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やっておしまいなさい!

 ウィクトル皇子殿下はそれはもう怒っていらっしゃった。


 わたしはこれまでミュルレイシア皇女がブラコンなのだと思っていたのだが、ウィクトル殿下が重度のシスコンだったため、皇女も兄妹の距離がベタベタなのが普通だと思っていたようだ。


 それはもう微に入り細を穿ちという言葉がピッタリといえるほど詳細に説明を求められた。



「ではもう1度、認識に間違いがないか確認しておきたいのだがーー」


 皇子は優雅に、人払いしたため何杯目か分からないほどわたしに注がせた紅茶を飲んで言う。


 何度目かの確認をされる気配を感じたわたしは、慌てて彼の興味がありそうな事を話題にした。


「そ、そういえば殿下、わたくしそろそろ地下へ行かなければならないのです!」


「地下?」


「はい。昨日捕らえた皇女誘拐事件の犯人の話を聞かなければなりませんので」


「ふむ、それは非常に重要だな」


 皇子は重々しくうなずいた。

 よし、食いついた!


「ではわたしも同行しよう。話す内容も気になるが、犯人をどのように扱っているのかこの目で確認しなければ」


 皇子は紅茶のカップを置いて立ち上がる。


 うんうん、そう言うと思ったよ。


 わたしはこの苦行から解放された事に内心、涙を流して喜びながら皇子とともに地下へ向かった。










 昨日、ミューちゃんがエルのプロポーズを受けたあと、謁見の間はそりゃあもう大変な事になった。


「ミューちゃんはまだ嫁にやらん!!」


 と叫ぶ皇帝陛下。


「お父様と結婚すると言っていたではないか!」


 と叫ぶ皇太子殿下。


 我関せずを貫く我が父。


 割とカオスな感じだった。

 ひとつ良かったのは、この場にわたし達以外、騎士も護衛も誰もいなかったことだろう。




 それがなんとか治まった頃、父がショタ獣人型をとったエルに訊いたのがこれだ。


「皇女を襲った人物の事で、何か覚えている事はないかね」


「覚えてる、というかマークしてるよ。時々ここに入り込もうとしてたから、邪魔してた」


「何!」


「本当か!」


 色めきたつ陛下と殿下。

 それは確かに心穏やかではいられない。かく言うわたしも「よくやった」という感情と「そいつ捕まえてぶっ殺してえ」という感情でどう反応していいか分からず、とりあえずにっこり微笑んで小首を傾げて無言になった。


「マークしているという事は、それが誰か我々に教えてもらえるのだろうか?」


「教える、っていうか連れてこれるよ。ちょっと待って」


 そう言うが早いか、エルは異空間を開いて手を突っ込み、そこから人間を勢いよく引っ張り出して投げ捨てた。


「ひっ!」


 怯えるミューちゃん。

 それを抱きしめ、「大丈夫だよ」と囁くエル。


 男は突然、床の上に投げ出されて頭を打ち、体を起こそうとしていたがそこを殿下につかまえられ、思いっきり殴り飛ばされた。


「貴様がミュルレイシアを!!」


 陛下も玉座から降りてきて声を上げる。


「皆の者、出あえい! この不届き者をぶちのめせい!!」


 そこは『縛り上げい』じゃないんですか、陛下。

 心の中でツッコミつつ、謁見の間になだれ込んできた騎士達に縛り上げられてフルボッコにされている男を横目に、わたしは陛下に淑女らしく質問した。


「陛下、差し支えなければお教え願いたいのですが、お城の地下にあの男をもてなすようなお部屋はあるのでしょうか」


「む、あるにはあるが」


「まあ、ではわたくし、素晴らしい女性を陛下にご紹介できると思いますわ」


 わたしがそう言うと、姿を隠していたキリが足もとに体をすり寄せながら『にゃあん』と鳴く。


『なになに、もしかして僕の出番?』


 違うて。

 女性て言うたやんね。

 しかしほんとこういうとき嬉しそうだね、君。


「それはどのような人物だ?」


「では失礼して。『召喚:鉄の処女(拷問官)』」


 黒い霧が現れ、人の形をとった。美しい黄金の髪の若い女性の。

 彼女は微笑み、皇帝陛下に一礼して見せた。


「秘密を聞き出す事がとても得意な女性なのです」












 

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