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聖女はやはり聖女であった

 兄と義姉の結婚式は無事終わった。


 白いウェディングドレスの裾を長く引く、花束を抱いた義姉の姿は神々しいほどに美しく、その身を飾る宝石全てよりも貴く輝いて見えた。


 またその隣にいるうちの兄がデレデレで、ほんと彼女に何かあった日にはおかしくなっても不思議はないと納得できてしまうほどだ。


 ゲームでは、この兄とミリアムを残して家族はみんな亡くなってしまう。


 兄は再婚をはねつけて、立場の弱いミリアムの配偶者を次期公爵にすると決定した。

 彼女を守ろうとしたわけだが、結局ミリアムまで死んでしまい爵位は親戚のところへと流れていってしまうのだ。




 式までに、我が家へは暗殺者の襲撃が1度あった。



 リュンクスは隣の国の組織だったがこちらは国内のもので、もちろんお父様とお兄様で美味しくいただいている。


 そして我が家の元暗殺者の雇い人は、訓練中だったものも含めて30人近くになったらしい。


 らしいというのはわたしに紹介はなかったから。

 子供はおとなしくしてろ、という事か。

 そりゃ確かに子供だけどな!!



 お兄様とお義姉様は、そんな元暗殺者達を3分の2ほど連れて3ヶ月の新婚旅行へと出かけて行った。


 毒と薬に詳しい者、襲撃に特化した者、暗殺に長けた者。

 これで何か起こる方が不思議だという布陣である。

 

 ちなみにリュンクスくんは人質になってた孤児院仲間に好きな子がいたらしく、義姉様に邪な感情を抱く事はないと確認済み。


 そういう小さなことから1つ1つやっていかないとね。

 あんまりにも当たり前なチェック漏れでトラブルとかマジ勘弁ですわ。


 不安要素は全て潰す。

 人間だからうっかりとかはあるにしてもね、やっぱりね。










 お兄様達が新婚旅行に出掛けて数日後。


 辺境から式に参列するためにやって来ていたお義姉様のご両親が帰る事になった。


 一応わたしもお別れの挨拶に顔を出している。


 いつかは辺境にも行かなきゃいけないんだよなー、でも遠すぎるしなー。

 そう、できれば早めにヒロインは片付けておきたい。


 ゲームが始まるまで待つ必要なんかないんである。


 できればリュンクス達のうち誰かを辺境へやってさくっと殺して帰って来て欲しかったのだが、如何(いかん)せん元暗殺者達は全て父に召し上げられてしまっている。


 何をするつもりかなんて、暗殺者は暗殺者として使うに決まっとろうもん。


 だが父は彼らをそういうふうには使いたくないらしい。

 甘いよ。甘すぎるんだよ父ちゃん。

 そんなんだからみんな殺されちゃうのさ。


 だがそこがうちの家族のいいところでもある。


 ゲームの状況よりは公爵家も防御が上がっているはずだと信じて、ヒロインの事はこっちでなんとかするしかない。











 なんて事を考えていたら、義姉の両親から素敵なお誘いがあった。


「ミリィちゃん、良かったら今度うちに遊びに来ない?」


「エルリシアが君の事をよく手紙に書いていてね。小さいのにいつも頑張っていると。息抜きに田舎でゆっくりするのはどうかな?」


 聖女だ!

 お義姉様はまさしく聖女だった!

 この厳しい淑女教育とは名ばかりの虐待の日々からわたしを救う愛の女神!!


「ものすごく行きたいですわ!!」


 飛びつかんばかりにしてわたしが言うと、お義姉様のお母様、アウルム辺境伯夫人レイシア・マリ・クストス、帝国皇帝の娘である彼女はおっとりと笑った。


「まあ、嬉しいわ。じゃあぜひ、都合がついたらいらしてね。うちはいつでも構わないから」


 その隣で、うんうん、とやはり笑顔の辺境伯。

 聖女のご両親はやはり聖家族であった。なんと優しく美しい。


「必ず! 必ず伺わせていただきますわ!」


 嬉しさのあまり、ついぴょんぴょん飛び跳ねてしまうわたし。

 背後からのお母様の突き刺さるような視線がツラい。後でお説教決定。


 だがあの厳しい授業から逃げ出せると思うと嬉しくてたまらんのだよ!



 おっと、ヒロインの事も忘れちゃいないよもちろん。

 神からたまわったわたしのステルス・キルが火を噴く日も遠くないね、こりゃ。


 あ、そういえば辺境にはあいつもいたなあ、お義姉様が好きな身の程を知らないクソ。

 念のためそいつもどうにかしといた方がいいかな。

 まあ今のうちの守りじゃ返り討ちが関の山だけど。


 そう考えるとこれも人助けよね。

 えらいえらい、わたし。










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