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見えない敵って怖いよね

 ミツヨシ様との会話はそれで終わりとなった。


「ついて来るなよ?外れ娘」


 ヤーナがそう言い残して4人が出て行った。


「あの鉱人は知り合いですか?」


 その一人は鉱人で、僕たちが知る谷の人とは装備が違った。


「ああ、本谷の奴だ。名前はなんつったかなぁ」


 と、思い出せないらしい。


 僕たちはかっらを見送った後、今日の宿を探した。


「うっわ、ここ高っか~い」


 イナリのそんな驚きが何度も聞こえたが、そりゃあ仕方ない。わざわざこんなところに食料運び込んで営業してんだ。高くもなるさ。


 どうやらアレクさんは既に宿を決めているのか、そうした宿に一切興味を示さずスタスタ歩みを進めている。


「ここだ」


 そして、一軒の宿の前で止まる。


 いや、ココ、最上級じゃない?


 どう見ても今までよりも立派な宿だった。


 とりあえず食い物があって寝る場所がある程度でも高いのに、ちゃんと宿になってるんだよ?


「オヤジ、来たぞ」


 なんか普通に入っていくアレクさん。


「ほう、とうとうお前さんお認める弓手が居たのか」


 出てきたのは狩人としか思えない人物だった。


「なんだ?ガキじゃねぇか。何考えてるんだ?」


 そう言って僕とイナリを値踏みしている。


「見た目は仕方ねぇ。その通りだ。だが、ヨシフが関わってやがんだよ」


 アレクさんがそう言うと、オヤジも呆れたようにため息をついて納得している。


「それじゃあ仕方ねぇな。ま、やってみな。大抵は南東に2時間くらいの辺りに居るだろうよ。お前の確認したあたりから移動はしてる」


 と、言って引っ込んだ。


「ねえ、今のって大カマキリの居場所よね」


 こういう時だけ間の良いポンコツがそう聞いてくる。


「ああ、本来は危険情報なんだがな」


 だろうなあ。普通はそこに近づくなという意味になる。


 どれほど高いのだろうと代金を聞いてみたのだが、


「あぁ?そんなモン、10日泊ってデス・スパイダーの糸液袋のひと掬い分だろうな」


 そりゃあ、貴族の屋敷も建つよな。デス・スパイダー。


 そんな事があって、それ以上聞く気を失った。下手に聞いてパワードスーツやコンパウンドボウの値段を知ったら使えなくなる。


「どう?私にこの鎧を貢いだ気分は」


 などとイナリが聞いてくる。


 今すぐ返せ、体以外でな。


 などと即答したかったが、相手にするのもどうかと思ったので無視してやった。


「ったく。何よその態度」


 と、いじけているが、放っておこう。


 さて、翌日は危険情報をもとにその辺りへ探索に向かった。


 やはり進めば進むほど人が減っていく。


 1時間半も歩くと人が居なくなった。


「さすが危険情報。ホントに人が居ないわね」


 イナリがそう言って辺りを見回している。


 そりゃあ、わざわざアーマード・マンティスに挑む奴はいないって話だから。


 そして、言われた辺りを探してみたが、見つかるのはプレート・マンティスばかりだった。


 もちろん、相手にせずに無視する訳にもいかない個体に出くわすこともあるので狩っていく。


「ねぇ。私にも狩らせてよ」


 などとイナリが言うので、行き掛けに見たマンティス狩りの様に脚や羽根を射抜いて動きを止めてイナリを突っ込ませた。


 なるほど、ものすごいスピードで突っ込んでいぅただけではなく、マンティスと互角の反応速度で戦ってやがる。


「やるな。さすが、北の部族だぜ。装備で加速は出来てもあの反応は並の奴にゃあ無理だろうな」


 アレクの感心したような。満足したような頷きに僕も納得した。


 そんな事を数度やっていると、日が傾いて来たので宿へと帰った。


「居ないんじゃないの?あのあたり。一杯マンティス狩って帰れば十分よ」


 どうやらもっとマンティスと戦いたいらしいイナリは、わざわざ見逃す今のやり方に不満らしい。


 が、アレクさんは納得していないし、普通に射れば当たる現状に、僕も満足はしていない。


 翌日は別方向から探してみたが、こちらもプレート・マンティスしか見かけることはなかった。


「居ないんじゃないの?だって、普通は見えないような距離から攻撃して来るんでしょ?」


 今日もマンティスを蹴散らしてご満悦のお1人は、アーマード・マンティスなどどうでも良いらしい。


 さらに3日目。


 アレクさんが目星をつけていた周辺は粗方探索を終え、周辺へと脚を伸ばしている時の事だった。


「ん?人が逃げてますよ」


 随分向こうから走って逃げて来る人が居る。それも一人ではない。


「その様なだ。マンティスにやられたのかも知れねぇ」


 アレクさんもそう言って警戒する。


 そして、逃げる人たちが誰だか分かるところまで来た。


「ミツヨシ様・・・・・・」


 それは、あの凄腕パーティーだった。ミツヨシ様と英雄と言われるエイナルという人物まで居るというのに、どうやら鉱人が負傷したらしい。


 それはただ鉱人の傷が深いから急いで戻っているという雰囲気ではない。何かに追われているように見えるが、その正体が分からない。


「なんだ、あの脳筋、マンティスも倒せ‥‥」


 イナリがそこまで言って顎が外れるんじゃないかというくらいに大口を開けて絶句している。


「クソ!最悪だ。アーマード・マンティスなんてチャチなもんじゃねぇ。相手はシースルーだ!」


 と叫ぶアレクさん。


 なんと、走る3人の直後に音もなく大きな亀裂が走り、土煙が上がったのだ。そりゃあ、大口開けるわな。


「シースルーとは?」


 だが、僕は冷静にそう聞いた。目線は前から外していない。


「あぁ?その名の通りだよ。見えねぇんだ。実態なんか分かっちゃいねぇ。そうか、アーマード・マンティスとコイツを誤認してたのか、あの情報。クソ。俺ともあろうものが全く考えて無かったぜ」


 などと言っている。


 見えない敵。


 僕はコンパウンドボウを取り出すと矢を番え、いつでも撃てるように引き絞ってその時を待った。

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