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スキル持ちゲットだぜ!!

 わたしは今、帝都民の胃袋と呼ばれる中央市場へ来ている。


 お供はサヴァ、そして護衛とアイラとガリファという元孤児の少年が続く。

 おでかけは禁じられていたのだが、サヴァがいるから大丈夫と家族を説き伏せ、なんとか許可をもぎ取った。


 サヴァは渋る父と兄に対し、騎士3人を相手に余裕で勝利を収めるという素晴らしい能力を披露、おかげで『絶対に危ない真似はしない』と約束をした上で今日のこの日を迎えたのだ。


 さすがサヴァ!


 だが刃を潰してあるとはいえ剣を噛み砕いたときには、思わず「ぺっ、て!ぺってしなさい!」と叫んでしまった。


 サヴァの無事を確認した後は鼻高々だったが。

 その実力は兄が、『ミリアムがバカな真似をしないよう、よおっく見張っていてくれ』と真剣な顔で頼み込んでいたほどなのだ。


 ていうか何気に失礼だな、兄。






 中央市場を最初の調査場所に選んだのは、帝都でも多くの人が集まる場所だからだ。


 次点は職人街。


 貴族街は外している。

 なぜかと言えば、貴族当人やその使用人に手を出したりすれば面倒な事になるからである。


 それに平民の方が言う事を聞かせやすいというか、弱みを握りやすいというか、成功率が高そうだという事もある。

 いやいや引かないで欲しい。

 こっちもなりふり構ってられないのだ。



 店番をする男性、買い物をする女性、どこかへ急ぐ若者、楽しげにきょろきょろする娘……。


 わたしは1人1人鑑定しながら市場を歩く。

 前後を護衛に、右手側に立派な番犬、左手側にはこぎれいな服を着た少年少女を従え、せわしなく周囲を見回すわたしは、きっとどこぞの金持ちのワガママ娘に見えている事だろう。


 金持ちなのは間違いないけどね。


「あ、スリ」


 アイラに手を繋がれながら、わたしは『職業:スリ』と出た男を指差した。


「ちょ、ちょっとお嬢様! そういう事は口にしちゃいけません!」


 慌てたアイラに口をふさがれる。

 うん、証拠もなしに人を犯罪者呼びはよくなかったね。

 

 幸い身内以外には聞こえていなかったようで、誰もわたしの方に視線を向けたりはしなかった。





 商人、主婦、薬屋、錬金術師、医師、メイド……。

 

 すぐに見つかるとは思っていなかったが、本当にごく普通の帝国民しか見当たらない。

 その間、お守り役のアイラと案内役のガリファが、あれは美味しい、これも美味しいとわたしにいろいろ教えてくれるのだが、5歳児の胃袋では教えられるものを全て試してみる事は不可能だ。


 しかしこんな時こそ権力は使いどき。


 わたしは教えられたものは全て購入し、ひと口だけ味見すると残りは周囲の誰かに食べてもらった。

 周囲にはさぞワガママなお嬢様に映っているかと思いきや、なんか微笑ましいものを見る目で見られた。

 なんでや。



 まあそんな事はどうでもいい。


 幼女(わたし)の愛らしいたたずまいの前では全ての者が笑顔になるのもむべなるかな。


 わたしは満足しつつ市場をお供とともに練り歩く。


 そして、幼女はこれを片手に天使の羽を背中につけて歩くべきだと確信するあるものを見つけた。

 ふわふわのピンクの綿アメ……!!


 甘いわベタベタするわ萎んだら微妙だわでイマイチなのに、なぜか食べたくなってしまう謎の一品!


 市場には綿アメが普通に売っているものなのか?

 いやその前に時代考証的にありなのか?


 そういえばナーロッパだから時代考証とか関係ないんだった!


 そのピンクのふわふわに見入ってしまっていたわたしにお店の店員が話しかけてきた。


「やあ、可愛らしいお嬢さん。これは綿アメと言ってね、隣のサウザン王国で大人気のお菓子なんだよ。良かったらひとつどう? 甘くて美味しいよ!」


 顔を上げると、そこには白に近い明るい金の髪の、優しげな美少年がわたしを見下ろしていた。

 そして職業欄にはなんと『暗殺者』! スキルは『暗殺、ステルス、ステルスキル、変装、話術』!

 ナッカーマ!


 わたしは美少年の服をがしっと捕まえた。確保!


「これ! これ持って帰る!」


「え? これって綿アメ?」


「違う、全部!」


「全部?」


 やだこの子意味わかんない、とでも言いたげに美少年がわたしの手から逃れようとする。させないよ!


「お嬢様? 一体……」


「アイラ、この人と機械を持ち帰っておうちでお母様とお義姉様に見てもらうわ!」


「え、いやいやそんな無茶な……」


「無茶じゃない! お前!」


 わたしはぐい、と美少年の襟を掴んで引き寄せる。


「わたくしのうちに来て、その綿アメを作るのよ! いいわね?」


 そして彼にだけ聞こえるようこっそり囁いた。


「暗殺者さん?」


 美少年が笑顔のままわたしを見つめる。微笑みが柔らかく深まったのはさすがと言うべきか。


 彼はわたしの手をそっと離すと、優雅にお辞儀をした。


「もちろんです、お嬢様」


 ゲェーーーーーーーッット!!




 逃がさねぇからなこの野郎!!












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