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新大陸発見!!

「旅に出ようと思う」


 神を前にわたしは真剣に言った。


「へえどこに?」


「新大陸」


 そう、すっかり忘れていたが、一周終えるごとに地球の大陸がひとつ追加される。

 そんな約束をしていたのだ。


 そして今回追加されたのがオーストラリア大陸。


 ブルーマウンテン見たい。


 ジャカランダの花見たい。


 コアラを抱っこしてカンガルーと肩組んでツーショットしてブラックスワンと踊ってフェアリーペンギンにちゅーしたい。


 そしてワイナリーを訪ね歩いてシドニーでグルメ旅をするのだ。


 ああエアーズロックにも行きたいしカジノで金も稼がねば。


 新大陸の旅は長くなりそうだ。


 けして海底探査の(ゲーム)で心が折れたわけではない。

 そこしっかり理解してほしいとこ。


「レベルと交換でツアーパック用意するよ?」


「またレベルかよ!」


 くっそ、もううんざりだ!


「お小遣い貯める?」


「いや、それはムリ。本も買いたいしお酒も飲みたいし買い物もしたい。そもそも小遣い少なすぎ」


「十分だと思うんだけどね〜。まあいいや。リアルでも頑張ってたし、90%OFFセールを行います。お財布にもレベルにも優しいお得なツアーパック。なんと今だけ、14年に一度だけの特別価格!! 行くなら今!」


「うさん臭え!!」


 しかも14年に一度って、1回行ったら次まで無しか!


 いや待て。

 今何か嫌な感じが……。


「それさ、今回に限らずずっと、国内海外含めて旅行のセールが14年に1回切りって事だよね。それに大陸以外の島とかどうなってんの? そこのセールはどうなのさ」

 

 チッ、と神が舌打ちをする。


「おい神! わたしが我慢してんのに神が舌打ちしてどうするよ!」


「舌打ちって結構可愛いよね」


「それはわたしもまあまあ思う、ってそういう話じゃねえよ!!」


「ああもうはいはい、バレたらしょうがないや。確かに6つの大陸が1回ごとに追加されます。一緒に周囲の島も追加されます。ハワイとか台湾とかカリブ海の島々とかね。そして今のところセールの予定はありません」


「おおいっ!!」


「しかし嘆いてはいけません、勇者よ。あなたの日々の努力とレベルが、あなた自身(本体)を強くするのです」


「うわ言い返せねえ、でもわたしの日々の楽しみも強くしてくれよ!」


「しょうがないなあ。じゃあ1000レベル」


「1000?」


「勇者よ、我が祭壇に1000のレベルを捧げなさい。さすれば全ての物価が劇的に安くなり、必要レベルも全て50%OFFとなるでしょう」


「ははっ!」


 わたしは思わず神の前に跪いた。


 だが待て。1000?

 それ本当に可能か?

 なんか騙されてないかわたし?








 

 それからわたしは短時間でクリアできるゲームを作業的にやり続けた。

 現在わたしのレベルは10。


 あと990かーー、遠いなー。


 わたしはちょっとイライラしながら凝った首と肩をぐるぐる回した。


 と、その時。

 わたしの心に神が直接語りかけてきた。

 ああ、これはなんといういたわりと友愛……。


『勇者よ。喜びなさい。ただいま天界は決算期恒例大感謝祭開催中。そのレベル10を捧げれば、念願の24時間ネット接続が開放されます。いつもなら22レベルかかる常時接続が半分以下の10レベル……。この機会を逃してはなりません、勇者よ。さあ、そこのボタンを押すのです。そうすれば、あのWeb小説も憧れのエロサイトも、全てあなたのもの……』


 テーブルの上に現れた大きな赤いボタン。

 わたしはそれに飛びついた。


「チェストオオオオオオオオーーーー!!!」


 世界の全て、わたしの全てはエロのためにィィィィ!!!!



『まいどありーーー』



 チャリーーン、という音が部屋に響く。


「ああっ!! しまったあっっっっ!!」


 注意一秒怪我一生。


 そんな言葉が頭をよぎった瞬間だった。










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