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ぼくらの冒険はこれからだ

「そう、スナップだけで固定して、そのまま引けば行けるよ」


 パワードスーツの使い方を教えて、コンパウンドボウが引き絞られるのを見ている。


「引き代はヨイチのより少ないかな?」


 そんな問いが返って来た。


「元の姿勢の問題だと思うよ。僕のは『森』の弓に合わせた射法だから、北の部族の弓とは射法が違うから」


 そういうと、納得したらしく、的を射る。


「話には聞いてたけど、本当にここまで凄いとは思わなかった」


 400m先の的を正確に射抜いて彼女はそう感想を述べる。


「おいおい、嫁を連れて来たと思ったらそんなモン与えて、お前ら何やる気だよ」


 アレクさんのそんな呆れ声を聞いて、ちょっと苦笑してしまった。


「高性能の弓を求めることは悪い事では無いとおもうのだけど」


 そう、素直に返すミンナ。


 


 あの魔王討伐の後、カーマネンへ戻った僕たちは歓待されるよりも警戒されていた。


 それもそうだ。


 魔王討伐をわずか5人でやるなんて、常識的に考えて不可能だから。


 しかし、それを達成した事が知れ渡ると、歓待ではなく警戒が待っていた。


 しかし、この状況をイナリもエーロも予想していたらしい。


「当然ね。少数で魔王討伐なんてありえないもの。しかも、損害無しなんて、どんな物語よ」


 と、自分が当事者でありながら、そんなことを言うイナリ。


「しかも、よそ者が達成したなんて、警戒する以外にないじゃない」


 そう言って僕を見たんだ。


 やると言った当人がそんな事を言っても後の祭りだと普通に思うよな。


「だから、ミンナなのよ」


 と、イナリは言い、エーロに提案したらしい。


 しばらく僕らはハゲリン邸から動けなかった。


 10日くらいの地にようやくエーロと会い、僕がそのみんなと言う女性と結婚し、新たに谷の入り口に当たるあの小鬼に襲撃を受けた集落周辺の領主となる事が発表された。


 カーマネンを治めるスンマネン家の下に配された領地持ちの騎士という地位としてだ。


 と言っても、ほぼ名目上に近いのだが。


「ヨイチ・ナッティネン。ミンナを妻として、新たに姓と領地をあたえる」


 イナリやヤーナから事前に話は聞かされてはいたが、本当にそんなことになるとは思いもしなかった。


 僕が北の部族でないという事も大きい。


 他所から来て魔王を倒してしまった。


 魔王を倒すような強者に何も与えない訳にはいかない。しかし、下手な地位や名誉を与えすぎるのも良くない。


 10日の間にイナリの生家であるノケライネン家とスンマネン家で話し合いがもたれた。


 もともと「森の部族」へ救援を求めたのはノケライネン家ではあるが、実のところ、イナリは森への使者ではなく、南方で冒険者を勧誘する役割であった。


 そのところがノケライネン家とスンマネン家で話がこじれたそうだが、ミツヨシ様が言ったように、僕は既に「森の民」としての地位にはない。

 そんな事もあって、僕はスンマネン家で囲い込まれることになった。


 エーロが正式にイナリを迎え入れることでノケライネン家も妥協して事なきを得たらしい。


「部族内の力関係よ。アタシがスンマネン家に嫁げばノケライネンも地位向上が図れる。もともとスンマネン家は中部の肥沃な土地を治める最大部族だもの」


 と、イナリが教えてくれた。


 北の部族には「森の長」の様な確固とした長老は居ない。「森」を出た部族であっても、最終的には「森の民」であるらしく、結局、長は「森の長」なのだというのが形式的ではあるが習わしなのだという。

 なんだか僕にはよく分からない話だし、一応、領主とは言っても、スンマネン家の騎士という地位なので、ほとんどの事はこれまで通りなので、僕が領地で常に領主らしいことをやっている訳ではない。


 で、ミンナと言うイナリの友人、エーロの妹なのだが、たしかに北の部族らしくはない。イナリみたいに細身である。

 そして、エイナルさんに負けず劣らずの弓使いであった。


 それがあって、すんなり打ち解ける事が出来た。


 ただ、僕の使う骨格や弓に興味を示したので、彼女にも作る事になり、谷を訪れたという訳だ。


 谷では相変わらず、アレクさんがスパイダー狩りを行っていた。


 デス・スパイダーを狩る様な狩人や冒険者は早々居らず、僕がやって来るのを待っていたらしい。


 なぜか早速、新たに発見したデス・スパイダーの巣へと連れていかれて討伐する事になった。


 まあ、それがあったから何の心配もなくミンナの装備一式が揃った訳だが。


 そして、スパイダーとは違う新たな素材狩りの提案を受けた。


「フライングドラゴンの最大種に、ラルヴァ・リベッレってのが居るんだ。軽くて硬い骨格と透明な羽根を持つ。デス・スパイダーほどじゃないが、結構実入りも良いぞ」


 という事で、また新たな冒険を始めるのも良いかなと思ったりする。


「良いんじゃない?忘れの海だとマンティスが有名だけど、もっと難易度が高い虫を狩るのは私も挑戦したい」


 領主になったはずなのに、帰る場所がある上級冒険者になっただけというこの不思議な状況。ミンナも乗り気だ。


 それでも面白そうだから、僕もその虫を狩りに行きたい。


「ミンナもそう言うなら、言ってみよう」


 アレクさんに導かれて事務所へと向かう。


 さて、今度はどんなところへ行くことになるのかな

本当にタイトルのようにこれからだENDとなっております。


今回は完全に最後で失速しちゃったよ。

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