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ここは国の端、辺境領

 わたしは今、辺境伯領へ向かっている馬車の中にいる。


 めっちゃフリフリのドレスを着せられて、これでもかというほど飾り立てられて。


 暑苦しいったらありゃしないのだが、それももうすぐお義姉様の実家である辺境伯のお屋敷に着くからだと思えばどうという事はない。


 両側をがっちり兄2人に固められ、向いには乳母とアイラの目が光っている事も……うん、それはやっぱり嫌かな。

 癒しは足元のサヴァのみだ。




 なんでこんなに自由がないんだと叫びだしたい思いはあるが、お勉強の時間がなくなったのが1番の救い。


 あれさえなきゃ大抵の事は我慢ができる。


 それに何より、辺境伯領には例のターゲット2人がいる。

 ヒロインのフィリアと恩知らずの騎士野郎だ。


 わたしは今回、どっちも片付ける気でここに来ている。


 騎士の方は様子見だが、腕が立つ以上わたしではどうにもならない。

 甘い顔をする余裕はないだろうが、まずは本人を確認してからだ。

 わたしは別に快楽殺人の気があるわけではないのだ。




 だがフィリアは抹殺一択。

 必ず()る。


 わたしの心は熱く燃えていた。


 汗をかいてるのはドレスのせいだがな。

 窓開けてー。早く着いてー。熱中症になっちゃうからほんとー。










「よく来てくれた。オーリオ殿、トロィエ殿、そしてミリアム嬢。辺境の地ゆえ大したもてなしはできないが、どうかゆるりと過ごしてほしい」


「温かいお出迎えとお心配りに感謝いたします」


 2番目の兄・オーリオが代表して挨拶をする。

 わたしとトーリ兄様はその後ろで揃って礼をした。


「ミリィちゃん、疲れたでしょう? お腹は空いていない?」


 辺境伯夫人がにこにこと話しかけてくる。

 お義姉様と同じ皇族の特別な青の瞳。

 

 だが容姿は言われれば似ているかも、というくらいだ。


 お義姉様はむしろ父方のほうに顔立ちがよく似ている。

 絶世の美女として名高い祖母と瓜二つだという噂。


 はちみつ色の髪も抜けるような白い肌も、全部その方譲りなのだそうだ。


「大丈夫です、辺境伯夫人。このたびはお招きくださりありがとうございます。またお会いできて本当に嬉しいですわ」


 わたしは満面の笑みで礼をする。


「帝都と比べると楽しみは少ないかもしれないけど、いいところもたくさんあるのよ。明日はピクニックに行きましょうね!」


「はい!」


 家庭教師のいない生活、プライスレス!

 最高だな!











 さて日付は変わって今日はピクニック。


 森の中にある湖のそばまで来ている。


 隣にはおうちの事情で遊学が中止になったオーリ兄様と、おうちの事情でいきなり無職になったトーリ兄様がいる。

 納得はしていないがなんとか飲み込んでくれた。


 乳母とアイラとうちの護衛と使用人数人の他、辺境伯夫人とそのメイドたち、そして護衛の騎士たちも一緒だ。

 もちろんサヴァも。


 かなりの大人数である。



 ピクニックって普通、もうちょっと小ぢんまりした人数でキャッキャウフフするもんじゃないん?


 この世界の普通が分からないのでまあいいんだが。



 さてそんなうちの使用人たち。もちろん元暗殺者。

 ステータスに出るわけじゃないけど、代わりにスキルを見れば一目瞭然なのだ。

 みんな暗殺スキルにステルススキル、変装スキルとか持ってるからね。


 そんな彼らに辺境までの道中、こそっと近寄ってお話しようとしたが、みんな華麗にスルーした。

 わたし主家の令嬢やぞ?


 どうやらお父様から『出来る限り離れていろ』と指示が出ているらしい。

 あんのクソ親父。

 こっちゃ仕事だっつーのよ!



 わたしは今、切実に手足となる誰かが欲しい。


 なぜなら、辺境伯の騎士たちに話が聞きたいから。

 本日同行している騎士は5人。


 この中に孤児院出身の騎士はいるのか。

 いるとしてどいつなのか。

 他にもお義姉様を狙っている奴はいるのか。

 奴らを焚きつけた諜報員はもう辺境に入り込んでいるのか。


 そらもう尋問してでも訊き出したい事は山ほどある。


「小さなレディ、日差しは暑くありませんか?」


 騎士の1人に話しかけられて、わたしははしゃいだように答えた。


「大丈夫ですわ、ありがとうございます!」


 だけどどいつが誰やらさっぱり分からんのじゃ!


 あああああ!

 誰かわたしの下で諜報活動してくれい!!











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