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またトンでもない事を言ってくれたな

 街はどこか和風な印象を受けるが、気候の違いだろうか、南国風だ。


「私は帰着のあいさつに言って来る」


 僕たちはヤーナの家、と言うには大きなハゲリン邸でお留守番だ。


「カーマネンの領主は、エーロって言うのよ」


 なんか、前世記憶だと卑猥な響きを醸し出すような名前だな。


「最近代替わりした若造だけどね」


 若造って、イナリが言うと違う気がするんだが。


 そんな感じで事前情報を教えられ、翌日には僕たちもそのエロい人に会う事になった。


 そこはハゲリン邸よりさらにデカイ。前世の記憶で言うと寺院や神社といった感じの建物が複数存在し、その中でもひときわ大きな本堂とでも言うべきものが領主の館だそうだ。


 そこに招かれ、イナリが先頭に立って案内される。


 そこで久しぶりに思い出した。


 コイツ、成りはともかく領主の娘だっけと。


 そして、やはりと言うか、庭を見ながら廊下を進んだ先にあるひときわ大きな部屋へと招かれた。


「よく来た。イナリ」


 そう言って声を掛けて来たのは、なるほど、たしかに若造だね。年齢は僕やイナリより少し上という程度だろう。

 だが、ヤーナやエイナルさんよりさらにガチムチな体格なんだが。


「お久しぶりです。スンマネン卿」


 などと、イナリが畏まって挨拶を行う。


 その挨拶をエロい人はニヤニヤと眺めているという、外から見ると何とも不思議空間になっている。


「イナリらしくないな」


 イナリのあいさつが終るとそう言うエロい人。


 ムッとするイナリ。


「何よ、ちゃんとあいさつしてあげてんのにその態度」


 と、いつものイナリへ戻った。


 その態度にヤーナも特に動じてはいない。これが普通の事なのだろうか?


「そう言うな。で、ハゲリンが言っていた『森の民』というのはその二人か」


 と、僕らを見る。


「エーロ、久しぶりに会ったアタシより男に興味があるの?」


 と、まぜっかえすイナリ。


「聞いている。『鉱人の谷』で何やら作ったそうじゃないか。ノケライネン家が皮肉で持ち込んだ許嫁話が実態を持つことになりそうだな」


 と、エロい人は言った。


「そうよ。アタシは昔のアタシじゃないの。エーロにも負けないから」


 と、威張り出すイナリ。 


「そいうは楽しみだ。で、『森の民』を紹介してはもらえないのかな?」


 と、イケメンな対応をする。


「そうね。じゃあ、ホラ」


 と、いきなり投げてくるイナリ。


「前の長、ミツヨシでござる」


 と、ミツヨシ様が挨拶を行い。


「ワナマル村の弓使い、ヨイチです」


 と、僕も挨拶を行う。


 エロい人は僕らを値踏みする。


「聖弓エイナル。その方から見て二人はどうなのか?」


 と、エイナルさんに話を振り、弓使いとしての意見を求める。


 エイナルさんもシースルー討伐の話を詳しく語って僕の事を褒める。


 ミツヨシ様のウデも自分を超えることを強調していた。


「なるほどな。ノケライネン家が『森の民』に助けを求めたという話は聞いたが、連れて来たのがその様な者であったとは、頼もしい」


 と言って、イナリを見る。


 イナリもどうだと言わんばかりだ。


「さて、そこでだ」


 そう言って現在の魔王の動静を聞かされた


「カイヌーが呑まれたの?あの街が呑まれるって、魔王はそこまでの勢力なのね」


 と、驚くイナリ。僕やミツヨシ様にはよく分からないが、すでに大きな街が魔王の勢力に吞み込まれた事だけは理解した。


「残念ながら、カーマネン領でやらかしてしまった結果だな」


 と、エロい人は言う。それを聞いて小さくなるヤーナ。


「何、ハゲリンの責と言う訳ではない。領内で強力な鬼が出て野放しにする領主が居れば、そちらが問題だ。討伐したこと自体には何も問題はない」


 そう言われて深々と頭を下げるヤーナ。


「それはそうね。偽王だから野放しに出来るはずも無いし。知恵がある奴なら魔王と誤認しても仕方ないわ」


 と、イナリもそれを追認する。


 と言っても、それはヤーナやエイナルさんに責任が無いという話であって、事態は悪化している事に変わりはないのだが。


「魔王の居場所は分かってるのよね?」


 と、イナリが続けてそう言う。エロい人も一瞬なにを言われたのか分かっていない。


「居場所よ。分かってるんでしょう?」


 再度イナリが聞く。


「ああ、それなら把握しているが、何をする気だ?」


 エロい人は未だに意図が掴めていない。それは僕も同じではあるが。


「簡単よ。アタシたちで本陣を潰すの」


 などと供述を始めやがった。頭がどうかしてるとしか思えない。


「少人数でどうにかできるとは思えないが?」


 と、常識的な反応のエロい人。


「そうでもないわよ。アタシたち、みんな谷の機械を使えるの。これがあれば普通の人の三倍は速く動けるわ」


 と言っているが、まあ、出来なくは無いな。赤いロボじゃないが。


 エロい人は値踏みするようにイナリを見る。「本気か?」という意味と、何か裏を読もうとしている感じだ。


 その事に気付いたイナリはさらに続けて言う。


「アタシがエーロの許嫁にふさわしい事を証明するの。これ以上ないじゃない。魔王本陣の壊滅なんて。それに・・・・・・」


 そう言って、なぜか僕を見た。


「コレがアタシにずっと色目使って来るのよ。魔王倒すのコレの役割だから、何か考えてよ」


 などと言い出す。


 エロい人もこちらを見て思案顔である。


「ミンナを嫁がせちゃえばどう?」


 と、イナリが謎な事を言う。


「ミンナを『森の民』にだと?」


 そう言ってイナリを睨むエロい人。その視線を正面から受けて得意顔のイナリ。


「それだけの偉業でしょ?魔王を一人で倒すの。コレが」


 などと、僕のあずかり知らないところで話が進んでいく。


「イナリがそこまで言うなら、成功した暁にはそうしよう」


 どこか呆れたようにそう言うエロい人。


 多分、可能だと思う。魔力矢もそのために専用で作ってもらっている。素材も特別だし矢竹よりも節が多いので魔力塊も小分けに出来る。強力なシールドであっても侵徹可能だ。






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