに嫌な顔をした。

 いや父、久しぶりに会った可愛い娘の願いぐらい笑顔で聞いてやれよ。


 と、おっとごめん、よく考えたら久しぶりなのわたしだけだったよ。みんなは昨日ぶりだから『またかよ』って気分だよね! てへっ☆


「教会へ行って、神と天使様にお礼を申し上げたいのです」


「まあ、それはとてもいいことね」


 さすが母。分かってる!


「……今日明日、というわけにはいかんが、善処しよう」


 父が嫌々ながらに口元を拭きつつ答える。


「では私が付き添いましょう、父上」


 兄その2が父に言う。

 うーーん。この場合どっちがいいのかな。

 文人か武人か。

 まあどっちでもいいか、手練れの使用人たちもきっとついてくるだろうし。


「すまんな、頼むぞ」


 なんでそんな悲壮な雰囲気出してるんだ、父。

 教会に行くだけだからね?


「あ、それとお父様、献金もしたいのでお金もお願いいたします」


 あとわたしのお小遣いも。

 きっと言わなくても分かってるだろうけど。


 すると父と兄2人はジト目でわたしをにらみつけてきた。

 ちょっとまって、それ可愛い幼女に向ける視線?


「お前は本当にそういうところが……」


「父上、お気持ちお察しいたします」


「ミリアはもうちょっと人の気持ちとか周囲の目とか、いろいろ考えた方がいいねえ」


 何それ、わたし空気読めてない疑惑?

 空気は読むものじゃなくて吸うものだよ?

 大体5歳の貴族令嬢に何を気づかえってのさ。


「まあ、ミリアはとても賢いのねえ。でも小さな子がお金の事まで口にしなくてもいいのよ?」


 あれ?

 もしかしてわたし余計な事言った?

 まあいっか。

 ごめん、ママ上! これからはもうちょっと気を使うよ!









 さて今ものすごく気になるのはサヴァの事である。

 普段は私の部屋で寝起きしているのだが、今朝起きると部屋の中に姿がなかった。


 朝食を終えたわたしは庭に出たいと言って、外にサヴァを探しに来ている。


 さてどこから探そうかな、と扉を出てアプローチの階段を降りていると。


「ワン!」


 サヴァの声がした。

 サヴァ!

 なんだお前、外に出てたのか!


 声のしたほうに視線をやると、そこにはもう一頭、サヴァの隣にジャーマンシェパードが並んでこちらへ走ってきている。


 マーーーリーーーリーーーン!!!


 わたしも急いで階段を駆け足で降り、二頭に飛びついた。


 ただいま!

 はじめまして!

 そしておめでとう!









 1週間後、わたしは馬車に乗って帝都の貴族街にある教会へと向かっていた。


 オーリオお兄様の他、暇を持て余しているトロィエお兄様、そしてお義姉様も同伴である。

 足元にはサヴァとマリリン。


 満1歳のときに洗礼を受けた教会らしいが、わたしの記憶には全くない。

 初めての場所へのお出かけなので若干ウキウキしている。


 今日はこの後、帰りに孤児院に寄って、サヴァとマリリン、そしていずれはその子供達の面倒を見てくれる使用人を雇う予定。


 やっぱり親が認められる相手じゃないといけないからね、だから人選はサヴァとマリリンに任せるつもりなのだ。

 今日決まらなかったら帝都中、いや帝国中回ってでも納得いく人材を探す所存。


 子供達を預けるからには手は抜けないのです。


 ねーーサヴァ、マリリン。


 わたしはそんな事を思いながらその手入れの行き届いた背中を撫でた。もふもふ。もふもふ。マジもふもふ。



 などとやっているうちに教会へ到着。


 さすが帝都を代表する建築物。

 デカさも優美さも圧倒的。


 迎えに出てくれた司祭さん達に案内されて、わたし達は中へと進む。

 奥では大司教様が祭壇の前で待っていた。


「本日は神と天使に感謝祈りを捧げたいとの事で、実に素晴らしいお心掛けでいらっしゃいますな」


 優しそうな白いヒゲのおじいちゃんは、わたしににっこりと笑いかけながらゆっくりと話しかけた。


「いいえ。わたくしの今があるのは、全て神と天使様のおかげ。感謝の祈りを捧げるのは信徒として当たり前の事かと」


 彼はわたしの言葉に軽く目を見張った。


 ごめんねー、6歳目前の幼女としておかしいとは思うんだけどさ、この言葉遣い。

 ただもうぶっちゃけめんどくさいんだ、子供のフリするの。

 あれだよ、今わたし、幼女の皮をかぶったなんかなの。


「では、どうぞこちらを祭壇に」


 わたしは薔薇の花を一輪、大司教様から受け取った。

 兄2人と義姉も同じように薔薇を受け取っている。



 この薔薇の花を祭壇に捧げて祈るのが今日のフィナーレだ。

 もうほんとそれだけ。

 すごいあっさり。



 たったこれだけにものすごい額のお金が使われている。


 薔薇一輪が一体いくらなんだという話だ。


 まあ人間誰しも霞を食べては生きていけませんからね。こういうもんだと思わないとね。


 まず最初に祭壇に近づくよう示されたのはわたしだ。

 わたしはゆっくり進んで、薔薇の花をそっと祭壇に捧げる。


 と。



 サアアアアアアアーーーー…………



 祭壇に天から光が降り注いだ。

 なんだなんだ!?


「「「おおおおおっ!」」」


 教会の皆様の声が響く。


 まさか、と上を見ると。

 真白い羽が光り輝きながら、まるで雪のようにわたしの上に舞い落ちてくる。



 なんという事でしょう。

 これいつかの日のプレイバック?

 いや3回目だからプレイバックパート2だよ、親戚のお姉ちゃん。



『敬虔なる信者たちよ、ひざまずき、わたしの声を聞きなさい』



 そこには、昨日までほとんど毎日のように見ていたドS天使の顔があった。


「リュゼ様……」



 スキル関係なく降臨しちゃったよこの人!!










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