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それは秘密です

「神! 無事でよかった。よかったねえ!!」


「もう何度もダメだと……。またこうしてキミと会えるとは思わなかったよ……。うう、キミの方こそ、無事でよかった」


 半年後、わたしと神は今、ようやく互いの無事を確かめ合っている。



 いやもう、1ヶ月たって、2ヶ月3ヶ月と過ぎた頃にはさすがに心配になってきたが、その頃わたしは天使のスケジュール管理が完璧過ぎて不健康にもなれず、不満が出るはずもない快適な毎日に身動きが取れなくなっていた。


 まあ腐っても神なので死にはしないだろうとあまり興味も湧かなかったわけだが、正直あまりに健全で真面目な生活すぎて辛かった。




 したたかに酔っ払ってゲラゲラ笑って美味しい(ジャンクな)ものを食べる事もなく。


 だらだら遅くまで起きて次の日は夕方まで寝ている事もなく。


 昼過ぎに起きてマンガ読んで本屋行って、ふらふら街を歩いて酒とツマミを買ってきて1日が終わる事もなく。



 

 朝は6時に起床、ジョキングとラジオ体操で1日を始め。


 戻ったらシャワーと朝食、平日の午前中は本を読み、ランチは外で済ませ。


 ショッピングの後はジムで体を鍛え、買い物して夕方には家に帰る。


 ゲームは1日3時間。土日は禁止。


 アニメは1日1時間。土日は3時間まで。


 ネットは1日1時間。土日は3時間まで。


 マンガは比較的制限されていないが、就寝時間が10時なので平日はほとんど時間がない。


 月に1度は映画や美術館、クラシックのコンサート、旅行のチケットのいずれかを選んで、天使からプレゼントしてもらえる。

 もちろん、デート(強制連行)


 健康的で文化的で健全な、素晴らしい毎日。



 ……マジ気が狂いそうだった(涙)。







「神、なんか痩せた?」


「平気平気、まあでもちょっとね。キミの方こそ顔色悪いよ」


「うん、平気平気。でもあれだね、逆らっちゃいけない相手にスケジュール管理されるって結構クルね」


「良かったよ、彼女に逆らわないでいてくれて」


「ああうん、なんか本能的にね……」


 わたしが思わず涙ぐむと、神が何事か小さくつぶやいた。


「ああそっか、そういやキミ、昔彼女に締め上げられた事あったもんね……」


 小さすぎてよく聞き取れなかった……というか、今耳がなんかおかしかった? 変だな、年かな。


「神、今何か言った? よく聞こえなかったんだけど」


「いや、いい。いいんだ。もう全部過去の事なんだ……」


 そう言って涙をぬぐう神。

 わたしもなんだか聞く気にならなかったのでスルーした。










「そういえば、リュゼからどんなスキルもらったの?」


 びくうっ! と、わたしの肩が条件反射で跳ね上がる。


「リュ、リュゼさんからは何も聞いていないのですか?」


「うん、教えてくれないんだよね」


「では、わたくしからお答えできることは何もありません」


 わたしは神から視線をそらした。


「なんでさ。ほらダブらないようにしなきゃいけないし」


「それはないと思います」


 うん、絶対ない。


「気になるのであれば神ご自身が直接お訊きになればよろしいかと」


「それができないから聞いてるんだけど」


「神がお知りになれない事をわたくしがお教えできる事などありましょうか」


「キミならできるって」


「イヤじゃボケ」


「神に向かってなんて事を!」


「神なら直接部下に聞いてよ。ていうか神とリュゼさんってほんとに上司と部下?」


「仕事中は上司と部下」


「それ以外は?」


「彼氏と彼女」


「恋人同士の話に人を巻き込まないでください」


「巻き込むとかじゃなくてさ」


「ていうか神ってサドかと思ったらマゾだったんだ」


「何言ってんの、そんなわけないじゃん」


「だってリュゼ様あれ絶対サドでしょ」


 性癖の一致は幸せな事だけど、性癖の完全な一致は戦争だって昔誰かが言ってた。


「まあね。だから普段は好きにさせてるし」


「普段は……? あっ……」


 殴られても、お菓子食べられても黙ってるのはそういうことか!!


「夜は僕が好きにする。性格が強い子を思い通りにするのって楽しいよね」


 そういう事か! くっそ、リア充爆発しろ!! つうか死ね!


「てめえには絶対教えねえ!!」


「いやちょっと待ってこれ大事な話だから! ねえ!」


 知るか!!

 つかこれ絡んだら絶対やばいヤツです。リュゼ様は神様です。

 わたしは両手で耳をふさいで神に背を向けた。

 


「ちょっと聞いてって!」


「あーー! あーーー! 聞ーーこーーえーーなーーいーー!!」













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