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アイラ

誤字報告をいただき、ありがとうございました!

めちゃくちゃ嬉しかったです!


 わたしはその夜、ゲームのシナリオを何度も思い返し、アイラという少女がどこで登場したのか思い出そうと努めた。


 だがどんなに唸ろうが頭を捻ろうが一向に思い出せない。

 きっと、ワンシーンしか登場しないタイプのモブだったに違いない。


 そのうち思い出すだろうと放置して、わたしは今日会った子供たちのステータスの中で気にかかるものを思い浮かべた。


 子供のうちはほとんどの場合、ステータスにそれほどの差はない。

 しかし成長するにつれて少しずつ、レベルとは違う形でステータスは上がっていく。


 それは普段何をして過ごすかによって違ってくるのだ。


 例えば体を動かすのが好きな子なら肉体の数値が上がっていくし、本を読むのが好きな子なら知力の数値が上がっていく。

 それによりレベルアップ時の伸びも違ってくるのだから、小さな数字とはいえバカにはできない。



 年少の子供たちはまだまだこれから、といった様子の数字だったが、成人が近い子供たちには特色が現れている。


 ちなみに件のアイラは器用さの伸びが良かった。

 きっといい奥さんになるに違いない。


 ともかく、わたしが見た限りでは特別数値の高い子供はいなかった。


 次の孤児院に期待しよう。

 最初から何もかもそう上手くいくはずもない。







 夜が明けて、わたしと義姉は昨日の孤児院にやってきていた。


「ミリィちゃんはしっかりしていて、それにとても優しいのね」


 微笑む義姉に、わたしは微笑み返す。


「そんな事ありませんわ、お義姉様がいなければ、わたくし孤児院になど行こうとも思いませんでしたもの」


「いいえ。昨日の小さい子達との付き合い方を見ていれば分かります。ミリィちゃんは小さい子や女の子達を守っていたでしょう? それに今日は孤児を雇いたいだなんて。本当にすごいわ」


 義姉の目は多分ふし穴に違いない。


 2年後に殺害される際の実行犯、実は彼女の知り合いなのだ。

 孤児達を訪問する中で子供の頃から顔見知りだった人物。

 両親を亡くして孤児院に引き取られていた彼は、美しく優しいエルリシアに恋に落ちた。

 非常に優秀だった彼は、いつかエルリシアを妻にしたいと思い努力を重ねる。

 そして騎士に取り立てられるのだ。


 だが、辺境伯の娘である彼女が、一騎士に与えられるはずもなく、エルリシアはアスターク公爵の嫡男の妻となってしまう。


 男はエルリシアを諦められず、力ずくで奪う事にし、その計画を利用されてエルリシア共々殺される。


 これが、2年後の『事故』の真実だ。

 そしてわたしは巻き添えで奴隷落ち。


 聖女と噂される美女が間近にいたら血迷うのも無理はない。

 だからわたしは孤児院では男どもを義姉に近づけなかった。


 色恋で身を滅ぼすのは勝手だが、周りに迷惑かけんなっつー話だ。


 ちなみにゲームでは、馬車を襲撃して事故を起こさせた面子は徹底的に調べられ、孤児院も巻き添えで潰れている。

 公爵家に嫁に行った領主の娘をお腹の子ごと殺した人間が育った孤児院に、寄付をしたい人間も援助したい貴族もいない。

 しかもエルリシアお義姉様、こうしてミリアムになって初めて知ったけど、母親が王族なんである。


 辺境伯に一目惚れして後妻に入った現皇帝の末娘。


 つまり皇帝の孫。


 そりゃ孤児院も潰れるさ、という尊い身分のお方だった。

 そのせいだろうか、周囲から大切に育てられて人の善良さを信じて疑わないところがある。

 良くも悪くも、それがエルリシアという女性だった。







 と。


 ここまで考えてわたしは思い出した。


 孤児院を厭う空気は帝国中に広がった。

 特に帝都では酷かった。

 孤児達を養えなくなっていく院と、そこを自ら去る孤児達。

 中には仕事があると騙されて奴隷や娼婦に落とされる孤児もいた。


『どうして、ミリィ。あなただけ助かるなんて、あなただけ幸せになるなんて許せない』


 バッドエンドの1つで、ミリアムが亡霊達に責められるシーンがあった。

 その中に、成長したアイラの姿があったのだ。


 おさげではなく、着ているものも孤児達が着るようなシンプルだがこざっぱりとしたものではなかったため、すぐには結び付かなかった。


 アイラ。


 奴隷となった先でミリアムに親切だった少女。


 ミリアムが助けられる前に死んでしまった少女。


 たくさんの女性と子供達に責められながら、ミリアムは悲鳴を上げて泣き叫ぶ。

 そうだ、確かにミリアムは彼女の名を呼んだ。


『アイラ、許して』


 と。





 クソが。


 




 わたしはあの匣の中に戻ったら、必ずゲームを確認しようと再度誓った。


 だがまずは奴隷商を潰してぶっ殺さないとだな。


 なんだよ、やる事たくさんあり過ぎてこまっちゃうじゃないか。


 










前話を予約投稿するさい、時間の設定を忘れて投稿してしまいました。

大変失礼致しました。


もしかしたら、『すでに投稿されてる!』と驚いた方もいるかもしれません。

作者も朝6時半過ぎ、『あれ!? すでに投稿されてる!?』と驚きました(汗)。


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