表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/127

挿話 SIDE:神(名前はまだない)

 少し昔の話をしよう。


 僕には親友がいた。


 調子のいいいい加減な男で、けれど不思議と誰からも好かれる男だった。

 よく一緒に飲んだり集まって騒いだりしたものだが、ある日、とある事情から袋叩きにあって下界へと追放された。


 普通なら夢の匣行きで、100年ほど人間の生を味わって反省すれば「よし」とされるものだが彼への怒りは相当なものだったらしい。

 神の力を取り上げられ、呪いをかけられて人の輪廻に放り込まれた。


 だからあれほど注意しろと言ったのに……。


 

 相手の行動も問題だが、それを引き起こした原因は彼自身のものである。


 ちなみに呪いの内容は「必ず女に生まれて、必ずハーレム男と関わりになる」だったそうだ。


 別に彼がハーレムを作ったわけではないし、女神たちに誰彼構わず手を出したわけではない。

 割り切って付き合える相手としかそういう関係にはならなかったはずだ。

 けれどそれも相手を苛立たせる要因だったのだろう。


 その頃、僕は人のまだいない世界で小さいもの達の面倒を見ていて、全てが手遅れになってから話を聞かされた。

 追放された先の下界を探してはみたものの、それは砂漠に埋もれた一粒の砂金を探すようなもので、しかも輪廻のどの段階にいるのかすら分からなかった。


 僕はすぐに探すのをやめた。


 なんとなく、そのうち見つかるような気がしたし、何より彼は案外楽しく生きているような気がしたからだ。






 あれから随分たって、僕はそれなりに地位が上がった。

 ある1つの世界の最高神を任される事になったのだが、これが本当に面倒くさい。

 僕に逆らうヤツもいれば、裏でこっそり邪魔をしてくるヤツもいる。

 ヘラヘラして使えないヤツもいれば、有能なのに最初のボタンを掛け違えたせいで大人しく従ってくれないヤツもいる。


 ある派閥のヤツらについてはマジどうしてくれようと考えていて、後片付けに使える魂を探していたら、ちょうどよく件の親友の魂を見つける事ができた。


 やはり問題なくハッピーにやっていたようで、放置する選択をした自分は天才なんじゃなかろうかとちょっと思う。


 神としての仕事から解放されて満足気なその魂を、僕は今回のトラブルを処理するのに使用する事にした。


 けして腹がたったからではない。


 社畜をやっている時ですらどこか楽しそうだったが、劣悪な環境の中、頑張った挙句に成果まで出してしまう社畜は存在しないほうがいいだろうと思ったからだ。


 ブラック企業で働く人間が1人もいなくなり、ブラック企業が利益を出せないようになればいいと思うんだ。

 そう言ってあの世界の神に相談したら無事、彼の魂をゲットできた。


 人間の欲深さにはあの世界の神も呆れているようだが、何しろルールの基本は人間(じぶん)の事は人間(じぶん)で。

 呆れながらも温かく見守っているらしい。たまにキレそうになるらしいが。



 魂を回収してミリアム・アスタークの体に入れたあとちょくちょく様子を見に行ったけれど、女性の体になっても中身はあんまり変わっていない感じなのが懐かしい。


 思わず、一緒に朝まで酒を飲んで昔のようにバカ騒ぎをしてしまった。

 覗いてみた前の世界での学生時代が楽しそうだったから、つい。

 付き合いで翌日の二日酔いまで一緒に味わってみた。




 このミリアム・アスタークの人生が終われば、また彼は天界に戻ってくる。

 そうしたら大量に積み上げられた仕事を前に苦しむ姿を見ながら大笑いしてやるつもりだ。


 だが今は、久しぶりに会えた親友とケンカしたりゲラゲラ笑ったりしながら過ごしていたい。



 まあ二日酔いはもう一度だけで十分だけど。














評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ