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知識チートって、言うほど簡単ではない訳だ

 ミツヨシ様とエイナルさんは弓が出来るまで暇だろうと、魔力矢を作ってもやって、スパイダー狩りに誘った。


「なるほどのう。コレが使えるとこうも違うか」


 命中精度は三人とも実のところ大差ない。


 今日は強化骨格無しで来ているので、僕がこの中では一番ひ弱で、強化弓のおかげで何とか互角といった状態だ。


 そんな中でまったく初めて魔力矢を使っているとは思えないほど慣れた動作で扱っているミツヨシ様。


 そして、魔力矢によるスパイダー狩りで、魔物に対する対処が一般的な魔石矢じりとあまりに違う事に驚いている。


 それはそうだろう。


 魔石矢じりはとにかく魔石の魔力による力押しであり、弓取りにとっては出来れば使いたくない類の出来の悪い矢である。


 ところが、自分用にバランや長さを調整された矢でいつも通りに扱うだけで狩れるのだから、何から何まで違うだろう。


 しかし、それが常に、誰にでも当てはまるかと言うとそうはない。


 現に、エイナルさんは疲労している。


「魔力を矢に込める事が出来るというのは確かに良い。しかし、込める魔力に個人差がここまであろうとは思わなかった」


 そう、問題は魔力矢として使える素材があると言っても、必要とする魔力量が個々で違うという事が今日分かった。


 マンティス狩りの帰りがけに魔力を込める事が出来た二人。


 エイナルさんに至っては自身の矢へも纏わせたのだが、効率には個人差があった事から、一気にコメ過ぎているらしく、威力はあるのだが、数を射ることが出来なかった。


 対してミツヨシ様はその逆で、最低限マジックバーストを起こすに足る量しか込められないのだが、数を射ることが出来る。


 矢が出来た事で誰でも同じになるかと思ったが、そう簡単では無かった。


「いや、2人とも大したもんだぜ。その魔力矢、俺も使えるだろうと試してみたんだが、スパイダーを吹っ飛ばす威力は出せたが、マジックバーストに抑えることが出来ねぇ。俺には使えねぇな。デス・スパイダーなら何とかなりそうだが、スパイダー吹っ飛ばしちまったら稼ぎにならねぇ」


 アレクさんはさらに極端だった。


 この為、汎用の矢と言うのは作れない事が分かり、ヨシフ工房において個人個人のオーダーメイドで作る事になりそうだ。


「そう悩む事でもあるまい?戦争に使うというなら問題は大きいが、狩人や冒険者が使う分には問題ないではないか」


 と、ミツヨシ様は森でも長さや太さが個人や地域で違うという話をする。


 確かにそうかもしれない。


 そして早速、話を聞いたヨシフさんは、エイナルさんに合う素材配合の矢を試作しているほどだ。


「心配すんな。この二人にお前、アレクというサンプルが居るんだ。あと数人も狩人や冒険者を引き入れてテストすればある程度のサンプルにはなるだろう。そこから先は、そのデータをベースに、個々に調整だろうな」


 と、普通に言っている。


 ヨシフさんの前世ではどうだったのか聞いてみたが、そもそも僕が居た大量生産、大量消費の世界では無かったのだろう。オーダーメイドが普通。そうでなくとも購入者に合わせて個別に調整は当たり前であったという。

 まあ、弓が主用武器の世界だとそうかもしれないよな。


 では、パワードスーツはと言うと、すでにあったという。


 もちろん、モーターなどは無いので、バネを用いた物であったため、そう使い勝手が良かった訳ではないそうだが、今、僕やイナリが使用しているものは前世にあったアイデアや現物の情報をクニャージさんに伝え、試行錯誤していたところだったという。


「デス・スパイダーの糸が手に入っていなかったのが一つのネックだった。金属バネじゃあ重すぎて実用的じゃねぇ。かと言って、スパイダーじゃあ耐久性に劣る。コストを考えれば使えるシロモノに出来やしねぇ」


 という事で、これまで実用化されていなかったそうだ。


 ヨシフさんの前世は弓が主力兵器であるため、弓兵の腕力差は一つの課題であったらしい。


 職業軍人や傭兵であれば、常に弓を引き、トレーニングすることで弓を引くのに適した体を作れるのだが、農民兵ではそうもいかない。

 そこで、腕力補助を行うパワードスーツが研究されていたという。


 そして、そうした兵士は当然、弓だけを持ち歩く訳ではなく、大量の荷物も運ぶ。まさか、移動で疲弊して弓を持続的に射る事が出来ないのでは困る。


 という事で、全身外骨格が研究されていたのだという。


 とは言っても、この谷の様に軽量で強度や靭性を持つような素材などは無かったので、試作は出来ても実用化まで至らなかったそうだ。


「ドミトル翁の成果だな」


 という事になるらしい。


 その研究試作によって、人体の研究も進んで、イナリの様な瞬発力に富む部族用にも専用の骨格が造れたという事らしい。


「弓についてはお前のアイデアが大きかった。そう言う理論があるのは薄っすら覚えていたが、骨格以上に曖昧でほとんど忘れていた」


 という事らしい。


 まあ、思い出してもらえて良かったよ。僕の知っているリカーブボウやコンパウンドボウの外観的特徴だけでは実現できたかどうかも怪しいのだから。

 僕の場合、魔力矢を実現できた想像力?妄想力?以外にはこれといって自ら実現出来そうなモノが無い。


 森の民と言うベースが無ければ、冒険者として活動する事も怪しかっただろうな。まさか、森の民の体というのが現世で授かった僕のチートなんだろうか? 

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