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当面スルーで

 次の日の朝、立ち会うはずだった皇太子殿下が多忙との事で尋問の予定が流れ。


 さらに次の日は陛下が急用のため翌日に持ち越されたと言われ。


 そしてまた陛下と殿下、お2人ともに早朝から外出されたと聞かされ。


 ついには天気が悪いから今日はやめようと伝言がきた辺りで、そろそろなんとかせにゃいかんとわたしは午後、殿下の執務室にお邪魔した。







「明日こそ尋問を始めていただきたいのですが」


「気が乗らん」


「ですがグラスリアもサウザンも戦争を起こすつもりで手を出してきています。情報を引き出し、手を打たねば足をすくわれるやもしれません」


 すると殿下は書類から顔を上げ、ちらりとわたしを見た。


「お前、中身はいくつだ」


「やめてください、女性に年を訊くとかマナー違反です」


 わたしは先日、殿下とお妃様方に前世の話を一部カミングアウトした。

 酒が飲みたかったのだ。


 はっきり言って我慢も限界だった。


 なので恥をしのんで土下座までした。


 なのにこのクソ……!

 失礼、人の心が分からない殿下は「不許可」とたったひと言でわたしの懇願を退けた。

 まさに邪智暴虐。

 


 わたしはマンガもアニメも小説も、美味しい料理もゲームも旅行もショッピングも、何もかも諦めて今ここにいる。

 なら酒ぐらい認めてくれたっていいじゃないか。


 中身は成人しているのでお酒を飲ませてください、と頭を下げて懇切丁寧にお願いしたというのに、とんでもないヤツである。



 この世界では、飲酒可能年齢に関する法律がない。

 だが、購入可能な年齢の制限はあり、さらに家の外での未成年の飲酒は禁止されている。家庭内で飲む時でさえ、アルコール度数の強いものはダメだし、酩酊しない程度の少量である事が厳守だ。


 つまりは必要なのは親の許可。この場合は保護監督責任者の許可だな。

 

 だから精一杯の誠意を込めてお願いしてみたのだが……。

 ほんのちょっぴりすら許可が降りなかった。

 思うのだが、この世界の大人という生き物はどうしてこんなにも子供に厳しいのだろう。


 あれか、もしやわたしが信用されていないという事なのか。



 神よ、わたしに必要なスキルは肉体年齢を自由に操るスキルであったようだ。

 悲しみに暮れつつわたしは神に祈った。

 そしてもちろん神からの返信もなかった。クソ!


 ああ、成人する日が待ち遠しい。



「いいから答えろ。成人しているというのは本当か? 15才以上なんだろうな?」


「それは間違いありませんよ」


 アラサーに7足して14✖️……って計算しちゃいか──ん!

 するなよ、するなよ、計算するなよ、ってフリじゃねえからなっ!!



 すると殿下はため息をつきつつ話し出した。


「……聖獣様の話ではあいつがミュルレイシアの顔を舐めたうえに体を触ったらしくてな」


 なんですと?


「聖獣様にしてみればそのぐらいは親愛の表現のようだが、人間はそうはいかん」


「そうですね」


 エルとか子供の頃わたしの顔舐めまくりだったし、わたしもエルの体散々撫でまくったもんね。

 エルに限らず、だけど。


 だけどそうか、性教育とかまだ始まる全然前のはずだから、もうダメだ、って思っちゃうよね、それは。

 そっか、殿下わたしにそういう知識があるか心配だったのか。確かに下手に訊いたらセクハラものだ。



「ミュルレイシアはそれで、自分が汚れてしまった、もうどこにも嫁げない、と苦しんでいたそうだ」


「なるほど。とてもよく分かりました。お忙しい皆様は当面、地下へ行くのは無理そうですね」


「分かってくれたか」


「拷問官にはわたしからも、しばらく尋問できないので持てなしをしっかりするようにと伝えておきます」


「頼む」


 こうしてわたしはしばらくの間、暇な時間を手に入れた。


 邪智暴虐は取り消してやってもいいかもしれん。









 というわけで、現在わたしはミューちゃんの部屋でエルの聖獣ボディをクリエイトしている。


 リュゼ様が、神犬のままの見た目では印象的に良くないと、聖獣としての体を作って普段はそれで生活するようにと言ってきたのだ。


 確かに、どんなに可愛くとも子犬の見た目、もしくは本来のほぼ成犬の見た目では普通のワンちゃんと区別がつかないオロカモノもいるかもしれない。

 成人して魔力持ちとなり、訓練で自在に能力を使えるようになれば自ずと『視る』力がつき、聖獣の存在を見ずとも感じられるようになるものらしいが、誰でも、とはいかないのが悲しいところだ。


 そこで、エル自身だけでなくミューちゃんも侮られないよう、神々しい立派な聖獣ボディが必要となった。



 そんなわけで今、わたしは空中にスクリーンを映して、ミューちゃんとエルと3人で素晴らしいナイスなボディを作成している。


 ミューちゃんは、エルは今のままで充分だというがそうもいかない。


 わたしが真っ白モフモフ大型フェンリルボディを表示すると、エルは目を輝かせて尻尾を振った。

 気に入っていただけたようで何よりだ。


「エルはいいっぽいね。ミューちゃんはこれで大丈夫?」


「エルが気に入ったのであれば、わたくしは問題ありません」


 ええ子や。

 

 こうして我が帝国の守護聖獣は凛々しい真っ白モフモフと決まった。


 実際変化させてみて、あまりの大きさにミューちゃんが気を失いかけたのは秘密だ。

 しかも強面。


 だがこのくらいのほうが睨みもきいていいだろう。


 どっからでも来いグラスリア。

 我が国の守りは万全だぞ!! 主に聖獣でな!











聖獣ボディクリエイトシステムの使用は、リュゼ様からの1回限りのチケットプレゼントです。

ガチャではありません。

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