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正体見たり・・・

 ワームの暴走を警戒したが、動く気配がない。


「やったのかな?」


 いや、それはフラグだろ。


 イナリの独り言にそう突っ込んだが、動く気配無く時間が過ぎる。


「ちょっと行ってくるわ」


 イナリがしびれを切らして飛んでいった。


 まずは、障害になりそうな残りの鎌を斬り飛ばす。閃光が舞ってるから魔力を込めたな。


 そして、後ろへ回るが、どうやらワームは居ないらしい。


「・・・ワームは居ないよ!」


 そういう声が聞こえたのでアレクさんも駆け出していく。


 あれ?矢に魔力を込める方法は実践して来たけど、抜く事って出来るのかな?


 こう、体内に戻す・・・・・・


 戻せなかった。


 結局、そのまま頑張ってもどんどん魔力が霧散して行き、結局、矢から魔力を取り戻せずに終わった。


 さすがに魔力量も増えた様で、今のところ問題ないのだが、今日はこれで帰った方が良いのかもしれないな。


 そんな事を考えながら、弓を引き戻し、矢を外す。左腕のロックも外して透明なカマキリへと向かった。


 間近で見るとつくづく透明だったが、少しづつ透明感が失われて行っているように見える。


「シースルーってのは、マンティスの新種か?」


 アレクさんでも分からないらしい。


 イナリは羽根を拡げようとしているみたいだが、どこからが何の部位かハッキリそた境目がわからず、上手くいっていない。


「これ持って帰ったら透明な甲冑造れるんじゃないかしら?」


 コンコンと突きながらそんな事を言う。


 そうこうしていると先ほどの3人のうち2人が戻って来た。


 どうやらエイナルさんはそのまま鉱人を担いで集落まで戻る事にしたらしい。


「ほぉ、アレが魔力矢という奴か」


 ミツヨシ様が僕を見ながらそんな事を言う。


「こんな奴が追いかけていたとは・・・・・・、ん?しかし、コイツは黒色をしているのか?」


 ヤーナさんがどんどん透明感を失うカマキリを見ながらそんな事を言う。


 僕が飛ばしたカマキリの頭を探しに行っていたらしいアレクさんが戻って来た。


「どうやらコイツが、本来のアーマード・マンティスかも知れねぇな」


 と、黒より紺に見える頭を突き出してくる。


 これまで風魔法を飛ばす個体の目撃情報は上がっていたが、そもそも誰もハッキリとは姿を見ていないという。


 だいたい今まで攻撃されたのが茂みの木陰方向からだったという証言が多かったことから、風魔法を使うマンティスは影が保護色となる紺色として認知されてきたらしい。


 そして、そこであろうという場所をいくら攻撃しても手応えが無い事から、相当に硬いのだろうと、プレートよりも上という意味で、アーマーと名付けたらしい。


「しかし、不思議だな。偶然水辺でワームが這い出るところを発見されたアーマード・マンティスは確かに紺色だったと聞いたことがある。その証言で色が確定したはずだ」


 しかし、目の前の個体は透明。いや、光学迷彩になっている。それも相手にすらそう錯覚させる何かを出しているのかもしれない。そうでなければ、デス・スパイダーの様に気付けるはずなのだが。


「マンティスは全てワームが這い出て来るんですか?」


 そう聞いてみた。


「いや、だいたい狩っている個体はそうだが、たまに非常に凶暴で並の狩人じゃあ押し負ける様な奴からは出て来ない事もあるらしい」


 というのを聞いて、例の記憶を探ると引っかかるものがあった。


「もしかすると、ワームに寄生されたマンティスは既に衰弱している可能性がありますね。凶暴な個体が本来のプレート・マンティスかも知れませんよ?つまり、コレが本来のアーマード・マンティスで、紺色の個体は寄生された個体と言う事になるかと」


 そう言って、ドンドン紺色へと変色する獲物を指した。


「おいおい、冗談だろ。シースルーを倒したって達成感やら、実はそいつがアーマード・マンティスの新種かもとか喜んでいた気分が一気に冷えるじゃねぇか」


 アレクさんが勘弁してくれと脱力している。


「ヨイチ、なかなかの考察じゃのう。しかも、その不可視を見破るとはなかなかの目を持っておる」


 ミツヨシ様もそう絶賛するが、実はそうではない。


「いえ、僕も真正面からは全く揺らぎさえ見えませんでした。ミツヨシ様たちとすれ違った少し後に威圧感や敵意が消え、揺らぎらしきものを何とか感じることが出来たんです。幸運でした」


 そう、アレはただの幸運。マンティスが逃走する集団にのみ意識を向けてくれたからこそ視る事が出来たんだと思う。


「なるほど。我らが何も知覚できずに攻撃を受けたのも、それが原因であろうな。逃げ始めてようやく威圧感と敵意が向けられたようだしのう」


 と、出来事を振り返っている。


「攻撃後に敵意を向けられたんですか?そうすると、縄張りに入らなければ攻撃してこないのかもしれませんね」


 色々厄介だ。


 向こうからはしっかり認識されているのに、こちらから先手を取って見つける手段がない。とんでもない相手じゃないか。


「ミツヨシさんまでそう言うか。エイナルが言っていたのは負け惜しみなどではないと?」


 そういうヤーナに頷くミツヨシ様。


 ホント、勘弁してほしい。


「で、コレ持って帰るの?」


 全く話に入って来ずに何やら解体に集中していた奴が1人。


 どうやら飛ばした方の鎌も見つけることが出来ている様だ。鎌を抱えてご満悦そうにそんな事を言って来る。


「鎌は持って帰った方が良いだろうね」


 とりあえず話を合わせておけば、変に話を引っ掻き回しては来ないだろう。


「分かった」


 いそいそと袋に、入るか?それ。


「私が持とう」


 ヤーナが悪戦苦闘している姿にそう声を掛けた。


「あぁ?なんでアンタに渡す必要があるのよ!」


 あ~あ。ホラ。


 そんなこんながありながら、僕らは残りを埋めて帰路についた。 

  

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