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それはまた急な話で

 アーマード・マンティスを解体し終えたアーシャさんと共に穴を掘って埋める。


 その後、周囲を探索してみたものの、あまり虫は居なかった。


 どうやらあのアーマード・マンティスが通って来た事で、虫たちが警戒して逃げたのだろう。


 結局、エイナルさんと強化弓による射程競争を少しして今日は集落へと帰る事になった。


「さすが、ミツヨシ殿に比類する腕前。お見事」


 と、エイナルさんに褒められたが、強化弓だから出来る事だと思う。


「いやいや、元のウデが良くなければ、あの正確さは出せない。『森の民』でも指折りでは無いのか?」


 と言われたのだが、村の事しか知らないので詳しくは分からない。


 自画自賛になるが、村では一番であったのは確かだ。


「それならば相応のウデと言う事であろう?その観察眼はミツヨシ殿を越えていると、認めていたほどだしな」


 確かに、前の長より優れた眼というのは、誇ってよい事なのだろうが、今更帰って評価されるとも思えない。


「ミツヨシ殿を見てみよ、森を出て巡っておるではないか。『森』だけがすべてでは無かろう?」


 そう言われると、たしかにそうだと思う。


 外にはエイナルさんの様な森ではお目に掛かれない弓の名人にも会えたし、ヨシフさんやセルゲイさん、クニャージさんが居なければこの装備は出来ていないだろう。


 そして、竹矢に代わる矢が手に入ったのは大きい。


「それは同じだ。こうして故郷を離れたからこそ、このような逸品に出会えた」


 と、エイナルさんも同意してくれた。


 そんな会話をしていると、気が付けば集落だった。


 狩人事務所でアーマード・マンティスについての報告を行ったが、かなり時間を要した。


 アーシャさんが職員なんだからと思ったが、だからこそ詳細な報告書の作成が行われたというのが原因だ。


 そうこうして、ようやく宿へ戻った頃には、先に帰って来た3人が早くも酒を飲んでいるらしい。


「お、遅かったな」


 アレクさんが声を掛けて来た。


「アーマード・マンティス狩りの報告してましたから」


 そう言うと、手を振って、座る様に促してくる。


「そう警戒すんな。デザート食わせようってんじゃないんだ」


 そう言って、注文したのは普通の料理だった。


 ちなみに、エイナルさんはデザートを勧められていたが、あまり口に合わないらしい。


 やっぱり飲兵衛のつまみだな、アレは。


 そんな事があった次の日、さて今日はどうしようかと考えていると、ヤーナが走って現れた。


「おい、イナリ。お前の予測よりかなり早く魔王が現れたらしいぞ」


 と言って、何やら手紙を渡してきた。


 まだ頭が回っていないイナリはそれを何の気なく受け取って読んでいく。


「嘘でしょ!いくら何でも早すぎ」


 そう言ってワナワナしている。


「だが、事実だ。シネッタでの目撃だというではないか。お前の睨んだ通り、私が倒したのは偽王でしかなかった。そして、魔王は着実に成長したという訳だな」


 悔しそうにそう言うヤーナ。


「そうなるって言い伝えにもあったから、別にそこは驚かないわよ。まさか、偽王が居ない事が魔王の誕生を早めるなんて想定外だったわ」


 まさか、ここでノンビリできると思ったら、北へとこれから向かう事になるという。


「これから北へ向かうとなると、色々準備が要るんじゃないのかな?」


 そう言うと、頷いている。


「確かに、しっかり準備をする必要があるな。だが、まずは本谷へ向かおう」


 というヤーナ。


 ここからだと丘へ上がって迂回するのかと思ったが、どうやら谷から荒野を抜けるルートらしい。


「間違いなくそちらの方が早い」


 と、エイナルさんも言うので従う事にする。


 ふとミツヨシ様を見る。どうするのだろう?


「ワシも行くぞ」


 どうやら乗り気らしい。


「そうと決まれば早速出発ね!」


 イナリがそう音頭を取るが、方向音痴なのでどこへどう行けば良いかを本人は分かっていない。僕も知らない。


 結局、ヤーナやエイナルさんの案内で向かう事になった。


 まずは本谷へ向かうのでこれと言った準備は必要ないらしい。


 谷から上へ上るとそこは荒涼とした大地で、見渡す限り岩山が遠くに見えるだけの景色だった。


 そんな何も目印が無いような場所を、全く迷いなく進むヤーナとエイナルさん。


 その2人を追い抜く勢いで進むイナリ。


 僕とミツヨシ様はそんな一行の後を後方警戒しながら進む。


「隊商が通るというからもっと整備された道があるのかと思ってましたが、何もありませんね」


 ついついそうぼやいてしまう。


「こんな荒野に誰も道なぞ造りはせんよ。仮に造ったとて、すぐに砂に埋もれるのがオチじゃろう」


 なるほど、どうせ石畳なんかにしても無意味という訳か。


 そうやって2日ほど歩いた先に大きな裂け目が見えて来た。


「アレが本谷だ」


 そう言ってヤーナが迷うことなく下へ降りる道へと歩を進めていく。


「確かにこっちの方が発展してる」


 そう口を突いて出た。


 坂道から見下ろした谷には以前よりも多くの道があり、桟橋や川を渡る橋も多く架けられている。見るからに発展具合が違う。


「それはそうさ。この本谷は直接忘れの海へ出られない分、虫も少ない。その分、採掘が盛んで鍛冶屋が圧倒的に多いからな」


 と、ヤーナが自分の故郷でもないのに自慢げだった。


「さて、冬に備えた装備を揃えたらすぐさま出発するぞ」


 と、観光気分で谷を見回す僕にいきなり冷や水を浴びせて来た。


「何だ?そんな弓や鎧を持っているのに、まだ何か漁る気だったのか?」


 などと言われてしまった。


 そりゃあ、オーガにはあまり興味が無いのは確かなんだが・・・・・・ 



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