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それはたぶん、狂気の沙汰

 さっそく二人の弓も出来た事なので、一度マンティス狩りへ行こうという事になった。


 ミツヨシ様達が本谷から連れて来た鉱人はまだ快方していないので、アレクさんが今回も案内役となる。


「アタシたちも行く!」


 これまで二人でアントやイナゴを狩っていたのだが、ちょうど狩人事務所へ戻って来ていて話を聞かれてしまい、連れていく事になった。


 確執があったらしい二人だが、今では打ち解けたのだろう。普通に話が出来ている。


 こうして人数が増えてしまったが、案内役が1人しかいない。


 どうしたものかと思っていたら、アーシャさんが引き受けるから2パーティにしてはどうかとなった。


「良いけどよう。どう分けるんだ?」


 結局、そこが問題となった。


 弓使いが3人、槍使いが2人でバランスが悪くはないだろうか?


「元のパーティにすれば問題は無いと思いますよ?」


 そういうアーシャさんに特に異論は出なかった。


 確かにそれで問題はないだろう。


 こうしてまた草原へと向かう。


 シースルーを狩った集団の登場に対して、出張所ではもっと騒ぎになるかと思ったが、そうでもなかった。


 冒険者ファンタジーだとそう言うのが広まって大注目とかになるのだが、まるでそうなっていない。


「何キョロキョロしてんの?」


 イナリにそう言われる程度には挙動不審だった。


「何だ?シースルー狩ったから何か言われると思ったか?」


 アレクさんにもそう言われた。


「そうですね。もっと注目されるとか何か絡まれるかと思ってました」


 そう言うと、アレクさんに笑われた。


「丘の冒険者ギルドはどうか知らねぇが、下じゃあそんな事も無いぞ」


 という。


 確かに、デス・スパイダーを狩ったというのに狩人事務所でチヤホヤされるという事も無かった。


「ここじゃあ、お前らの冒険者ランクも”初級”に上がった程度だ。あまり丘の事に関心が無いというのもあるし、それぞれが自分の目的を持ってるのもあるな」


 という。


 なにせ、まだ谷でデス·スパイダーを仕留めたとか、アントの巣を一人でつぶしたと言えば、谷では話題になるし、話しかけられもする。ある種の仲間意識だ。


 しかし、ここはそう言う場所ではなく、マンティス狩りと言う一種のステータスを求めて不特定多数の者たちが不定期で集う場所というのがあるだろう。


 そんな関係で、ほぼ、何事もなく受付を済ませた。


 どうやらミツヨシ様達もまた別行動となるらしい。


 そして、一番の謎がアレクさんである。


「どうして、弓と槍を持っるんですか?」


 ここはマンティスが主となるが、スパイダーが居ない訳ではない。


「なぁに、マンティスだけがこの草原の獲物じゃないって事さ」


 と、はっきりは言わない。


 ただ、装備からして明らかに前回のマンティス捜索を主とした装備ではない。


「行けばわかるさ」


 と言って歩いていく。


 それを追いかけて僕らも草原へと向かう。


 今回は以前の集落ではなく、さらに崖沿いを行くらしい。


「そう言えば、600mの射程が必要と言っていたアーマード・マンティスって、シースルーの事だったんですよね?そうすると、あの射程は誰が言い出したんですか?」


 そう、その辺りが謎だと思っていた。


 存在を知覚できないシースルーとの間合いをプレート・マンティスと比較してそう言っていたのだろうか。


「あれも確証のあった話だ。今でもそう思ってる」


 というアレクさん。


 何でも、実際に紺色のアーマード・マンティスがそれほどの遠方から攻撃してきた事実があるという


「実際に攻撃を受け、そのことは一定数が目撃もしている。だが、そんな距離から仕留められる奴は居なかった」


 という事であるらしい。


「という事は、今回はそのカマキリ狩りって事ね!」


 と、イナリも乗り気だ。


 僕らは意気揚々と紺色のマンティスに思いをはせながらアレクさんの後を追った。


 目指した場所は切り立った断崖の真下。所々に滝があったり亀裂がある。


「マンティスって奴は動かないモノには興味を示さない。こうした断崖の下には上から落ちて来た魔物や獣の死体が時折ある訳だが、どうなると思う?」


 と、不意にアレクさんが聞いて来た。


 マンティスが捕食しないならば他の昆虫、バッタやムカデみたいな奴が食いに来るんではないだろうか?


「そうだな。肉食のバッタは居るし、他にも肉食の奴は居る」


 そう言って辺りを探している。


 確かに、この辺りをうろついている奴が居てもおかしくないし、そう言う虫を狙ってマンティスが来るかもしれない。


「居たな」


 と、アレクさんが言う。


「ちょっと何あれ!デッカイ!あの大クモよりデッカイ!」


 イナリも叫んでいる。


 というか、動いたので見えたんだな。


「スパイダー?でも、巣が見えませんよ?」


 そう、コイツは巣が無い。


「巣を作らない種類のスパイダーでな、俺は勝手にデザート・マンティスと呼んでいる」


 そう言っている間にもどこかへと逃げ去ってしまった。逃がしてよかったのだろうか?


「と言っても、アレはちょいとデカすぎる」


 どういうことかよく分からない。


「カマキリ狩りに来たんでしょ?なんでクモなのよ!」


 と、イナリは怒っている。


「そう言うな。ま、理由は狩ってのお楽しみだ」


 という謎の話をして周辺をうろつく俺たち。


「デカすぎるのやら熟れてなさそうな奴ばかりじゃねぇか」


 というアレクさんの文句を聞きながら、僕の中には嫌な想像が浮かんできた。


「アレクさん?生でとは言いませんよね?」


 そう聞いた。


 するとニヤリと振り向くアレクさん。


「そんな博打なんかやらねぇよ。噂を信じてそれでおっ死んだ奴も居やがった」


 やっぱりか~


 どうやらとんでもないことになってしまったらしい。イナリには言わないでおこう。


「何?ナマって?」


 知らない方が幸せだ。


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