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一般にはハイリスク・ローリターン

 知らない方が良い情報だったが、そこには気になる事もある。


「そうすると、スパイダーを狙う虫も居るんじゃないですか?」


 そう、蜘蛛も無敵ではない。デス・スパイダーにさえ天敵は居るはずだ。


「ああ、居るな。ホーネットの仲間が」


 そいつは危険すぎやしないだろうか?


「と言っても、谷や草原にはほぼ居ないはずだ。巣を作らない様に見回りしているからな」


 っとの事だった。


 そして、蜘蛛類がこの周辺に多い事による恩恵もあるという。


「スパイダーは糸を利用できる有効な素材としての意味もあるが、ここの奴らの様な掃除屋としてもありがたい存在だ。こいつらが居るおかげで疫病が流行る事も無い」


 なるほど、蜘蛛類と言えば、ハエやゴキブリの類を餌としている事だろう。ここの蜘蛛類ならば獣まで食ってくれる訳だから、なお良しだな。その事で疫病を減らせるというのは、ある意味共存関係かも知れない。たまに鉱人すらも蜘蛛類に食われているそうだが。


「ねえ、もしかて、あのクモが襲ってきたりしないでしょうね」


 と、イナリが疑問を投げかける。


「こいつ等なら襲ってくることは希だ。見た目は恐ろしいが、実は毒を持っていない大人しい連中だ」


 という。


 という事は、見た目を毛ガニとでも思い込めば、何とかなるのだろうか?無理そうだが・・・・・・


 しばらく歩いて、いく種類かの虫を見た。


 そして、本当に上から落ちて来たであろう物体に群がる姿も見た。


 その群がる中に危険な奴が居るらしい。


「あの黒いのは危険だ。猛毒を持っていやがって、吹きかけてくる。・・・今は食事中でこっちに気が向いていないらしいな」


 下手に刺激しない様にその場を後にする。


「お、アレは良いぞ」


 どうやらお目当てを見つけたらしい。


「クモじゃん」


 イナリは興味なさげだ。


 アレクさんが矢を番えてクモに近づいていく。


 そして、射程ギリギリという距離から射る。


 外した時用に僕も準備をしておく。


 あ、やっぱり外した。


 外れた事を確認して僕が居る。


「あ、バカ!せっかくのミソがぁ!!」


 アレクさんが何か叫んでいるが、ちゃんと命中した。


 走ってクモにかけとるアレクさんを追いかけた。


「あ~」


 そこには腹とちぎれかけた脚が数本ついたクモらしき残骸が転がっている。


「こんな気持ち悪いの良いから、さっさとカマキリ狩ろうよ」


 イナリは未だ気付いていない。


「脚じゃダメなんですか?」


 僕がそう声を掛けた。


「脚じゃあ、肉じゃねぇか。デザートって言ったよな?」


 と、僕を睨みながらそう言う。


 う~ん、分からん。


「まあ、コイツも食えない訳じゃないから持って帰るか」


 アレクさんがそう言って袋にしまう姿を、イナリは硬直しながら見ていた。


「まさか、アレ食べるとか正気なの?」


 それは僕も思うんだ。


「イナゴなんかよりうまいぞ」


 と、アレクさんは言うが、あまり食欲をそそるとは言い難い。


「次は吹き飛ばすなら腹にしろ」


 と、アレクさんは言いながら、獲物を探し始める。次、外してイイですか?


 探し続けている間、僕やイナリはプレート・マンティスを狩ったり、たぶんバッタであろう虫を狩っていた。


「うわぁ、滝が途中で消えてる」


 イナリが上を見上げてそう言っている。


 見上げると確かに、途中から滝が無くなっている。


「ここまで来たか。もう戻るぞ」


 アレクさんはそう言って引き返す。


 まだ少し続いているが、そろそろがけ崩れによってできた僅かな海岸を除いて陸地が無くなるとの事だった。


 そんなアレクさんに続いて帰路につく。


 しばらくして、どうやら獲物を見つけたらしい。


 こちらには声を掛けずに一人で挑む様だ。


 ゆっくり獲物に近づいて行くアレクさん。


「ホントにクモなんて食べるの?」


 イナリはいまだに信じていない。もしかしたら見えてすらいないかもしれない。僕も半信半疑だ。スパイダーは見えているが、掩護しようと思っていない。


 他に何かいないか探してみたが、周囲にこれと言った獲物が居ない。


 アレクさんが何とか気付かれずに射程内に入り、お、今度は仕留めた。どうやらマジックバーストを使わずに仕留めた様だ。


「ほら見ろ。コイツはちゃんと狙えばマジックバースト無しでも倒せるんだ。ほら、しっかり頭があるだろう?胸にだってうまいモンがあるんだ」


 と、ニコニコしている。


 嫌そうなイナリと呆れ気味の僕。


 だが、そんな二人にお構いなしでご機嫌なアレクさん。


「食えば分かるさ。食えば」


 と、そこからの帰りは邪魔にならなければ虫の相手すらしないという、そんな急いで帰る必要があるのかと思うほど急いで集落まで帰った。


 そして、以前の宿の厨房へとアレを持ち込んだらしい。


 その夜、原形をとどめた脚と、なにかお皿に乗った物体が食卓に並んだ。


「ホントにクモの脚じゃん」


 嫌そうに突くイナリ。不明な物体の匂いを嗅ぐ僕。


「何やってんだ、ウマいのに」


 まったく躊躇なく食事を始めるアレクさん。


 食った感想は、脚はまあ、うん。確かに酒のアテには良いかもしれない。ミソと称する物体は、ウニだろうか?癖が強くて酒好きにはウケが良いのかもしれない。


「マズくは無いんだけどなぁ」


 というイナリ。僕も似たようなな感想だ。


「なんだ?進んでねぇじゃねぇか。っか~!ウマい!」


 完全に酒のアテだよコレ。デザートって、全くデザートになってない。


 そんな事を思っていると、更に後からもう一品運ばれてきた。


「あ、これイイ」


 イナリがそう言う。


「確かに、これは良いね」


 それは確かに甘くておいしかった。


 スパイダーのミソってのはコレの事だったらしいが、ちょっと味付で垂らしたカラメル程度の量でしかない。


「ヨイチが吹き飛ばして無けりゃぁな」


 と言いながら、突いているアレクさん。


 で、なぜこれがあまり食されていないのか?


 ミソと呼ばれる甘い部位はともかく、基本的に癖が強すぎてあまり食べる人が居ないからだそうだ。


 そりゃあ、わざわざコレを狩ろうと崖へ行って、スコーピオンと鉢合わせとかしたくないもんね。リスクの割に得るものが少なすぎる。 

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