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1名様ごあーんなーい!

 帝都の公爵邸に戻ったわたしは、出迎えてくれた執事に両親と兄・義姉の所在を確認した。

 

 母と義姉は居間でお茶をしていて、父は執務中、兄はすぐ戻るが外出中だという。


 わたしは兄が帰ってきたら父の執務室で待ってもらい、連絡を寄越すように指示すると、続いて母と義姉にそちらへ行ってもよいか確認を取るように言った。


「リュンクス、あなたは庭で綿アメの機械の準備をしてちょうだい」


「承知いたしました」


「アイラ、ガリファ、リュンクスを手伝って。サヴァ、リュンクスがイタズラしないように見張っていてね?」


 ワフ! と、サヴァが元気に返事をする。


 マジ余計な事すんなよ、うちのサヴァ舐めてっと死ぬからな?

 わたしはリュンクスににっこり笑いかけて、お母様とお義姉様のいる居間へと向かった。







 居間の前で待っていた執事にどうだったか訊くと『構わない』との事。

 まあ断られるとは思ってなかったけどね、とわたしは扉を執事に開けさせた。


「お母様、お義姉様、ただいま帰りました!」


「まあミリアム、お帰りなさい。市場へ行くと言っていたわね、どうだった?」


「とても楽しかったです! 途中で面白いものを見つけたので持って帰ってきました。お母様とお義姉様にもぜひ見てもらいたくて!」


「まあ何かしら」


「秘密です! お庭に用意しているので、ぜひいらしてください!」


「ほほほ。では行かないわけには参りませんね」


「ご一緒させていただきますわ、お母様」


 2人とも楽しそうにソファから立ち上がった。

 優雅やねー、お貴族様やねー、紅茶飲んでうふふおほほとか、そんな生活いっぺんしてみたいわ。

 今そんなんしてたらわたしもこの家もバッドエンドだけどね。


 終わったらわたし田舎でのんびりスローライフするんだ……。


 ってやべぇ、フラグ立ってないだろうな!!


 なんて焦ったその時、ピコーーーン、と電子音っぽい音が頭の中に響いた。

 そしてやはり機械音声っぽい、でもなんか感情ありそうな声がする。


『フラグは立ちませんでしたが、ギフトが追加されました』


 そしてそれっきり。


 おい! そこは説明するとこちゃうんかい!!








 リュンクスがくるくると棒のまわりにふわふわの綿アメをくっつけて増やしていく。

 ピンクのふわふわが増えていく様子はとても不思議で可愛らしい。


 お母様とお義姉様は機械に近寄って目を丸くして大喜びしていた。


 そしてふわふわをひと口、ぱくりと口に含んで目を輝かせる。


「ん〜〜〜〜〜〜!」


「あら!」


「このお菓子は綿アメといって、サウザン王国でも流行り出したばかりなのだそうです」


「まあお隣で!」


「リュンクスは帝都でこの綿アメを販売しようと考えていたそうなのですが、興味を持ってくれる人はいても、なかなか買ってくれる人がいなかったらしくて」


「こんなに美味しいのに!」


「そこで、我が公爵家でこのリュンクスの後ろ盾となり、お茶会に招いた皆様のお子様方を集めた子供部屋で綿アメを作ってもらうのはどうかと思うのです!」


「まあ、楽しそうね」


「可愛らしいですわね」


 ザ・人を疑わないズのお母様とお義姉様がニコニコと笑う。


 これぞ一石二鳥。


 わたしは暗殺者を囲い込み、そしてお茶会では騒がしいガキどもを黙らせる手段を手に入れる。

 ごく稀にだが、子供同伴のお茶会があるのだ。

 もうその日の騒ぎといったら……。


 当日は子供部屋のみで綿アメを作らせる。

 サイズは小さく、ゆっくり、ゆっくり作らせるのだ。

 そしてヤツらが入った子供部屋の出口は全て護衛達に封鎖させる。


 部屋の外をうろついて迷子になる子供も、鬼ごっこをしてものを壊す子供もいない。まさにパラダイス!!

 ママン達は子供が部屋の中で大人しくしていてハッピー。


 子供部屋の中には誰がいるか、だと?


 そこは気にしてはいけない。

 公爵家には子供相手のためのスタッフも大勢雇われているのだよ。

 彼らはこんなはずじゃなかった、って言うだろうけどね。


 仕方ない!!







 そんなこんなで、綿アメをメイド達も呼んで楽しんでいると、執事が兄が戻ったと知らせてくれた。

 はい、作戦開始!


「リュンクス、リュンクス! あなたは今日からここに住むのよ、だからおうちの中を案内してあげる!」


 え、住むの? という顔をお母様がしたがスルー。

 わたしはリュンクスの腕を掴まえて引っ張った。


「いらっしゃい!」







「ここに飾られている絵や花瓶はね、とてもお高いのよ」


 部屋をひとつひとつ扉を開けて適当に説明しながら、わたしはリュンクスとサヴァを連れ歩く。

 アイラや他のメイドは置いてきた。

 作り笑いを貼り付けたどこか迷惑そうなリュンクスの事は気にしない。


 そして一際立派な扉を開いて、リュンクスを中へと無理矢理入れた。


「お父様、お兄様、ご紹介したい人がいますわ!」


 リュンクスはここで初めて、本気でギョッとしたような表情をする。そらそうだ。


「ほう、誰だね?」


 わたしはリュンクスの背後に回って背中を思い切り押した。


「市場で見つけましたの、暗殺者ですわ!!」











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