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使える駒

 わたしはまず使える駒を手に入れる事にした。


 なにしろ自分自身が使えないからね!

 せめて使える部下がいないとね!

 

 酸いも甘いも噛み分けた年齢の使える手駒が欲しいわけさ!


 ブラックな環境になんかしないから、誰かわたしをタスケテHelp!





 まあそんなもん普通に考えて手に入るわけがない。

 小説やマンガの主人公だと奴隷を買ったり孤児院で青田買いとかするもんだけど、わたしには現状それは無理。


 なので、なんもかんもではないけどある程度家族にぶっちゃける事にした。


「夢を見たのです、お兄様」


「どんな夢だい?」


「神様の夢ですわ」


「そうか。それはすごいね」


 信じてないだろ、てめえ。


 キレそうなのを抑えつつ、わたしは話を続ける。


「神様がおっしゃるには、公爵家を乗っ取ろうとする人たちがいて、その人たちがお義姉様とお兄様達を殺そうとしているのですって。もちろん、お父様とお母様も。わたくしと大お兄様だけ生き残って、でも結局2人とも死んでしまうの」


「怖い夢を見たんだね。でも大丈夫だよ、そんな事は起きたりしないからね」


 そばへ来てわたしの頭を優しく撫でる兄様。


 いやそんなんいらんから。

 いいか、わたしの言ってることマジメに聞かんと、お前の愛する嫁さん2年後にバッドエンドだからな?


「ですがお兄様、わたくし神様からギフトをもらったのです」


「ギフト! それはどんなギフトだい?」


 かかった!

 とわたしはほくそ笑んだ。


 この世界では稀に神が幼いうちからギフトを与える事がある。


 スキルをギフトと言い張れば上手くいくだろう。勝利はもう目の前だ!!


「言語、ですわ」


「言語?」


「『ええ。わたくし外国の言葉が話せますの』」


 隣のグラスリアの言葉で話してみせて、続いて数カ国の言葉で話し続ける。

 信じて欲しい、嘘ではない、これは神のギフトなのだ、と。


 公爵家の後継ぎである長兄は、自国語以外に5カ国語が流暢に操れる。

 ぽかんと口を開いてわたしを見ていたが、わたしがさらに違う国の言葉「『まだダメですか?』」ときくと正気に返った。


「い、いや、疑うわけではないが……」


「『では信じていただけますのね、良かった。このギフトをもらったのは実は、数年以内にわたくしとお義姉様が事故にあい、お義姉様は死亡、わたくしは他国で奴隷にされてしまうからなのだそうです。よその国で言葉に苦労せず、頑張って帰って来られるように、と……』」


「まて」


「はい」


 兄の空気が変わった。


「今、エルリシアが死ぬと言ったか? そしてお前が奴隷となると?」


「はい、言いました」


「いくら夢でも、いや、夢ではないのだな。だからこそのギフト」


「はい」


「……分かった。安心しろ、ミリアム。お前とエルリシアにけして害が及ばぬよう対処しよう」


 公爵家の嫡男、アルフリッド・アスターク、通称アル兄様は整った顔をきりりと引き締めてそう告げた。


 だが兄よ、5歳児がこれだけペラペラ喋ってんだからもっと不審に思ってくれてもいいんだよ?

 面倒がなくて助かったけど。


 5歳児っぽい喋り?

 んなもんとっくに忘れたわ。大体それ遠い過去の話だからね?

 ついでに公爵令嬢っぽい喋り方も忘れた。


 人間必要ない事ってすぐ忘れる生き物なんだよね〜。


 ま、でもこれで兄ちゃんも危機感を覚えた事でしょう。

 わたしの思う通りには動かないが、頑張ってわたしと家族を守ってくれる手駒その1、兄。

 部下じゃないからね、言う事なんか絶対聞かないよね、だがそこがいい!


 うそ、ほんとは良くない。

 だが贅沢は言えんのです。戦時下なのです、わたししか知らんけど。


 兄よ、せいぜい張り切ってくれたまえ!!




 さあ次は誰を捕まえようかな!!












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