表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いや、わたしは初回ですけどもね  作者: 昼咲月見草


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/127

スキルゲット

『オノレ勇者ヨ……ダガワスレルナ、我ヲ倒シテモ、イツカマタ第二、第三の魔王ガ……』


 定番の台詞で魔王が滅びていく。

 これでレベルアップでいいのかな?


 そう思った瞬間、背後からパァーーーン!!と破裂音が響いた。


「うわああっ!?」


 思いっきりビビった声を上げて振り返ると、クラッカーの紐を引いて満面の笑顔でヤツがいた。


「レベルアップおめでとーーー!」


「ってアホかあああっ!!」






 レベルアップは短いファンファーレくらいがちょうど良い。

 それを実感した瞬間だった。


「せっかくお祝いしようと思っていろいろ準備してきたのにーー」


「のにーー、じゃないわよ!! 大体なんで昼間来ないで今頃来んの!!」


「えーー、だってレベルアップしたからさーー」


「それはそうだけども! そうじゃなくて、なんで昼間あんなに祈りを捧げたのに無視すんのよ!!」


「それは本当に申し訳ない。僕にもどうしようもない事情があったんだ」


「なによ、事情って」


「二日酔い。あれキツイね、マジで」


「神! あんた神だから!! 二日酔いぐらいちょちょいっと治せないの!?」


「いやだって君がものすごく苦しんでるからさ、ここはひとつ君の神として一緒に苦しみを分かち合おうかと」


「いらんわそんなもん!!」


「えーー」


 なんでそんなわたしが酷いこと言ったみたいな顔すんの!?

 一緒に苦しむんじゃなくて救ってもらうほうが誰でも嬉しいもんでしょ!?


「なんで人間が神に祈ると思ってんのよ! 『共感も涙もいらんから救ってくれ』が本音に決まってんでしょ!?」


「仕方ないなあ、次からはそうするね」


「次ってあんた……!」


 まだいろいろ言ってやろうとしたわたしの目の前に、次々とそれは出された。



 一升瓶を2つまとめて縛った日本酒。うまいヤツ。

 生ビールのサーバーに輸入ワイン。うまいヤツ。

 九州の幻と言われる生産数の少ない焼酎。うまいヤツ。

 スコッチウィスキーの瓶。もちろんうまいヤツ。

 ピザとポテトとホールのケーキ。うまそうなヤツ。


 じゅるり……。


 わたしは神の手を取った。


「次はよろしくね」


 おっと間違えた明日はよろしくね、か。

 頼りになる神、マジ最高。








「それでそれで新刊なんだけどね、リストとかあるかな。明日早めに本屋開けたりとかしてくれる?」


 ピザの箱を開けながらそわそわと確認する。

 すると我が神は呆れたようにこうのたまった。



「いやそんなすぐには入んないからね」



「どうして!?」


 なんでそんなあたしを絶望させちゃうの!?


「どうしてって、なんだって準備が必要だよね? ちまちまやるんじゃなくて1ヶ月後に一気に更新かけるからさ、大人しく待っててよ。大体君が1番しなきゃいけないのってレベル上げだからね?」


 冷たく言い放つ神にわたしはそれでも食い下がった。


「でも楽しく働けって言ったじゃん!! 生きる糧が必要なのよわたしにも!」


 なんかそれに近いようなことだったけども!


「ピザとワイン以外にもこれだけ揃っててまだ言うか」


「だってもうすぐ完結巻が出る人気作とかいろいろあるじゃん!! もう絶対出てるやつあるし!!」


 そう、わたしが死んでしまう前、完結を迎えてコミックが発売されるのを楽しみにしてた作品があれこれあるのだ。かるたなやつとかゴールデンなやつとか。次巻の発売を年単位で待ってるやつとかもある。頼むよ神様!!







 結局1ヶ月の期限は1日も負からなかった。

 神様の言う通り、ってやつである。


「ほらほら、レベルアップでステータスも上がったし、おまけでスキルもつけてあげるからさ」


「スキルってなんでもいいの?」


「なんでもってわけにはいかないから、クリアしたゲームの中から僕が選ぶ事になるかな」


 わたしはついジト目になって神を睨んでしまった。

 絶対ろくな事にならない気がする。


「ほらそんな目でみない。楽しいやつ選んであげるから」


 笑顔でそんな事を言われるとさらに疑いの気持ちが増してきた。


「……何を貰えるの」


「相手からMPを奪えるドレインスキル。お役立ちだよね!」


 おお! MPが足りない時にも、相手に魔法やスキルを使わせたくない時にも使える便利な……。

 待て。あのゲームのドレインスキルは確か。


「ジャジャーーン! 『ふしぎなセクシーダンス』!」


「アホかあああっっっ!!」












評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ