いよいよ次回は皆様お待ちかねの
翌、早朝。
フィリアは荷物とともに公爵邸から叩き出された。
来た時と同じ、トランクひとつを手に男性使用人2人に挟まれ門の外へと連れ出される。
助けてもらえると思ったのだろう、弱々しげに涙を浮かべて従っているが、残念! うちの人間は全員、君レベルの魅了は効かんのだよ。
6周もあったんだからさ、ちゃんとレベル上げしとくべきだったよね。
今朝はいつもよりも霧が深い。
目の前で閉まった門の向こうにあるはずの屋敷どころか、使用人達の姿もあっという間に霧の中に消えて行く。
昨夜も攻略対象者達から救いの手を差し伸べてもらえず、不利を悟ったのだろう。
フィリアはその日、大人しく辺境へと帰って行った。
と。
もしやここで断罪が以上とか、ざまぁ終了とか思っているかたはいないだろうか。
否ッ!
断じて否ッ!!
あれっぱかしがざまぁだと思ったか!?
いいや違う!!
俺たちのざまぁはここからだッ!
わたしはキリにフィリアの後をつけさせ、彼女が辺境にたどり着くのを待った。
1ヶ月後、ようやく実家に戻った彼女は、家族から散々責められる。
なにしろ彼女は辺境伯家の顔を潰し、皇太子妃に内定した人物とのつながりを潰した。
これで怒られなかったらどうかしてる。
縁故採用の怖いとこよね、こういうとこ。
だがこの世界では縁故が基本なので、本当なら滅多な真似はできないはずなんである。
ゲームじゃないかもって疑問に思うチャンスはいくらでもあったはずなのにね。
そしてフィリアはさすがヒロイン。
家族に責められようが周囲から白い目で見られようが全く気にしなかった。
むしろそれでさらに復讐心が増した感じ。
でもね、これからだから。
君、人を憎んだり復讐したりしてる場合じゃないから。
数日後、夜、わたしはリュゼ様と一緒にフィリアの家の前にいた。
フィリアの部屋の明かりはまだついている。
わたしは魔法で小石を浮かし、フィリアの部屋に何度かぶつけた。
するとフィリアが苛立ちもあらわに窓から顔を出す。
わたしはそれに愛想良く笑いながら手を振った。
数分後、怒り狂ったフィリアが家の外に出てきた。
わたしを見つけて「あんた!」と声を上げる。
わたしはそれに、人差し指を唇に当てて、『シ──ッ』と嫌味にやってみせる。
フィリアの背後、家の中から母親が声をかけてきて、フィリアは焦ったように黙る。
自分の立場が悪いことくらいは理解できているようだ。
わたしが背中を見せて走り出すと、フィリアもついてくる。
暗い方へ、人のいないほうへ、そしてわたしは路地裏の行き止まりにたどり着いた。
「ハッ、あんたバカね。こんなとこまで来て。何の用なの!」
勝ち誇ったようにフィリアが近づいてくる。
レベルが高いと自惚れているのだろう。しかしそれは間違いだと。
わたしは赤子の手をひねるように簡単にフィリアを殺すことができる。
もちろん、そんなことはしないけれど。
わたしの前にリュゼ様が舞い降りてきた。
さすがにフィリアも驚いたようだ。
「天使?」
『ええ、フィリア・フェイリィ。わたしはこの世界の最高神の補佐をする天使リュゼ。はじめまして」
「なに、なんで天使とか……どういうこと」
『今日はあなたを迎えにきたのですよ、フィリア・フェイリィ。外に出てきてくれて良かった』
そう言ってリュゼ様はフィリアに手を伸ばす。
その手に光が集まって、フィリアは苦しそうに膝をついた。
「な、なんで」
『さあ、この世にお別れを言いなさい、フィリア・フェイリィ』
フィリアの声にならない魂の悲鳴が響く。
『ああああああ、いやああああああ───っっ!!』
フィリアの魂は肉体から無理やり引き摺り出され、リュゼ様の手の上で丸い光の珠になった。
それはとても美しい。
「それがフィリアですか?」
『ええ。不思議ですか? こんな悪人でも魂が美しいことが』
「ええ、いえ……なんとなく、納得できる気がします」
『そうですか。いい子ですね、ミリアム。では行きましょうか』
路地裏にフィリアの空っぽの肉体を残したまま、わたし達はその場を後にした。
そのうち警邏中の兵士が彼女の死体を見つけ、家族に連絡するだろう。
家族はしばらく泣いて悲しんで、そしてまた日常に戻っていく。
そうでなければ前へ進めないから。
悪魔が仕掛けた趣味の悪いゲームはこうして一応の幕を閉じた。
だがフィリアへのミリアムの復讐はまだ終わっていない。
フィリア、あなたがどのくらい持ってくれるのか。わたしはそれがとても楽しみで仕方がない。
またもややってしまいました。
予約投稿間違い。
今日は珍しく早めに仕上がったぜ!と思ったら予約ではなく即時投稿してしまいました……。
朝7時に待ってる方、大変申し訳ございません……。
お詫びに、というわけではないのですが、頑張ってもう一話書きました。
1日朝にも投稿があります。




