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オタク皆兄弟

「あれ? アフロやめたの?」


 次の日の夜、現れた神は第一声そう聞いてきた。


「うん、飽きた」


 わたしの答えに神はなんだか微妙な表情をするが、髪型なんて手がかからんのが1番である。

 正直大してこだわりはない。


「まあいいや、昨日は悪かったね、ご飯とか作らせちゃって、これお詫び」


「いやいやそんな気にしなくていいのに、悪いねわざわざ」


 わたしは満面の笑みで神の差し出してきたSUSHIを受け取った。

 なぜアルファベットなのか?


 なんかお高そうなお店の匂いがするからだよ。

 

 わたしはうきうきと日本酒を用意した。


 レベル上げ?

 毎日地味にやってるからなんとかなるなる。

 今回ほとんど外出もせずに久々にゲーム漬けの毎日だったからね!

 ここらでちょっと息抜きしようかと思うのよ!









 


 次の日、わたしは息抜きのため本屋に出かけて衝撃を受けて帰ってきた。


 わたしの愛する作品が、愛してやまないあの作品がアニメ化する!!


 そう、わたしは書物を愛するタイプのオタク。

 なので、アニメはどちらかと言えば副産物扱い。



 すごく好きな作品がアニメ化されたら見るし、時には今まで知らなかった作品と運命の出会いを果たしたり、それまでLikeではあってもLoveではなかった作品の良さを教えられて自分を反省したりという事ももちろんあった。


 だが、そこまで無理して関わっていきたいというほどではない。


 それがわたしにとってのアニメというコンテンツだった。



 だが。



 だが、だ!!



 わたしは知ってしまったのだ!

 わたしの愛する作品が、しかも2作品アニメ化するという事を!!



「か〜〜〜み〜〜〜〜!! 我がか〜〜〜み〜〜〜!!」


 家のドアを開くなりわたしは叫んだ。


 するとやつは迷惑そうな顔をしながら部屋の奥から顔を出した。


「うるさいなあ、もうちょっと静かにしなよ。ご近所さんに迷惑だよ?」


 近所はみんなNPCだよ!

 だが今のわたしにはそんな事で時間を使う余裕はない。

 もっと大事な事があるのだ!


「我が神!! 美しくも輝かしい我が親愛なる神! アニメを、新作のアニメを見る手段をわたしにお教えください!」


 神は『ああ』という表情をしたあとにっこりと微笑んだ。


「我が信者よ。普段ならここでレベルの話をするところです」


「はい! 必要なレベルはいくつでしょうか!」


「いいえ、我が信者よ。日頃から敬虔なおまえをわたしは知っています。ここはひとつ、レベルなどという下世話な話をするのはやめましょう」


 レベルが下世話って!!

 おまえが言うなや!!

 しかもレベルじゃない話とかって余計に不安になるわ!



「我が子よ。見たいアニメがあるのですね?」



「はい、我が親愛なる神。わたしの愛する『佐◯木とピーちゃん』が、そして『おかし◯転生』がアニメ化するのです。この機会に、諦めていた『オ◯バーロード』と『異世界お◯さん』、そしていずれは『ゆるキャン◯』などの続きも視聴できればと思います」


 わたしは神の足元にひざまずき、敬虔な信者に見えるようキリリと表情を引き締めた。


 あ? 本当はどうだか、だと? バレなきゃいいんだよ、そんなもん!!



「神よ、どうかわたしに映像文化というお恵みを!」



 神はわたしの上にかがみ込み、非常に優しく見える笑みでこうのたまった。


「その作品名を隠す気の無さは気になるところです。しかも、並べられた作品タイトルのバラバラな方向性ときたらアニメに何を求めているのかイマイチ見えてきませんが、それすら受け入れるのが神の愛というもの」


「ははっ、神の懐の広さには、わたくし日々感謝感激雨あられでございます!」


「『佐◯木とピーちゃん』はわたしも見たいと思っていました。文鳥を可愛らしく生き生きと描ける事を基準に絵師を選んだのではないかと思えるほどの、あのピーちゃんの愛らしさは筆舌に尽くし難い」


「まさに、まさにでございます、神! しかもピーちゃんの声が『幼◯戦記』のあのお方とくれば、もうこの胸のトキメキが止まらないのでございます!」


 もしやイケる口か!? 神!



 神は重々しく何度もうなずいた。



「その願い、聞き届けましょう。喜びなさい。明日にはこの部屋にゲーム専用ではないテレビが備え付けられ、地球から全ての放送が届きます。アニメを愛する全ての者に幸いと祝福を。レベル? 必要なし!! アニメはみんなのために、みんなはアニメのために! 我々はみなアニメのために力を尽くす義務があるのです!!」


「ハーーレーールーーヤーー!!」


 わたしは滂沱した。


 神はアニメ派であったと判明した、そんな素晴らしい日だった。












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