人材は育てるものです。要するにすぐには使えない
というわけでアイラが我が家にやってきた。
他に成人が近い子供を数人、一緒に連れてきている。
そのうち2人の女の子はメイド長に預けた。
スカラリーメイドになるかもしれず、ランドリーメイドになるかもしれず。
頑張ればいい待遇を受けるはずなので、辛いだろうが腐らずに働いてほしい。
うちのメイドさん達はみんないい人なので平気だろう、多分。
アイラはわたしの部屋で小間使い……と言いたいところだが、まだ5歳の幼女に小間使いなど必要がない。
そもそもわたしにはすでに乳母がいて、メイドもたくさんいるのでそれほど仕事もないはずだ。なにしろわたし、できる5歳児。手がかからない。
おそらく乳母が気に入ればナーサリーメイドぐらいにはしてもらえるだろう。
ようするにわたしの遊び相手だ。
おままごとの相手をしたり、お散歩について行ったり、そういう事を期待されるものと思う。
やらんけどな。
中身が中身なのでおままごとなんぞせんとです。
お散歩する暇があればダンジョンに潜りたい、それが本音。
できんけどな。
この本体は現状それなりにスペックが高い。
なぜならステータスの数値が高いから。あとだいぶゴミ混じりだけどスキルも多いから。
《邪眼:石化》ってなんやねん。いつ使うんじゃボケ。
あの神はわたしをどこへ連れて行こうとしているのかよく分からない。
そのうち人類に魔物として狩られそうな気がしてしょうがない。
〜 悪役令嬢、パーティ会場で魔物として狩られる。『魔物となど結婚できるか! 婚約破棄だ!』 〜
新しいかと思ったが普通だな、なんかこれ。
悪役令嬢がラスボスかその手前のカマセだった感じだ。
……まあそれはさておき、この体は結構動けるのでちょっとそこまでお出かけして戦闘に馴らしておきたい。
レベルは上がらなくてもステータスは地味に上がるのだ。
そして成人までに頑張った結果はスキルとして現れる。
お分かりだろうか。
神のおふざけしか期待できないわたしにはここで身につくスキルはものすごく重要なんである。
そのための布石として、10歳から12歳の男の子を3人、見習いとして連れてきていた。
もちろん格付けは済ませてある。
孤児院の裏庭でこっそりボコボコにして躾けておいた。
女の子相手ならこんな事しなくて済むのに。ほんと野蛮ね、男の子って。は〜〜あ、めんどくさ。
そしてさらにめんどくさいのが、この3人を育てなければいけないという事だ。
とりあえず兵舎に放り込んで、普段は基礎体力作りをさせている。
隙を見て都の外でピクニックでもする予定だ。
その時のための腕の立つ護衛を探さなければならない。
今の護衛はわたしではなく父と兄の命令で動くため、帝都の外へ出たいと言っても笑ってスルーで聞き入れてもらえないのだ。
次はそのための護衛探しである。
街へ出て鑑定を使いまくって弱みの1つも握れそうないい人材を探さねばならない。
問題は、どうやってお外へ出るか。
孤児院への付き添いは、基本馬車でドア・トゥ・ドア。
ドア出たら馬車乗って、カーテン引いた車内でお義姉様とお喋りして、到着したら孤児院のドアの前。
観光サービスタクシーか、という感じだ。
どこにある孤児院か、どのくらいかかるかなんてわたし達には関係ない。
家出て馬車が止まったらそこが孤児院。
道を覚える必要はなし。
そんな状況でご町内の素敵な誰かを見つけるのは無理なんである。
お茶会?
5歳児参加のお茶会なんてほぼないよ。あってもやっぱりドア・トゥ・ドア。
コピー人形が欲しい。
なぜわたしのスキルにはコピー人形がないのだ。
いややはりダメだ、あれはきっと大人の事情に引っかかる。
なんとか作戦を練らねばならない。
いやもうほんと、やる事たくさんあるのに、まずは人材探しでずっと引っかかってるってどういう事よ。
こういう時こそ、なんか神託の1つでもくれんもんかね、うちの神様は。
遠慮なんかしなくてもいいのよ、こういう事は。
盛大にプレゼントを送ってくださっていいのですよ、我が神。
などと。
言い続けていたらきっとそのうちなんかくれんじゃないかとわたしは思う。
じーんざーい、じんざいがー、足りんのですよーー、神様ーーー。




