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話が急展開してるんだけど

「ダメだった」


 帰還した冒険者たちの第一声がそれだ。


 すでに生存者はなく、その上、シールドボアも居なかったらしい。


 その上で、僕が倒した三頭を検分して帰って来たらしい。


「そこの新人が言うように、穴が開いた三頭のボアが倒れていた。頭や尻の辺りに穴が空いていたが、どういう訳か三頭共に魔石が砕けてやがる。一体何があったんだ?魔石矢じりとは少々違うダメージの出方をしている」


 検分した冒険者が受付でそう説明し、僕の方を見る。


「ヨイチ、説明してやれ」


 受付からアキッレさんがそう声をかけて来たんで、先ほどの説明を行ったが、やはり反応は同じだった。


「・・・・・・確かに、魔石矢じりや魔石突きでもボアの肉を切り裂くようにして刺さってその余波で魔石が砕ける。だから、魔力による攻撃な事は分かる。分かるんだが、何を言ってるんだ?」


 結局こうなってしまう。それ以上説明しようがないというのに。


「そう言ってやるな。『森の民』に伝わる秘伝か何かってヤツなんだろう」



 そう、アキッレさんが行ってくれると、冒険者もそれ以上何も言わなかった。何かって、何?


 そんな訳で、一応の事態は終わりとなったが、さあどうしようか。


 まさか、冒険者を始めるなりこんなことになるとは思わなかったよ。


 ただ、ここはそれなりに施設が良い。


 冒険者と言うのは誰でもなれるものではあるが、誰でも稼げるというシロモノでもない。


 稼げないからと言って街に放り出せば何が起きるか?


 実際過去には起きたんだろう。その辺りのゴロツキが日銭稼ぎの身分証として冒険者登録を行いうろつけば治安も悪くなる。

 当然だが、そんなことになってはギルドも困る。


 そんな訳で、冒険者ギルドには新規登録者が使える宿舎やギルドが運営する低額の宿が存在している。


 ほぼ無一文に近い状態で飛び出してきた僕にはありがたかった。


 そのため、登録してから今日までギルドの宿舎で生活していた。


 こうして一定数の講習者が集まるまでは仮証でギルド内の手伝いを中心に一応の宿泊料を稼ぎながら、冒険者について学んでいく。

 

 運が悪いと20日近く冒険者証発給までかかるそうだが、僕の場合は4日で講習が行われた。


 ところがこれだ。


 どうしたものかと思ったが、一応、初任冒険者、いわゆる「新人」というランクを与えられることになった。


 新人が行うのは主に街中の雑用や手伝いなのだが、僕の場合は森の民であり弓の腕が三頭のシールドボア討伐で証明されたので、街の周囲にある畑の警備などは受けられることになった。

 イナリも槍のウデを認められて、同様らしい。


「ちょっと待って」


 ようやく襲撃事件がひと段落したので宿舎に帰ろうと思ったら呼び止められた。


 相手は声で分かっているが、何だろうか。


「何で終わった風に帰ろうとしているの」


 いや、終ったじゃないか。


「アタシの話は終ってないわよ」


 あれって、救援隊が帰って来るまでの暇つぶしでは無かったのだろうか?


 そもそもだ、魔王が出現してスタンピードが起きたというなら、こんな所で悠長に仲間集めなどしている暇はないのではないか。

 彼女の故郷であるシネッタという街が今どうなっているのか知らないが、北の部族は港町であるナーンタリから内陸へひと月近く向かった場所に棲むと聞いている。アキッレさんもそこまでは行っていないらしい。


 ならば、ナナップという内陸の街へ来るには3カ月近くかかってはいないか?そんなにのんびりやってきて、そこから仲間を探していては時間がかかり過ぎだ。


「話を聞いた限り、その魔王が魔物を率いて襲ってきているのなら、ノンビリ仲間を集めている暇はないんじゃないのか?」


 それを聞いたイナリが呆れている。ナゼ?


「はぁ?なんで襲われんのよ。魔王の選別が起きているのを発見したところなのに。だから、『森の民』に小物を殲滅してもらおうと依頼を出したのに、断られたの」


 えっと、つまり、スタンピード発生を想像した僕が間違っていたの?でも、アキッレさんもスタンピードの話をしていたよね?ちょっと何言ってるのか分からない。


「えっと、じゃあ、スタンピードじゃ無いの?」


 そう、イナリが何言ってるのか分からない。


「魔王が決まったばっかりなんだから起こらないわよ。これから魔将の選別が行われて魔物を組織するから侵攻は来年の今頃じゃないかしら?」


 気の長いお話ですなぁ~。さっきの切迫感は何だったんだろう?


「それまでに連れて帰れば良いの。で、アンタよ。あの魔力矢があれば魔将や魔王を倒せるんじゃないかしら?」


 得意げな顔でそんな事を言って来る。


「僕は日に3、4本が限度だから本当に切り札にしかならないんじゃないかな。もっといろんな技を持った人がいると思うけど」


 そうなんだよ。世の中にはもっとすごい人がいるはずだ。それに


「第一、僕は船代を出せるほど裕福じゃない。ここで稼いで行くのなら、それこそ来年には間に合わないと思うんだけど?」


 そこがネックになる。


 乗船賃というのが異常に高い。だから、普通は歩いて行こうと思うのだが、そうなると荒野を歩くことになるのでそのハードルはさらに高くなってしまう。


「そんなの、鉱人の谷を通れば良いだけよ。アタシはその道でここまで来たんだから」


 ああ、ここにトンでもが居た。

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