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説は正しかったみたいだ

 翌日、集落を歩いているとミツヨシ様達とばったり出会った。


「アレクさん、昨日はどこへ行っていたんですか?」


 真っ先に聞いて来たのはアーシャさんだ。


「ちょっと崖へな、デザート狩りに行っていた」


 それを聞いたアーシャさんは呆れたような目を向けている。


「それで見かけなかったんですね。2人とも、いやな思いをしてたんじゃないですか?」


 と、聞いてくる。


「クモが多くて気持ち悪かったわ」


 すかさずそう答えるイナリ。


 わざとらしくため息を吐くアーシャさん。


「いや、お前らもウマかっただろ?アレ」


 慌てるアレクさん。


「最後のはともかく、他のは別にもうイイ」


 と、はっきり答えるイナリ。


 アレクさんがががっくりしているが仕方がない。わざわざ何度も食べたいは思わないからなぁ、アレ。


「クソ、酒に合うのが分からない奴らが」


 と聞こえるようにつぶやく。


「ほう、酒に合うのか」


 そこで反応したのはミツヨシ様やエイナルさんではなく、ヤーナだった。


「おう、どうだ?狩りに行くか?」


 と、元気になって誘っている。


 結局、乗り気なヤーナとミツヨシ様がアレクさんとデザート狩りへ向かった。


「エイナルさんは良かったんですか?」


 そう聞いてみたが


「ああ、飲めるように見えるだろうが、そうでもない」


 との事だった。


 アーシャさんは鉱人なので飲めるのだが、わざわざデザートを狩りに行く気にはならないという。


 そんな訳で、今日はパーティーをシャッフルしての狩りとなった。


 エイナルさんによると、昨日はかなりプレート・マンティスを狩ったらしい。


「さすがによく出来た弓だ。木の弓とは矢速も違えば射程も違う」


 と、かなり上機嫌だ。


 そして驚いたのがアーシャさんだ。


 この人、何で受付やってるんだろう?きっと鉱人でも指折りの狩人じゃないだろうか。


「ヨイチさん、見えますか?」


 ふと止まって聞いてくる。普通、受付がこんなに目が良いはずがない。


 それは先ほどから見えてはいる。


 どうやらイナリは無理らしいが、エイナルさんも言われて気付いたようだ。


「アレは出来れば会いたくなかったですね」


 幸いと言うかなんというか、周辺に狩人は居ない。


「あ、土煙」


 イナリがソレから離れた位置で上がった土煙を報告する。


「え?もしかして、透明なのが居るの?」


 と聞いて来るイナリ。


「シースルーじゃありません。アーマード・マンティスです」


 と、アーシャさんが警戒している。


 どうやら、奴は獲物を捕らえたらしい。


「普通に食べているな。ヨイチの推測は外れていたのか?」


 と、エイナルさんも観察を優先している。


 しかし、僕は既にコンパウンドボウに持ち替えて矢を番えている。


「あ、頭だけかじって捨てましたね」


 と、アーシャさんが言う。


「あ、見つけた」


 どうやらイナリも姿を見つけたらしい。


 あ、今不意に周囲を見回したアーマード・マンティスと目が合ったと思う。


 鎌を動かす動作を見せたので、躊躇なく矢を放った。


 矢は鎌へ刺さるかと思ったが、少し動きが遅く、そのまま閃光と共に頭を落した。


「やったの?」


 イナリが身構えながらそう言う。


「あ!デッカイ紐が出て来た」


 そう言いながら一気に駆けて行った。そして、それを追うアーシャさん。


 あっという間にワームにたどり着いたイナリがのたうち回るワームの頭と思しき部分を切り落とした。


「まだカマキリが動いている!」


 駆け寄ろうとしていたエイナルさんがそう言って矢を放つ。


 閃光を発して右の鎌に穴が開いた様だ。


 そこに追いついたアーシャさんが両方の鎌を切り落としていく。


 その手際はホントに感心するほど早く、索敵と合わせて、ホント、何で受付なの?


 駆け寄って行く間にもワームがイナリに切り刻まれていった。


 鎌を失ったマンティスも力尽きたらしい。


「本当に、ヨイチの推測通りだったのか」


 と、エイナルさんも驚いている。


 検分していたアーシャさんもそれに同意らしい。


「どうやらその様ですね。シースルーと基本的な特徴が同じです」


 ワームを見ると、プレート・マンティスの物と大きく違いがある訳ではなさそうだったが、サイズだけで言うなら少し大きいかもしれない。


「素早いわよ、この糸虫」


 すでに切り刻んだ物体を突き刺しながらそう言うイナリ。


「ワームの特徴はほとんど違いがみられませんが、寄生する虫の違いで栄養や魔力が多いせいで俊敏なのかもしれませんね」


 ワームを検分してアーシャさんがそう言う。


「アーシャさん、すっごく速いのになんで受付なの?」


 イナリが直球で気になる事を聞いてくれた。


「今でも狩りはやりますよ。ただ、谷の狩人は子供みたいな人が多いの、どうしてもお目付け役が必要なんです」


 そうにっこり笑うが、僕らは引きつった笑いしか返せない。怒らせてはいけない人だ、きっと・・・


「それにしても、600mと聞いていたが、随分に近付けたように思うのだが?」


 エイナルさんがそんな疑問を口にする。


 アーシャさんはその間にもアーマード・マンティスを解体している。


「理由はこれですね」


 そう言って、腹を開いて見せた。


「何もないじゃん」


 と驚くイナリ。


「なるほど、弱っていたのか」


 と、納得するエイナルさん。


 つまり、この個体はもうすぐ水辺へ向かって歩みを進める、いや、茂みや木陰に居ないところを見ると、誘導されて水辺へ向かう途中だったのかもしれない。


「という事は、忘れの海にもそれなりに魚が居たりするんですかね?」


 と、僕は疑問に思った。


「忘れの海にはワームをはじめ、いくつかの生物は居ますが、人にとっては害があるか、食糧や素材に適さないモノばかりです」


 との事だった。


 まあ、随分と濃い塩湖っぽいから、やっぱりそうなのか。 

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