逢いた〜〜〜い!
神はわたしに『アフロ』のスキルを授けると去っていった。
次のゲームをしながら冷静になったわたしは、そのスキルの無用性に気がついたものの、せっかくだからと使ってみた。
今、わたしの頭はアフロになっている。
なかなかいい。
鏡の中のアフロを見ながらわたしはニマニマと横から見て斜めから見て後ろからも確認した。
うん、アフロ最高。
それでゲームを続けた。
古き良きインベーダーゲーム。ただしガンダムのやつ。
口ずさむ歌はAdo、『ギラギラ』。超ご機嫌。
ノってきたので音楽をかけた。人間椅子、『無情のスキャット』。
なんだろう、気分で選曲してるのに神だの天使だの女神だの仏様だの。
神は確実にわたしの隣にいる。
いるが結構ドSだ。
わたしじゃなかったら泣いて信仰心捨ててるね。
多分、神はそうやって人を試しているのだ。
ああやだやだ。
数日後、神が戻ってきた。
「ただいまーー」
「お帰りーー」
神はわたしを見た途端吹き出した。
「何その髪型。超ウケる」
「おまえ、わたしのマイソウル馬鹿にすんな。この髪型には漢たちの熱い魂が込められてんだよ」
神は腹を抱えてゲラゲラ笑い出した。
マジ分かってねえコイツ。
お前もアフロにしてやろうかああああっ!!
「あーー、おかしい。はい、お土産。ちょっと仕事で沖縄行ってきたから、海ぶどうとニガウリと、泡盛」
そう言った神はテーブルの上にお土産を並べた。
泡盛はなんと3本!
わたしは立ち上がると神のそばまで行って額突く。
そして祈りを捧げた。
「我が親愛なる神よ。どうぞこの僕にあなたの愛をお教えください」
「我が子よ、父と子、家族である我らの間にそのような事は必要ありません。お立ちなさい。そして盃を用意しなさい。泡盛には水割りがいいでしょう。しかしコーラ割りも、炭酸で割ってヒラミレモンを絞るのも悪くありません。形はないのです。全てが正しく、全てが素晴らしい。分かりますね? そう、全てが愛なのです」
「おお、おお、神よ……我が神よ!!」
「さあ、このニガウリは産地直送、採れたてです。わたしはゴーヤーチャンプルーを所望します。足りないツマミは出前を取りましょう。時間が惜しい。酒を飲む時間は有限です! 急ぐのです我が信者よ!」
「イエッサー! 我が神! ですが出前はやめましょう、今日は豚キムチの気分です!!」
「さすがは我が子! 豚キム、豚キム!!」
「イエーーイ!!」
わたしと神はハイタッチした。
誰だ、神がドSなんて言ったヤツ!!
ニガウリは甘く作るなら、薄切りにして水に晒して、しっかり炒めて卵を多めに溶いてツナと合わせる。
だがわたしも神もあの苦味が好きだ。
薄切りにはせずササッと作る。
味付けは塩と胡椒と醤油。それだけで十分。ツナがいい味出してくれるのだ。
2品目は豚キムチ。
豚キムチは家庭によっていろいろだろう。
きのこを追加するとか、このメーカーのキムチでなければ、と決まっているところもあるかもしれない。
わたしはキムチをとりあえず細かく切る。
そして豚肉を炒めたあとにキムチを加える。最後に醤油をちょっとかけるのは日本人のお約束。
もうこんなもんで十分。
凝ったツマミが食いたいなら店に行け!
社畜には店に行く余裕も家で料理する時間もなかったがな!!
アパートで深夜に料理したり風呂入ったりとかは近所迷惑なのです。
社畜を有する社会は環境を整える責任があると思う。
まあその前に社畜のない社会を目指して欲しいもんだ。
炊飯器をセットし、炊き上がるのを待たずにわたし達はビールで乾杯した。
「いや〜〜〜、悪いねいつも」
「いやいや大事な信者のためだからね!」
「それで、何しに行ってたの、沖縄なんて」
「サヴァのお見合い。いい子がいたら紹介してねってお願いしてたら沖縄から話が来てね。それで会ってきた」
「マジ? どうだった?」
「美人でいい子だったよ。サヴァとも気が合うみたいで、きみが戻る頃には奥さんと赤ちゃん達が一緒にいると思う」
「うわーーー、早く帰りたいなーー。やっぱジャーマンシェパード?」
「ジャーマンシェパード」
「うっわ、ジャーマンシェパードの子犬とか超見たい。ちなみに奥さん名前は?」
「マリリン」
「マリリンかあ。名前も可愛いなあ」
わたしは泡盛でコーラを割りながらまだ見ぬマリリンを思った。
ああ、マリリンに逢いた〜〜〜い!!