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ポイント

「勇者よ。次の目標、ネット回線新規開通には100のレベルが必要です」


 右手のひらを前に向け、左手の親指と人差し指で丸を作ると、美しい姿勢で立った神は厳かに告げる。その背後からはキラキラと後光が差し……。


「たっけえなおい!!」


 思わず叫んだわたしにやつはケラケラ笑っていた。


 ちまちまやってたらどうにもならんと限界を感じたわたしは、このとき気がついてしまった。


 クリアに要する時間の短いものを選べばいいのだと。


 速度こそ命である。


 そうすると昔のゲームなら短いだろうとファ◯コン時代のものをやってみたり、昔やってあまり時間をかけずに終わった記憶のあるお姫様を育てるゲームをやったり、ノベルゲームをやったり、合間合間に「もーーう無理だ!!」と叫んで逃亡してみたりと、気がついたら1ヶ月がたっていた。


 そう、賢明なる紳士淑女の皆様ならお気づきだろう。


 いよいよ今日は新刊の入荷日なのです!!!










 悲報その2。


 完結巻はまだなかった。



 







 あまりの悲しみに膝をつきそうになる。


 涙をこらえ、わたしは自分を慰めるため本を大量に購入した。

 この世界はわたしがいるから存在してるんである。間違っても一時の悲しみに流されて橋から身を投げたりしてはいけない。

 だからこれは必要経費。仕方ない仕方ない。ハハハハーーン♪



 


 


 見た目も美しいケーキをいくつも買って、デリカテッセンのお店で生ハムのサラダやバラの花のようなローストビーフ、ガーリックシュリンプなどを選んで、ワインとチーズをどうしようか、荷物重いな、と悩んでいるとスマホにRUINが入った。


『お酒とお菓子はこっちで用意するよー』


 さすが我が神、気が効くぅ。


『ワインとチーズとポテトもお願いします』


 スタンプと一緒に送信すると、可愛いにゃんこのスタンプが『オッケー』と返ってきた。

 にゃんこは正義!

 そして我が神も正義!!







「ただいまー」


 家のドアを開けると、神が花を生けた花瓶を抱いていた。


「お帰りー」


「何それきれい、どしたの」


「目的の本がなくて落ち込んでたからね。ちょっとは気分良くなるかな、と思ってさ。それに最近追い詰められてたからねーー」


 誰のせいじゃボケ、と思いながらもわたしは笑顔で手を洗う。


「あははー、ご心配おかけしましたー。なんなら必要ポイント下げるとか報酬レベルアップ加算とかしてくれてもいいんだよー?」


「あははー、楽して手に入るご褒美ってつまんないじゃん?」


 うふふー、とわたしは神に水をかける。


 あははー、と神は目に見えないバリアでそれを防ぐ。


 ちっ、今日はこのくらいにしといてやるぜ。








 神のグラスにワインを注がせていただきながら、わたしは真摯な態度で申し上げた。


「ところでお小遣いが足りないのですが」


「使い過ぎです」


 真剣に訴えたわたしに、神は真顔で返す。


「わたしは幸せに生きたいのです」


「物に頼るばかりが幸せではありません」


「レベルはお小遣いにかわりますか」


「もちろんかわります」


「……」


「……」


「まるでパのつく遊戯台のようで健全ではない気がするのですが、神ともあろうお方がそれでいいのですか」


「この世界はレベル変換でできているのです」


 嘘つけ!!


 神の真面目な顔をじっとりと睨みつけてやると、やつはにっこりと笑って親指と人差し指で丸を作った。


「お布施は常に受け付けておりますよ? 我が信者」


 世知辛(せちがれ)ぇ……。












 

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