神はいた
「要求の多いめんどくさい我が信者よ、安心なさい。お前のような者でも神は見守っております」
「ありがとうございます、我が神」
夢の中、我が神の前でひざまずき、頭を垂れてわたしは言った。
ていうか見守るだけとかほんとやめてくれないかな。大事なのは現世利益、何をするかでございますよ我が神。
「それで我が神、本日は何をいただけるのでしょうか」
「ほんとキミ図々しいよね。見守ってるって言ったじゃん今」
「聡明なる我が神はわたしが望む前にわたしに必要なものをお与えくださることと」
「うん、何もあげたくなくなるよね、マジで」
「かーみー! わがかーみー! そんなこと言わずにー!!」
わたしが足元にすがりつくと、神はこれ以上ないほど顔を歪める。
「うわ、気持ち悪い。やめてほんと。手助けなら用意してあるから」
「さすが我が神! ありがとうございます!」
わたしが笑顔になって離れると、うんざりした顔で神は後ろへ向けて手招いた。
「おいで」
「ワン!!」
わん、だと……!?
神の背後から元気よく走ってきたのは、おっきなジャーマンシェパードだ。しかもなんか精悍でお利口さんな顔をしている……!
「人間じゃないけど、神犬だから一生の間ずっとそばにいてくれるよ。人間の言葉も理解しているからちゃんと指示も聞いてくれる」
ドッグ◯ート! ドッグ◯ートだ!! わたしに危険が迫ると守ってくれるのね!
「ありがとうございます神様! この子の名前はなんていうんですか!」
「サヴァ?」
「なんでクエスチョン?」
「間違えた。サヴァだよ」
「了解、サヴァね。サヴァ、サヴァ、こっちおいで。わたしはミリアムだよ。よろしくね」
言いながら、わしゃわしゃと顔を撫でる。するとサヴァは『くぅん?』という感じで首を傾げる。
今わたしの名前呼んだよね? 絶対『ミリアム?』って聞いたよね!?
くっそ、可愛いなこいつ!!
「可愛がってあげてね。そのうちお見合いとかさせて奥さんもそっち行かせるから」
「マジ!? そしたら子供とか生まれんの!?」
「生まれても他の人にあげたりしないでね」
「あげない! あげないよ! 絶対あげない!」
うちが公爵家で良かった。敷地が広いからどんな子沢山でもドンと来いだ。
子供が生まれたら孤児を何人か引き取って世話をしてもらおうそうしよう。ウィンウィンでみんなハッピー、最高。
「あとギフトの事なんだけどね」
「うんうん」
わたしはサヴァをよしよししながら聞く。
「あれギフトの確認とかされちゃうけど分かって話してた?」
「ギフトの確認!?」
申告制じゃないのか!?
「されるに決まってるじゃん。神からの贈り物だよ? 自己申告で放っておいたらそこら中にギフト持ちがあふれかえる」
確かに、それが人間。バレなきゃいいは心に基本装備。
ヤバい。普通はステータスの確認ができないからギフトも確認できないと思ってたよ。
「ほんと君、考えなしに動くよね。ちょっと考えれば分かりそうな事なのにさ」
呆れたようにため息をついて、神は続けた。
「仕方がないんでギフトを用意しました。はいこちら」
わたしの目の前にステータスウィンドウが開く。
そこには新しい項目として『ギフト』が追加されていた。内容は『言語』。
「スキルの言語よりさらにいい感じになってるけど、正直スキルで十分だと思う。機会があれば使ってみてください」
「イエッサー!」
ピシッ!と敬礼すると、神は口をへの字にした。
「ほんと調子いいよね。ま、とりあえず頑張って。さすがに復活は無理だから、死なないようにしてね」
「りょーかーい」
サヴァの背中を撫でてやりながら笑顔を向けると、神も笑顔になる。
「じゃ、僕はそろそろ行くから。なんかあったらまた呼んで」
そう言って神は帰って行った。
なんだかんだで神はわたしに甘いよね。そこが素晴らしいんだけども!!
翌朝。わたしのベッドのそばで伏せているサヴァを見て、起こしにきたメイドさんが悲鳴を上げたのはお約束。